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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

 151. 私が棄てた女

1969年9月 日活 製作 公開   監督 浦山桐郎

シミズ自動車営業主任の吉岡努(河原崎長一郎)は 60年安保学生運動での挫折から女工 森田ミツ(小林トシエ)の肉体に溺れるも逃げ棄ててしまいます。出世の為 社長の姪との結婚を画策するもミツが忘れられない男で、その生き様を描く映画です。

吉岡は狙った社長の姪 三浦マリ子(浅丘ルリ子)とつきあい始めますが、マリ子は社長から縁談を持ち込まれます。上司の奥さんの見送りに東京駅 13番線 横須賀線ホームに来た吉岡は、売店で買い物をしているマリ子に明日の縁談をスッポカす様告げます。
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しかしマリ子は「今はお芝居しているしかない」と言い、「明日は来いよ」と言いながらマリ子が後ろを付いて来ると思った吉岡に反し乗車。ドアの閉まった久里浜行の一等車デッキから手を振り怒る吉岡をホームに残して走り去って行きました。
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この映画公開年の 5月10日から国鉄は長年続いた等級制からモノクラス制となり、従来の一等車はグリーン車で二等車は普通車となりました。ロケはこの改定後に行われたと思われますが、未だ一等車表示でグリーンマークではありません。
特急・急行列車の標示改訂を優先して、普通列車は後回しだったのかもしれません。この頃 横須賀線は朝夕以外全て横須賀行で、久里浜へは横須賀乗換でした。故に構内放送は、12:41発の部分も含め架空のアフレコと思われます。
ちなみに同時に運賃値上げもあって東京~横須賀での支払額を比較すると、改定前は二等 230円・一等 430円だったのが改定後は普通 280円・グリーン車 530円でした。現在では普通 1080円・グリーン 2060円(平日・事前料金)

次に五反田駅近くで、偶然吉岡とミツが再会します。ミツは吉岡から棄てられた後、色々な仕事で生き延び 荒んだ様子です。ミツが住むアパート前での短い会話ですが、背後の高架線上を池上線の3連が五反田駅へと到着します。
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3000系3連ですが、1928年完成とは思えぬ高さで高架の山手線を乗り越える様に池上線五反田駅ホームがあります。二人がいる目黒川沿いの場所は、現在ホテル・ロイヤルオーク五反田が建っている所です。

中盤 回想シーンですが逗子海岸の小屋にミツを置き去りにして、逗子駅1番線から一人横須賀線の東京行に乗ろうとする吉岡の姿をグリーンフィルター越で映した様な映像があります。
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逗子駅1番線 上りホームで待つ吉岡の前に 113系横須賀線電車が到着します。この映画はパートカラー作品であり、ミツが故郷を回想する場面では相馬野馬追等をカラー画面で映っています。

ミツが転がり込んで住む家の 森田キネ(岸輝子)が鉄道自殺しようとする姿を、ミツが跨線橋上から見かける場面があります。線路上に座り込むキネを近所の奥さん方が線路外に出そうとしています。
そこへEF13型電機+EH10型電機が牽引する貨物列車がホイッスル音と共に近付いて来ます。それを見た奥さん方に続いてキネも自分で、線路外へ退去しました。
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ここは東海道新幹線の高架下を走る品鶴貨物線(現在は横須賀線等も走行)で、次位のEH10電機は二両一組の当時最大最強の電気機関車でした。


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コメント


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浦山監督の気持ちはわかりますが

ラストで、浅丘ルリ子と小林トシエが川で一緒に洗濯しています。これは浦山の、金持ちと貧乏人が共に和解してほしいという思いでしょうが、賛成できませんでしたね。

さすらい日乗 | URL | 2018-01-07(Sun)19:45 [編集]


Re: 浦山監督の気持ちはわかりますが

さすらい日乗 様 コメントありがとうございます。

素直に観れば、監督は気持ち良い気分の終わりにしたかったのでしょう。

テツエイダ | URL | 2018-01-08(Mon)13:24 [編集]