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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

201. 早春

1956年1月 松竹 製作 公開   監督 小津安二郎

毎朝 蒲田駅から国電に乗る 杉山正二(池部良)と通勤仲間の一人 金子千代(岸恵子)の、浮気が発覚したことから生じた妻 昌子(淡島千景)との夫婦仲の危機から修復に至る過程を描くホームドラマです。

早朝 未だ薄暗い 六郷川橋梁方向から京浜線上り 72系電車がやって来るところから、この映画は始まります。
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杉山は蒲田駅近くに住んでいる様で、蒲田電車庫の横を歩いて駅へ向かいます。
あちこちから勤め人が続々と、東急 目蒲線・池上線の蒲田駅横を歩いて国電蒲田駅へと向かっています。東急 蒲田駅舎は今だ戦災からの仮復旧状態の様で、蒲田駅に到着する京浜線の姿が前方に見えます。
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次のカットでは蒲田電車庫の横を通って、続々と蒲田駅を目指す勤め人や学生が映っています。留置されているのは、クモハ 73形を先頭とした編成の様です。
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蒲田電車庫は 1923年開設で 1996年より車両無配置電車区となりましたが、現在でも京浜東北線車両の車庫として使われています。

そして杉山達 通勤通学客で混み合う蒲田駅上りホームへ、8:28発の蒲田始発電車が入線して来ました。
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続くカットでは、クハ79168 を最後尾とする大宮行が停車します。三段窓が目を引きますね。
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続いて東京駅丸の内駅舎が映り 丸ビル・会社内へと繋がるので、杉山が勤める「東亞耐火煉瓦」は丸ビルにある設定です。当時 蒲田~東京の所要は 21分なので、随分ギリギリの出社ですね。

中盤 昌子が実家に寄る場面では、車両は登場しませんが東急 池上線 五反田駅が映ります。特徴あるトレッスル橋と 1928年開業時からと思われる木造ホーム屋根が見て取れます。
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終盤 杉山の浮気が発覚したことから昌子が家を出た頃 岡山に転勤の話があり、行くことを決意する杉山でした。杉山は岡山への途上 大津に居る 仲人でもある先輩の小野寺喜一(笠智衆)に会い、経緯を報告 相談します。
場所は(瀬田の唐橋)の足元であり 小野寺の息子が呼びに来たので立ち上がると、背後に遠く 東海道本線 瀬田川橋梁を渡る蒸機牽引の長大な貨物列車が映っています。
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この区間は、東海道本線 最後の未電化区間(米原~京都)であり、D51かD52形蒸機が単機で東海道本線最後の活躍している様です。

岡山県の三石工場に転勤して事務所で勤務していると、工場横の山陽本線をD52形蒸機牽引の貨物列車が苦しそうに上り勾配をゆっくり登って行きます。
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当時の山陽本線は全線で貨物は、D52形を中心に蒸気機関車が牽いていました。撮影は現在も盛業中の三石耐火煉瓦(株)に於いて行われた模様です。

赴任して暫くたったある日の夕方、帰宅すると昌子が来ていました。昼前に着いたそうで、東京 20:15発 ー( 1005ㇾ急行早鞆 )→ 9:01 姫路 9:56 ー (731ㇾ) → 11:02 三石着と乗って来たのでしょう。
杉山は謝罪し、二人はお互いこの地でやり直そうと誓ったのでした。夕陽に染まる窓から上りの急行列車が見えると、杉山が「あれに乗ると明日の朝は東京に着くんだな」と呟きます。
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C59形蒸機らしきが牽引する急行列車は、貨物列車と違って軽々と高速で工場横を通過して行くのでした。時間帯から宇野発24ㇾ急行せと号か、博多発40ㇾ急行筑紫号と思われます。
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