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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

 113. 善魔

1951年 2月 松竹 製作 公開   監督 木下恵介

新聞記者 三國連太郎(三國連太郎)が取材先の女性と恋愛関係となり、上司である中沼部長(森雅之)もその姉と再燃しますが形は違えど共に悲しい結末へと向かう悲恋ドラマです。

大蔵官僚 北浦剛(千田是也)の妻が家出した件の取材で、三國が彼女の実家のある草軽電鉄の小さな駅に降り立つシーンが最初にあります。雪晴れの中 客車から降りた三國は眩しそうに後方を見ています。
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そして三國が去った後 駅員が牽引してきたデキ12形ELの運転士と話しています。
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この駅は草軽電鉄研究家である「鉄道青年 様」の情報によりますと、北軽井沢駅の手前の栗平駅だそうです。

官僚の妻 北浦伊都子は実家には居ませんでしたが、静岡県に住む伊都子の友人 浅見てつ(楠田薫)の元に居るかもしれぬとの話から妹の鳥羽三香子(桂木洋子)を伴い向かいます。
午後三時頃の草軽電鉄上り便に乗ったとすると、16:00に新軽井沢着。軽井沢 17:02発の信越本線上り314ㇾ上野行普通列車で 21:28の到着で、この列車の車内らしきシーンがあります(セット撮影と思われます)

この後東海道本線の下り列車はありますが、さすがに清水到着が真夜中になるので翌朝の列車で清水へ向かった様です。続いて EF56形電機らしきに牽かれた列車が清水駅へ到着するシーンがあります。
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想像するに東京 7:00発の静岡行普通 325ㇾに乗ると、10:55の清水着と意外に掛ります。そして二人はタクシーで久能山麓にある浅見宅へと向かうのでした。

三國の取材から家出した北浦の妻とは、中沼が学生時代に付き合っていた伊都子(淡島千景)であることが分かり神宮外苑と品川駅での回想シーンがあります。
品川駅 11番線で待つ伊都子の元に学生服姿の中沼(森は当時40歳!)が駆け寄ります。後方では品川区の 2120形蒸機(通称 B6)らしきが盛んに黒煙を吹き上げ貨物の入れ替えを行っています。
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続いて中沼は伊都子から今でも未練がある旨の手紙を受け取り、伊都子の所に向かうべく日の暮れた品川駅に現れます。煙草を吸いながら貨物列車の入れ替え作業をボンヤリと眺め、列車の到着を待っています。
やがて「 18:42発 各駅停車 静岡行 」の放送が有り、中沼は到着した列車の2等車に乗ると車掌から清水までの2等切符を購入した様子です。この時代普通列車の2等車では座席の白カバーがまだありません。
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この列車は東京駅 18:30発の 339ㇾ静岡行普通列車で、清水へは 21:24の到着ですから訪問するには遅すぎ 中途半端ですね。それで続いては日中 中沼と伊都子が茶畑で話すシーンになっています。

取材を通じて知り合い 恋仲となった三國と三香子ですが、病弱な三香子はこのまま進んで行くことに躊躇します。そんな三香子の家を訪ねた三國は励まし結婚を決意させ、中沼に立ち会ってもらい式を行おうと東京へお願いに向かいます。
一刻も早く中沼に会いたい三國の心中を表す様に、夜汽車から朝まだきの山間部・夜明けの平野・疾走するC57 と短いカットの連続で東京へ急ぐ姿を現し尾久区の C57126が牽いて上野に到着します。

中沼の同意を得て上野駅で落ち合う手筈の二人ですが、三國の方が先にタクシーで到着します。軽井沢までの切符を二枚買い 改札近くで待つと、中沼の愛人 小藤鈴江(小林トシ子)に会い別れの経緯を聞きます。
構内はスキーを担いだ人々で混雑しています。鈴江が立ち去った後 中沼が現れます。
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予定の列車の発車時刻が迫っている様子ですが、鈴江の話から三國は中沼の人間性に疑問を感じている様です。

次のカットでは荒川の鉄橋らしきを高速で渡る C57牽引の列車の姿があります。
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そして混雑する車内のデッキに立つ二人は、中沼が話しかけても険悪な雰囲気となっていました。このシーンはセットの様です。
そして日も暮れた栗平駅に無蓋車と客車を牽くデキ12形電機が漸く到着します。二人は意外な程明るい客車内から寒々しいホームに降り立ち、出迎えた伊都子と手短な挨拶の後 馬ソリで鳥羽家へと急ぐのでした。
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当時の時刻表で見ますと、上野 11:40発の直江津行 323ㇾ普通列車に乗り 16:23軽井沢着 草軽電鉄 新軽井沢 16:34発の草津温泉行に乗り換え 18:00前に栗平と長旅なのです。
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