fc2ブログ

日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

 161. おかあさん

1952年6月 新東宝 製作 公開   監督 成瀬巳喜男

戦災で焼失した洗濯屋を再建するため一家で頑張り、夫や息子を失いつつも 懸命に生きる母 福原正子(田中絹代)の姿をを娘 年子(香川京子)の視点で描くホームドラマです。

冒頭 2両編成の私鉄らしき電車が走り抜けて行きます。塗装の具合が不明ですが、京浜急行電鉄の 230系ではないかと思われます。
163-1-1.jpg
しかしこの映画の殆どの部分はこの沿線で撮影された訳ではなく、オープンセットを組んで世田谷で撮影された様です。

中盤 再建した洗濯屋の配達を年子が自転車で行く途中、踏切で待つ向こう側にパン屋の平井信二郎(岡田英次)の姿が見え お互いに手を振ります。
二人の間を高速で、3両編成の電車が通過して行きました。先頭と最後部は東急の 3600系の様に見えますが、中間車は京急のデハ 150の様に見えるので判別出来かねます。
163-4.jpg

終盤 次女の久子(榎並啓子)が親戚の家の養女となることになり、久子を迎えに来る前日に一家で遊園地へ行くことになりました。
続いて蓄電池式電機に牽かれた7両のオープン客車が映ります。遊園地内の遊覧鉄道の様ですが、これは小田急電鉄が稲田登戸(現 向ヶ丘遊園)~向ヶ丘遊園地 約1km.を結んでいた連絡鉄道です。
163-8-1.jpg

163-11.jpg

軽便規格の 610ミリ軌道を東芝製の4t蓄電池式機関車が、7両のサイドステップの付いた簡易客車を牽いて遊園地への客を運んでいます。
子供達はこれから遊園地へ向かうので楽しそうですが、乗り物に酔い易い母 正子は早くも気持ち悪そうな暗い顔つきです。
163-9.jpg

この鉄道は乗客誘致の為 小田原急行鉄道が 1927年に開園させた向ヶ丘遊園地へ、客を運ぶ目的で開園二か月後に開通させた豆汽車(米製ガソリン機関車)にルーツがあります。
戦時中は休止していましたが 1950年上記の方式で再開し、単線ながら途中交換所もあって2列車運行していました。電機は東芝製の他 日立製もあったとか。

1965年道路新設工事に伴い惜しくも廃線となり、新たにモノレールが翌年開通しましたが 2000年に休止 翌年廃止となり 今では有りません。
かつて西武鉄道山口線(おとぎ電車)で使っていた電機や客車が似ていますが、こちらの開通も 1950年です。軌間は 762ミリで、7t蓄電池機関車で開業していますのでひと回り大型ですね。

関連記事

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

撮影場所について

貴ブログをみ、意見したいところがありましたので、下記させて頂きます。
鉄道愛好家として貴ブログの様なのがないのかなと思っていたのですが、貴ブログに行き着き閲覧出来ました。
貴ブログを知って早速全記事に目を通し、面白そうな映画がありましたので、早速ネットで幸運にも入手出来ました。
その映画ですが、田中絹代、香川京子主演 昭和27年 「おかあさん」で早速見たのですが、驚いたことに冒頭で懐かしい画面が出てきて驚いた所です。

その場所下記します。
冒頭、2両の電車(京急のようです。)
左に大きい鉄骨状のガスタンク(東京ガスのタンク。昭和40年代位まで存在)、右に櫓のある3階くらいの迷彩色のビル(現在の大森警察署です。空襲では焼けなかったです)で、小生昭和30,40年代この当たりに住んでいて、場所熟知しています。
何かもう懐かしいショットです。貴ブログで取り上げてくれ、感動、うれしいあまりです。

 撮影場所は現在の大田区大森西2丁目9番当たりと思われます。そのうち電車架線をヒントに実地検証してみようと思っています。 もっとも今は家ばかりですが。

貴ブログの更なる更新と発展を期待しています。
どうも有難うございました。

C62熱中人 | URL | 2017-08-04(Fri)15:06 [編集]


Re: 撮影場所について

C62熱中人 様 コメントありがとうございます。

冒頭のシーンはやはり京急でしたか。小生としては東宝の撮影場所を思えば、悩みながら京急と書いた記憶があります。
読み直したら最後の豆汽車の記述に不備がありましたので、早速修正しておきました。

「早速全記事に目を通し」とのことで、ありがとうございました。初期の作品は掘り下げ方が浅く いつかは書き直したい思いです。
これからも御意見・御批判どしどし お願い致します。

テツエイダ | URL | 2017-08-04(Fri)15:10 [編集]


