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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

192. 恋人

1960年1月 松竹 製作 公開  カラー作品   監督 中村 登

信州から上京した学生 吉野英夫(山本豊三)と東京での頼れる先輩である医師の小野雄一郎(南原宏治)の友人 奥野克己(大泉滉)の妹 和子(桑野みゆき)との交際を軸にした青春映画です。

序盤 貨物操車場らしき所の横を小野が歩き、やや離れて吉野が続く場面があります。横では黒煙を吹き上げながら 8620形蒸機がバックで入れ替え作業をしています。
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この場所でのロケは後半にもありますが、かつて訪問した記憶から総武本線貨物支線(越中島支線)の小名木川貨物駅構内ではなかろうかと思われます。

中盤 吉野が奥野兄妹を故郷の信州へ招待する場面があり、D51形蒸機が牽引する列車が高速で走り抜けるシーンがあります。
上野 23:00発の信越本線 309ㇾ準急 妙高 新潟行あたりを想定しているのか、朝方の雪山をバックに快走しています。この列車は長野から各停 317ㇾとなるので、時間帯から 317ㇾの姿でしょう。
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後半 不祥事から大学を休んで働く吉野が、和子と序盤と同じ場所で土手に腰掛け話す場面があります。背後では新小岩機関区所属の 28641号機が入換作業で貨車を押して停車しました。
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そして短笛の後 停車している 8620形蒸機の横をすり抜け、前方へと貨車を押して行きました。この貨物支線はロケの前年 越中島貨物駅まで延伸開業して、勢いの有る時期の様です。
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終盤 和子の父 奥野健三(十朱久雄)の九州転勤が決まり、一家は転居することになります。旅立ちの日 東京駅 15番線ホームでは、奥野夫妻が見送りを受けています。
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ホームには 21:30発 博多行2・3等急行筑紫の標示が有ります。2等車のデッキでは克己を前に小野と吉野の仲間が集まって、吉野と和子が未だ来ないと心配顔です。
隣の 14番線には次に出る 21:45発の 17ㇾ急行 月光 大阪行が停車しています。
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その頃 中央通路のベンチでは、和子が吉野との別れを惜しんで座ったままホームへ上がろうとしません。そして筑紫号の発車ベルが鳴り出す頃、漸く吉野の説得を聞き入れホームへと向かいます。
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皆が心配する中 吉野は和子の手を牽いて駆け寄り、デッキに居る克己の横へと乗せました。見送る一同は万歳三唱し、それと同時にブザーが鳴って列車は動き出しました。克己は淡々と手を振り、皆に応えています。
一瞬 吉野の顔を見た和子は涙で顔を伏せ 吉野の「カズちゃん」との呼びかけにも応えられぬまま、
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和子を乗せた筑紫号は遠い九州へと悲しげな赤いテールランプと共に去り行くのでした。
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この当時 41ㇾ急行 筑紫号 博多行は、東京~姫路を EF58形電機・姫路~下関は C59形蒸機・下関~門司を EF10形電機・門司~博多は C59形蒸機に牽かれて翌日 20:05に博多到着でした。
編成は①2等C寝台②スロ53指定二等車③オロ35自由席二等車④⑤ナハネ10三等寝台⑥マシ29食堂車⑦~⑪ナハ11系三等車+⑫⑬スハ43系三等車(⑫⑬は東京~岡山)と多彩です。
1950年代前半は九州行の急行列車の代表格らしい豪華編成だった筑紫号ですが、博多行(あさかぜ)・鹿児島行(はやぶさ)・長崎行(さくら)と特急が3本体制となったこの頃は割と平凡な編成です。



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