
交通事故で通産省の役人である夫 江田宏(土屋嘉男)を亡くした江田由美子(司葉子)と加害者である明治貿易社員 三島史郎(加山雄三)の悲恋映画で、成瀬巳喜男監督の遺作となった映画です。
小田急電鉄の 2400形と思われる列車が大きな急行看板を付けて現れた後、

夫の栄転と初めての懐妊で幸せに浸る由美子が車内で隣の赤ちゃんをあやすシーンがあります。

事故の後 夫の葬儀に現れた三島に憎悪を感じた由美子であったが、夫の実家からは籍を抜かれ子供も諦めることになりました。姉の采配で由美子は三島から毎月お金を受け取ることになります。
監督官庁の役人を事故死させた三島は青森出張所へ左遷され、会社の常務の娘との婚約も解消となって失意の内に国鉄青森駅頭へ到着した場面もあります。
由美子は実家である十和田湖にある旅館を手伝うことになり、青森の三島の元を訪ねて毎月の援助を断り縁を断とうとします。
その後三島の母親が謝罪に来たこともあって、偶然の再開後二人はお互い魅かれるようになったのです。しかし会う度に悩み由美子が再会を断ったので、三島は転勤願いを出します。
そしてパキスタンへの転勤が決まり青森を離れようとする時、ついに由美子が三島の家に現れ二人は出掛けます。タクシーで宿へ向かう道中、悲惨な交通事故現場に遭遇してしまいます。
二人はかつての事故を思い出し激しく動揺するのでした。タクシーが踏切で捉り停車すると、二人は無言で車内は重たい空気に包まれます。東北本線でしょうか、重厚なハエタタキが並んでいます。
やがてD51形蒸機牽引の貨物列車が左手からやって来ました。

本線の貨物列車だからでしょうか、とにかく長い列車です。途中で三島が雰囲気に耐え切れず、タバコを吸い出します。

漸く編成最後の緩急車が現れたと思ったら、その後ろにキロ28形と思われる一等気動車が連結されています。混合列車ではなく修理を受けていた車両の回送でしょうか。

二人はお互い結ばれる仲ではないことを悟り、別れることに納得するのでした。最後に転勤に向けて上京すべく、DD51形内燃機 重連牽引列車に乗る三島の姿があります。

三島が座る車内シーンは特急普通車のセット撮影の様にも見えます。

ロケ当時 東北本線は青森~盛岡が非電化区間で、気動車以外の特急・急行はDD51形内燃機が重連で牽いていました。様子から唯一の昼行急行である、202ㇾ第一みちのく号と思われます。
202ㇾは青森発 5:45で盛岡~仙台はED75牽引と近代化されますが、一転して仙台~平はC62形蒸機となり最後はEF80形電機牽引で 18:43上野に到着でした。
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