追記ということで。 (早速のコメント有難うございます。)
 更に探求して分かったことを下記します。

「おかあさん」の件でまたお邪魔します。
 全編中頃、踏切の所で香川京子さんと岡田英次さんが自転車から手を振っていますが、ここは前述大森警察から線路沿いに平和島環七方面に向かう川(内川といいます、2級河川)のところの踏切です。 直角に2か所曲がっています。 グーグルアースでも分かります。 

ここ、私が昔よく通ったところで、今はマンションと京急の高架になって面影は全くなくあるのは道の曲がり方だけです。 まさか自分がよく通ったところで香川京子さんが撮影されていたとは驚き以外のなにものでもありません。

初めてこのDVDを見て、何かピンとくるものがありました。まさにピンときたのですが、この場所で天下の故田中絹代の映画が撮られたと思うと感慨深いものがあります。
撮影年の時私は4歳で、丁度その時くらいから大森警察とガスタンクの中間にある家に住み始めました。
(ガスタンクは今中学校になっています。)
映画の男の子が少し年上くらいか。

今出演の俳優さんは殆ど鬼籍に入られて、そうでないのは香川京子さんくらいか。
私は香川京子さんの品のある感じのところが好きで、今もときどき映画のトークに出られています。 私は去年当たり2回ほど聞きに行きました。 今もでしゃばったようなところがなく品のよい話し方をされていました。 いつまでもお元気で。

以上私見を加えたことをお許しください。


 

 

C62熱中人 | URL | 2017-08-04(Fri)16:13 [編集]


Re: タイトルなし

C62熱中人 様  コメントの続き ありがとうございます。

ブログ中でも書いたように踏切の場面は分からなかったのですが、こちらも京急でしたか!
詳細なロケ地情報ありがとうございました。

香川京子さんは小生も好感する女優さんで、今でも気品という言葉が当てはまる方ですね。



テツエイダ | URL | 2017-08-06(Sun)00:23 [編集]


懐かしき大森

 初めまして。1週間ほど前に何かの検索でこちらを発見しました。私は鉄道史の資料としての価値に重点を置いて切符を集めている者です。
 初めに見つけたのはここのコメント欄のみをまとめたページでした。ぽつぽつと飛ばし読みをして、これでは仕方がないと、きちんと元記事が表示されるサイトを見つけ直しました。しばらくは気になる路線や作品を選んで読んでいましたが、やがてきちんと全部読む方が良いと判断しました。熟読は100以降で、現在はこの作品辺りまで来ています。
 100以前は追い追い読み直すことにします。

 さて、この作品ですが、↓のサイトはご存知でしょうか。
http://www5c.biglobe.ne.jp/~nuage001/index.htm
ロケ地に関しても詳しく記述しています。本作はこちらになります。
http://www5c.biglobe.ne.jp/~nuage001/photookaasan2.html
 この1枚目のモノクロの画像だけで大森生まれの私は「ややや?」となりました。もうこれは大森町駅付近には考えられないからです。画面左の2件の家屋の間から突き出ているのはコンクリートのビル、ではなくて東京ガスの円筒形ガスタンク(近年はガスホルダーと呼ぶようになっているようですが)です。
 線路の手前画面中央から左下に向かって柵らしい物に何か掛けてあります。これにも驚きました。私の家は海苔養殖をしていましたが、これはその際に使う網です。網干しをしていることから撮影したのは3月から5月頃だろうと推測されます。
 その後出てくる木橋は昭和40年代半ばくらいまであったと思います。都区内最後の戦時迷彩建築と言われた大森警察の建物(橋の向こうにある塔のあるビル)もかなり前に建て替えられました。この景色はもうほとんど残されていません。
 私は戦後の成瀬監督の作品はかなり見ているのですが、これは残念ながら見損ねています。是非いつか見てみたいものです。

 作中に切符が写される映画はかなり少ないようです。少なくとも一つは見つけており、それについての感想もあります。また改めて書くことにします。

大森山谷 | URL | 2022-05-08(Sun)13:31 [編集]


Re: 懐かしき大森

大森山谷 様  コメントありがとうございます。

本作では京急登場部分を紹介していますが、映像では僅かなシーンだけの登場ですね。
小生にはロケ地が何処か全く分かりませんでしたが、大森町付近でしたか。

木橋が出てくる場面は1952年の世界らしいと思いましたが、この橋が昭和40年代半ばくらいまであったとは驚きました。

当ブログで切符が写されるカットは少ないですが、印象深いのは(7.今日のいのち)と(359.重役の椅子)です。
検索フォーム欄から探せますので試してみてください。

テツエイダ | URL | 2022-05-09(Mon)21:51 [編集]