日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

195.その人は遠く

1963年10月  日活 製作 公開   監督 堀池清

受験生 岡田量介(山内賢)と母 久子(小夜福子)で住む家に、遠縁の細川奈津子(芦川いづみ)が同居したことから始まった二人の心の葛藤を描く青春映画です。

岡田と奈津子はお互いほのかな好意をもっていましたが、奈津子は親戚の世話で大阪の大学教授 大沢茂好(井上昭文)と結婚します。
そして大学生となった岡田は夏休みに奈津子から招かれ、大阪へと遊びに行きます。先ず東京機関区の EF58105が映った後、
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根府川橋梁を渡る東海道本線下り列車が映ります。
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最初は平穏だった夫婦ですが、その後 大沢が大学を辞め 奈津子の親の遺産金を投資に使って失敗するなど不誠実な行動の為 遂に奈津子は離婚を決意します。
奈津子が大阪に見切りをつけて岡田の元へ上京する折に、153系電車急行なにわ号の走行シーンがあります。
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でも走行音は客車列車ので、アフレコを付けるにしても・・・

岡田の地元である東急電鉄田園調布駅から岡田が降りてくると、
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駅前で待っていた奈津子に気付きます。二人は多摩川を見下ろす多摩川台公園へ移動すると、奈津子が九州で教員になることを告げます。
遠く多摩川に架かる鉄橋を形式不明の3両編成電車が渡っています。当時の東横線は5両編成電車が大半だったので、目蒲線車両の検査か改造等を元住吉検車区で行う為の回送運行でしょうか。

岡田と井波恵以子(和泉雅子)の様子を見て、奈津子は岡田への好意を封印して九州へ旅立つ決意をします。奈津子が出発する日、岡田と恵以子は東京駅へと駆け付けます。
列車の出る14番線への階段を二人が駆け上がる途中から「急行雲仙・西海 長崎・佐世保行」と発車案内の放送が行われていますが、奈津子が何処にいるのか右往左往するも見当たりません。
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佐世保行のサボを架けた 10系急行が動き出し 段々加速してゆくので焦っていると、7号車のデッキに奈津子が微笑みながら立っているのが見えました。
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そして二人の前に来るとニッコリ右手でOKサインを出して通過して行きました。
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二人は唖然としながら手を振りお辞儀をするしかなく、去り行く奈津子の乗る列車を見送るのでした。
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奈津子はその後もデッキの扉を閉めることなく、東京での色々な思い出を振り返っている様で様々な表情を見せます。ラストは列車が鉄橋を渡るシーンでエンドマークですが、ここは酒匂川橋梁の様に見えます。
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奈津子が乗ったのは東京駅 12:30発の 33ㇾ急行雲仙・西海号で、1号車~6号車が佐世保行 西海号・7号車~12号車が長崎行 雲仙号(12号車は東京~下関)と肥前山口まで併結運転の列車です。
したがって作中の編集では西海号に乗った様に思えますが、7号車なので長崎行の雲仙号に乗車したようです。すぐ隣の6号車デッキでは、車掌さんが前方を見て安全確認をしている様です。

しかしOKサインを出したシーンの次のカットでは、車掌さんが立っていた所に外国人風の男が立っています。また恵以子がお辞儀しているカットの背後の時計は 11:44を指しています。
更に二人がホームへ上がるシーンでは、隣の 15番線に定時では 33ㇾ発車時には存在しないブルートレインが停まっています。またホームにいる人々は、次に 14番線から出る列車を待っているようです。

この辺りのロケ事情を推察してみますと、二人が階段を駆け上がって来たのは 12:30と思われます。次のカットは 11:30で この時 14番線から 335ㇾ各停 名古屋行列車が発車するので、この列車でリハーサルを行ったのでしょう。
隣の 15番線に停車しているのは 11:30着の 8ㇾ特別急行みずほ号です。奈津子役の芦川いづみさんは 335ㇾで次の新橋駅にて下車して戻り、本番の急行に乗ってのロケで監督のOKを獲得したのではと推察します。

奈津子のOKサインの次のカットで車掌さんが外国人に替っていますが、335ㇾでリハーサル撮影したこの部分を何故か編集段階で加えたと思われます。このカットでは、奈津子の右側もトイレのスリガラスに変わっています。
東京と長崎・佐世保を安価に直通していた この列車は、東海道新幹線開通後もそのままの形で走り続けましたが 1968年10月改正で関西~長崎へと変更されました。
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コメント


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その人は遠く

これほど鮮やかな別れの鉄道シーンには今までお目にかかったことはありません。
芦川いづみファン以外にはほんとんど知られていないB級作品ですが、このラストシーンの素晴らしさはまさに奇蹟の2分間です。

いづみさんがOKを出しているシーンと次のシーンでは明らかに車両が違いますね。
初めて気がつきました。映画の鑑賞時にはこんなことは夢にも思わず、堀池清監督の職人技にただただ酔いしれ、加速する列車をプラットフォームから一気に撮ったと思っていました。
でもよく考えれば、これほどのショットの積み重ねが一回だけの撮影で撮れたはずがない。テツエイダ様の推察通り、2つ(あるいはそれ以上)の異なる列車で撮影されたものでしょう。

デッキでいづみさんの横顔などを撮したのも、これはセットと言うことはないでしょうが、まったく別の列車での撮影かも知れません。

個々別々で撮ったショットを見事に組み合わせて、まるで同一シーンであるかのように見せる。これこそ映画の醍醐味ではないでしょうか。

赤松 幸吉 | URL | 2015-11-22(Sun)19:53 [編集]


Re: その人は遠く

赤松様 毎度コメントありがとうございます。

いづみ さんとしては多摩川台公園で別れを告げたので、一人静かに東京を離れようとしたのでしょう。 それ故 あの様に鮮やかな別れのシーンにつながったと堀池監督は表現したのでしょう。

そして東京駅を離れてからもデッキに残り、余韻に浸っているかのように様々な表情を見せて胸中を表現しているシーンもこの作品をより印象深くしていますね。

テツエイダ | URL | 2015-11-23(Mon)12:57 [編集]