日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

194.愛のきずな

1969年2月 渡辺プロ・東宝製作 東宝配給公開  カラー作品  監督 坪島孝

勤める会社の専務の娘と結婚した為 妻に頭の上がらない鈴木良平(藤田まこと)が、清楚な平井雪子(園まり)と知り合い深みにハマり破滅へと向かうサスペンス映画です。

雪子に服役中の夫 平井健次(佐藤允)がいることが分かり、しかも夫に離婚をきりだすと雪子はききません。そんな展開になれば、逆上した夫に殺されると心配する小心な鈴木です。
そして中盤 鈴木は信州へ雪子を誘い出すのです。雪子は現地でおち合おうという鈴木の指示で中央本線 特急あずさ号に乗り岡谷駅に到着し、更にバスに乗って賽の河原停留場で降りました。

1966年末に登場した中央本線 初の特別急行あずさ号はこの当時 定期2往復で新宿~松本を結び、181系 10連で一等車2両に食堂車も連結して堂々たる編成でした。
作中の様子から岡谷を通過する新宿 8:00発の 1M あずさ1号に乗車したと思われるので、10:53着の上諏訪で各停 1228M に乗り換え 11:11 に岡谷へ到着したのでしょう。

雪子を山中で始末した鈴木は、出所して会社に押し掛けて来た平井の追及もかわして一安心していました。ところが会社のCM映像に、雪子が映っているのを発見して慌てます。
鈴木は岡谷駅に降り立ち、
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聞き込みで記憶喪失の雪子(ここでは明美)が働いている喫茶店を尋ねます。雪子を確認した鈴木は、思わせ振りの書置きで岡谷駅上りホームに呼び出すのです。

鈴木がホームで待っていると、雪子が地下通路の階段を上って来ました。疑い半分で不安気な顔の雪子ですが、
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発車ベルが鳴っているので鈴木は強引に旧客のデッキへ乗せます。
この頃は旧客を使った列車がまだ有って、時間帯から岡谷 12:15発の 444ㇾ甲府行か、13:51発の 446ㇾ甲府行のどちらかに乗ったと思われます。でもこの映画の車内シーンは全てセット撮影です。
鈴木は「思い出の場所に行けば記憶を取り戻せる」などと言って連れ回しますが、都合の良いことに記憶は戻らずに鈴木に好意をもつ様になり東京に同行します。

新宿駅に 8:00松本発の2M 特急あずさ2号が到着します。
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二人が先頭車から降りて来ました。ホームに立つ探偵らしき男が、鈴木の顔写真と照合している様です。
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新宿駅への到着時刻は 11:45で、現在より1時間以上掛かっています。二人は早速 投宿しますが探偵からの通報からか鈴木の妻 早苗(原知佐子)が現れ、鈴木はグウの音も出ません。

早苗は怒って実家に帰ってしまいますが、義父である専務は気にするなと言ってくれます。そして以前同様に政治家へのワイロ運びを依頼されます。
途中までは指示通りに車で運んでいた鈴木ですが、岡谷に戻る雪子が気になり迷ったあげく新宿駅へと向かったのです。

15:10 諦め顔の雪子が乗った電車が新宿駅を出発するところです。
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ところが走行音の中 デッキのドアが開き、ワイロが入った漬物樽を持った鈴木が現れたのです。
そして「二人で新しい生活を築こう」などと、雪子を喜ばせます。15:10 新宿発の列車は当時ありませんので、14:14 入線して 15:53 発の急行アルプス6号に発車ベルのアフレコを付けたのでしょう。

二人は信州方面へと駆け落ちを図った様で、続いては D51らしきが牽引する列車の夜間走行シーンがあり 旧客車内ではクロスシートに二人が向かい合って座っています。
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そして列車が(やまわき)という駅に停車すると、鈴木は飲み物を売店へ買いに行きます。ところがこの駅のベンチには平井が座っていて、
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目の前の車内に座る雪子を発見して叫びながら窓を叩くのです。
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やがて発車すると、鈴木が瓶入りファンタオレンジとコップを持って戻ります。怯えた様子の雪子を見て、鈴木には彼女がどうして豹変したのか分かりません。
雪子はショックで、鈴木に襲われた記憶も甦った様です。そこへ最後部のデッキから鬼の様な形相の平井が現れ、鈴木はデッキに連れ出されます。
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鈴木は二千万円の入った漬物樽を差し出しますが、平井は線路に投げ捨ててしまいます。更に鈴木は腹部を刺され、揉み合いの末に二人共走行中のデッキから転落してしまいます。
一人残った雪子は次の終着駅 和泉で降りたのでした。この駅は架空駅ですがアルプス6号に乗ったとすると、塩尻発 21:20 D51牽引の旧客列車中津川行 840ㇾに乗り継げるので このルートを想定しての脚本でしょうか。。

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コメント


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愛のきずな

全盛期の園まり(当時の女優にも見劣りせず、清楚で美しい)の人気にあやかった娯楽映画で仕方がない部分も多々あるが、松本清張の世界がたっぷりと堪能できる一編。

CM映像から雪子を偶然発見したり、まず予期もできない場所で偶然再会したり、清張作品によく見られる「偶然多し」は看過しよう。
惜しむらくは、演出が「黒い画集」の堀川弘通、鈴木英夫などであったら、もっとシャープな出来となり、後世に清張原作名作シリーズの一つとして残っただろうに。

清張は「鉄道物」では実際の地名・駅名などを使用していることが多いが、この終着駅は架空でしたか。

腑に落ちない箇所が一つあります。いかに夜のローカル線とは言え、最後尾の客車に車掌や他の乗客が誰一人乗っていないというのはどう考えても不自然だ。殺し合いが延々と続くが、その間に誰も気がつかない。こんなことはあり得ないのではないか。

赤松 幸吉 | URL | 2015-11-08(Sun)10:54 [編集]


Re: 愛のきずな

>赤松様 コメントありがとうございます。

小生 清張の原作を読んでいないので、終着駅が原作ではどうなのか分かりません。
作中で終着 和泉駅の一つ前の(やまなか)駅で、行商風の女性達が下車したので乗客は当事者達だけになったという設定なのでしょう。
(やまなか)駅を含む車内シーンを全てセット撮影したのは、少々安っぽい点もありますが流石 東宝ですね。

それにしても失意の雪子が終着 和泉駅を降りてきて、雨が降っていると最初と同じ様に見知らぬ車の男の誘いに乗ってしまうラストシーンには・・・です。

テツエイダ | URL | 2015-11-12(Thu)23:12 [編集]