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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

 153.四十八歳の抵抗

1956年11月 大映 製作 公開   監督 吉村公三郎

損保会社の次長である西村耕太郎(山村聡)は 部下の誘いから快楽の道へと踏み外すも気が付き、駆け落ちした娘 理枝(若尾文子)とも関係修復へと至る 初老期を控えた男のドラマです。

中央本線 阿佐ヶ谷駅改札を入ってきた能代雪江(小野道子)は、
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階段を上がった下りホームから上りホームに居る 上司の西村を見付け「次長さ~ん」と声を掛けます。
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続いてセットらしき車内シーン。二人並んで座りながら、恋愛論を交わしますが若者に理解ある人物を装っています。雪江と娘 理枝は同級生で、それとなく理枝が恋愛中なのを聞きます。
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次に 熱海への社員旅行の道中場面。車内ボックスシートのセット撮影で西村の隣には島田課長(石黒達也)が座り、ヌードスタジオへしきりに誘い 西村も満更でもない様子です。
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その後 自称:忠実な部下の曽我法介(船越英二)の誘いで行った、元部下だったバー・マルテのマダム(村田知英子)の店で ユカ(雪村いづみ)に会い深みにハマってしまいます。

そして損害保険調査名目で行く熱海出張に、ユカを誘ったら快諾されて西村は有頂天です。人目を忍んでか新橋駅東口旧駅舎前へ到着するタクシーから西村が降り、出札窓口で熱海への二等切符を二枚購入します。
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改札へ向かうと背後から西村の行動を把握している曽我が声を掛け、同伴出張の楽しみ +「調査対象のホテル火事は怪しいので、うまく話せば金になりますよ」などと悪魔の囁きです。

曽我の言葉に憤慨する西村ですが、行動が全て曽我に筒抜けになっている点には少々薄気味悪く感じているようです。また後ろめたい気も少しあって、周囲を気にしながらホームへの階段を登ります。
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待ち合わせの東海道本線ホームへ上がると、背後からユカが甲高い声で「おじさま~」と能天気に叫びながらハイヒールの靴音をたてながら走り寄って来て西村を慌てさせます。
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新橋駅東口駅舎は重厚な雰囲気で、(處女峰 1950年 監督 木村恵吾)などの作品にも登場しています。当時の東海道本線は非電化区間が米原~京都で残すのみ。全線電化完成直前で、東京発の各停は長距離列車以外は 80系中心の電車化されています。
熱海行湘南電車到着の放送がありましたので、新橋 8:39発の 819ㇾ(熱海 10:52着)か10:24発の 823ㇾ(12:35着)のどちらかが該当しますが周囲の様子から 823ㇾの時刻 10:20 頃に待ち合わせしたと思われます。



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コメント


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新橋駅

テツエイダさん、こんばんは
新橋駅は多くの映画に登場しますね。

かつては新橋駅に準急が停車して「東京駅に行くよりも便利なので熱海に行くのに利用した」と書かれた記事を見たことがありますし、古川ロッパさんの「ロッパ日記」にも新橋駅で準急を利用した話が書かれています。

アパッチ | URL | 2014-12-07(Sun)21:09 [編集]


Re: 四十八歳の抵抗・新橋駅

アパッチ様コメントありがとうございます。

なるほど映画公開時でも、新橋停車の準急が東海号や伊豆号など6本ありますね。
熱海出張に女性同伴なので、人目を忍んで始発の東京駅ではなく新橋から普通列車で行ったのではと想像しました。

テツエイダ | URL | 2014-12-12(Fri)19:20 [編集]


四十八歳の抵抗

「新橋駅東口旧駅舎」は初めて見ましたが、まるで北欧都市のターミナルのように重厚で、重量感のある堂々たる建築物ですね(是非、実物を見てみたかった)。

社員旅行の車内(4枚目の写真)は明らかにセットですね。
大道具さんは細かい点まで気を配って、丁寧に灰皿まで設置してご苦労様ですが、普通は灰皿の周りは吸い殻や手あかで汚れているものではないでしょうか。

この写真では壁面がツルツル、ピカピカに光っていますね。これだけでもセット車だということが分かります。

さて、突然ですが、全国の鉄道ファンにクイズを出しましょう。

灰皿のように、当時は客車にあったけれど現在ではもう見られないものがもう一つあります。
それは何でしょうか、パァと思い浮かびますか。

それは「栓抜き」です。これもいつの間にか消えてしまいました。

今でも「栓抜き」付きの列車は存在しているのでしょうか。もしどこかにあれば、その車両の栓抜きでコーラかジュース(瓶)を開けて飲んでみたい。

人は「ガス抜き」に旅に出ると言うが、私は「栓抜き」を求めて、日本全国を旅したい。

6枚目のホーム写真は12時頃ではないでしょうか。
その前の料亭シーン(1:08:30)で山村が雪村に「12時に新橋駅のホームで待ち合わせしよう」と誘いを掛けています。

