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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

 107. 山と谷と雲

1959年5月 日活 製作 公開   監督 牛原陽一

流行作家 牧戸一郎(金子信雄)と有馬寿々子(北原三枝)が結婚したことから、弟の山岳写真家 牧戸次郎(石原裕次郎)が絡む三角関係の様になるドラマです。

この映画は 北信濃の地でロケが行われたことから、近代化される直前の貴重な大糸線の姿が映像の中に残されています。
大きな角型集煙装置を付けた C56113蒸機が牽引する混合列車が、大糸線 信濃大町駅へ到着する場面からこの映画の鉄道シーンは始まります。
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前から2両の有蓋車に続く3両目の二三等合造車から、牧戸一郎と作家仲間で友人の古田(清水将夫)が降りてきます。
二三等合造車は二重屋根にリベット打ちの外壁、二等車の窓は狭窓2枚×4組・中央にトイレが配置といった外観から オロハ30形ではないでしょうか。
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次は一郎が青木湖の畔に家を建て移り住んだので、東京から出版社の面々が訪ねて来る場面です。姫川に架かる鉄橋でしょうか? C56蒸機が牽く混合列車が渡るカットが先ず映ります。
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信濃大町駅でのシーンと同じく角型の集煙装置を付けた C56が、有蓋車2両の後ろにオロハ30形二三等合造車らしきを牽いて北アルプスをバックに橋を渡っています。

続いて 神城駅へ C56蒸機が牽く列車が到着し、タブレットを機関助士が渡します。
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ホームでは牧戸が二等車から降りてきた東京からの客を出迎えます。
「新女性」の編集長 村松(大森義夫)と部下2名に加えて、随筆家の咲田啓子(宮城千賀子)更にバー「コンドル」のママ 登見子(白木マリ)まで付いて来たのでした。

一郎の家は青木湖畔なので、最寄駅は簗場駅と思われるが何故 神城駅なのでしょう。そのカギは電化工事ではないでしょうか。
国鉄では観光客増加を目的に、この映画公開から二か月足らずの 1959年7月 信濃大町~信濃四谷(現 白馬)までを一気に電化しました。

想像するに この映画のロケ時 簗場では既に電化工事が進んでいたので、北信濃の鄙びた感を求めて電化工事が未だの神城駅で撮影したのでは・・・。
東京からの一団は当時の時刻表で、新宿8:00-(準急 穂高)-13:48松本14:22--15:06信濃大町15:20--16:04神城着という乗り継ぎでやって来た設定と思われます。

その後の大糸線は翌 1960年7月に信濃森上まで電化され松本から直通の電車が走り、1961年3月には北部の混合列車を廃止し無煙化 信濃森上~糸魚川の旅客列車は全てDC化されました。
それに合わせてか、上記の混合列車に連結されていたオロハ30形二三等合造車も全て廃車されました。

混合列車時代には信濃大町~糸魚川の直通列車は一日3本で 所用 187分~236分でしたが、一日7本になり 乗換を含め所用 120分程に短縮 近代化されました。ちなみに現在でも7本です。
1961年10月の全国時刻大改正では、遂に[準急第二白馬号]が新宿~信濃森上を走り抜ける東京直通列車が誕生(新宿~松本は急行列車)。翌年には新宿~糸魚川の全線通し運転も行われました。


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