日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

177. 飢える魂

1956年10月 日活 製作 公開   監督 川島雄三

実業家の若妻 芝令子(南田洋子)と二人の子供のいる未亡人 小河内まゆみ(轟夕起子)を巡る二組の不倫愛を日本各地を舞台に描いた映画で、小林旭のデビュー作でもあります。

建築家 芝直吉(小杉勇)が妻の令子を秘書代わりに伴い倉敷へ向かう道中、瀬戸内海らしき海沿いを走るC59形蒸機牽引の急行列車が映ります。架線があるので、山陽本線 須磨付近でしょうか。
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続いて特ロで深々とシートを倒して高いびきをかいている芝の姿があります。セット撮影の様で、窓越しに見える漁船は合成と思われます。東京 21:30発の 39ㇾ急行筑紫を使ったとすれば、倉敷に 12:37到着です。
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デッキ横の洗面所で洗顔を終えた令子が、カーテン下に見覚えのある靴を見掛けて声を掛けます。京都のお茶会で会った立花烈(三橋達也)で、偶然乗り合わせたと言いますが令子を追って来たのです。
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次に新橋~有楽町と思われるカーブを行く山手線内回り 72系電車が映ります。
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車内シーンでは小河内まゆみの長男 昭(小林旭)と長女 伊勢子(加藤勢津子)が、山手線と表示されたドアの前で話しています。
この映画公開の翌月 山手線と京浜線(現 京浜東北線)は分離運転されたので、ロケ時は同じ線路を共用していた終末期でした。共用ゆえにドア上部に山手線と表示板を貼っていたのでしょう。
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また芝が名古屋での仕事に、令子同伴で特別急行はと号で到着する見事な場面があります。EF58 68電機らしきが、はと号のヘッドマークも誇らしげに名古屋駅4番ホームへ入線して来ました。
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当時 東海道本線は全線電化直前で 電化区間は米原まで進んでいましたが、蒸機牽引区間が短くなっても8時間運転は不変でした。3ㇾ特別急行はと号は 12:30東京を発車して、5時間後の 17:30に名古屋に到着です。

そして7号車スロ 60二等車デッキから芝を先頭に、大きなスーツケースを抱えた令子が降りて来ました。令子はキョロキョロして赤帽を探しますが、芝は冷たく「表まで大した事は無い。自分で持ちなさい」と告げました。
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名古屋駅前に出ると芝は「3か所程仕事で周るから先に宿で休んでいなさい」と令子に伝えます。背後では名鉄百貨店本店が翌年7月の全館完成に向けて建築中です。

それから京阪電鉄 京阪線を走る、鳩の特急マークを付けた 1700系と思われる2扉車両が走り抜けます。
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車内では「次は京都三条終点です」の放送があり、まゆみが網棚から荷物を降ろして降車の用意をします。
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車窓から鴨川沿いの様子らしきが映っていますが、これは合成でセット撮影の様です。シートを見れば前出の特ロ車内場面と同じ様に見え、特急とは言え転換クロスシートの筈が国鉄 特別二等車と同じセットで撮影とは・・・
京阪特急のシンボル 鳩の特急マークはこの映画公開の4年前の 1952年 7月から付け始め、以後 60年以上殆ど変らぬデザインで現在に続いています。なお鴨川沿いのこの区間は 1987年5月から地下化されています。

最後に蒸機牽引列車が映った後、特ロシートに芝夫妻が令子を通路側に座っています。令子は通路を歩く人や車内をキョロキョロして落ち着かない様子です。立花が乗っていないか気になる様です。
横の席に一人座る男の元に食堂車のウエイトレスがメモ帖を片手に現れ、何やら告げると男はウエイトレスに付いて後方へと行きました。予約したランチタイムで、食堂車から お迎えに来たのでしょうか。
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