また、当日は山村は会社に寄って少し用事を済まし、会計で4千円を前借りしてから新橋駅に向かっています。

「まもなく1番線に熱海行き湘南電車が入ります」とのアナウンスが聞こえますが、「湘南電車」という名称はこのようにアナウンスで使用されるような公式表現ですか。


小野道子(長谷川一夫の娘)は、親の七光りで女優に引き立てられ、大映で厚遇されたのだと、彼女のことを揶揄する人が多かった。

確かに女優としてはそれほどの美人ではないし、若尾文子や野添ひとみのような華やかさや艶やかさもない。

しかし、(個人的には)彼女の芸は奥深く、玄人好みのする実力・個性派女優で、もっと評価されてもよいと思います。
常日ごろ大スターの娘だと色眼鏡で見られ、女優人生でかえって損をしていたような気がします。

「祇園の姉妹」「いとはん物語」「朝の口笛」などを見ると、彼女がどれほど素敵な女優だったか分かります。

赤松 幸吉 | URL | 2019-10-24(Thu)18:14 [編集]


Re: 四十八歳の抵抗

赤松様 コメントありがとうございます。

「栓抜き」は旧型客車の窓下に付いていた様に思います。大井川鉄道の旧型客車にあった様な気がします。
また小田急電鉄NSE特急のテーブル端にも、あった様な気がします。
 昔はジュースを持ち込んだり、ホームの立売人から瓶ビールのまま買ったりしていたので必要だった様ですね。

「湘南電車」という名称は、昭和40年代中頃まで使われていた様に思います。80系電車の登場と共に、国鉄としては「湘南電車」という名称でPRしたので公式と言えると思います。

山村聡の部下役の小野道子さんは、目立たないけど実力派の女優さんですね。

テツエイダ | URL | 2019-10-27(Sun)18:46 [編集]


栓抜き今でもありますよ~

テツエイダさま、みなさまこんばんは。

画像拝見しました。国電の車内(ロングシート)のものは、モハ72系を模しているようですが、上段窓の手掛けが、このような三段窓の場合は、本来窓枠を削ってあるだけなのと、窓枠がグリーン?に塗装されていること、窓柱が太すぎるように見えるので、おそらくこれはセットでしょう。

その下の客車はセット間違いなしですね。赤松様がおっしゃるように灰皿に汚れが無いこと、シート間隔と窓柱が微妙に合っていないように見えること、車内がこの時代ニス塗りのはずであることから、ほぼ間違い無いかと。窓下にテーブルが無いのは少々不自然ですが、車種によっては無かったようなので仕方が無さそうです。

赤松様クイズの栓抜きですが、今あるのはJR東日本の保存旧型客車(SL用等に使用)は確実かも知れません。スハ43系はテーブル下ではなく、座席の肘掛け間に付いているものがありましたので、今でもそこかもしれません。
その他、小田急のロマンスカーには10000形・20000形までは栓抜きがあったので、その譲渡車である、長野電鉄「ゆけむり号」(1000系)と、富士急行8000系には撤去されていなければ、今でも付いていると思います。瓶ビールやホッピーなどどうぞ(笑)。
ロマンスカーは、テーブル本体では無く、テーブル近くの壁に直接付けられていました。テーブルが折りたたみ式で、あまり力がかけられないためではないかと思いますが、ロマンスカーの栓抜きは、特に比較的新しい車輌は、ステンレス製で、薄手に出来ていたのか「たわみやすい」そうです。

赤松様、全国栓抜き探し行脚の際は、うちにも寄って下さい(笑)。取り外し品ではありますが、栓抜き金具、プレート(「引っかけて上にこじる」)がありますので(笑)。いずれホームページに掲載しますね。

失礼いたします。

すぎたま | URL | 2019-10-29(Tue)21:28 [編集]


Re: 栓抜き今でもありますよ~

すぎたま様 コメントの連発 ありがとうございます。

そういえばロマンスカーのテーブル端にあったのは、折り畳み時に押すボタンでしたね。栓抜きは壁に直付けでしたか。

そうそう 北斗星のロビーカーのソファー前の壁にあった、長テーブル端にも栓抜きが付いていましたね。
されど栓抜き テツ界に於けるコレクションの細道は奥深いですね!

テツエイダ | URL | 2019-10-30(Wed)22:29 [編集]