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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

398.盛り場ブルース

1968年8月 東映 製作 公開  カラー作品   監督 小西通雄

銀座のクラブ 麗の渉外部長 高見啓一(梅宮辰夫)と ホステスの 三宅かおり(野川由美子)が、数々のトラブルに会いながらも 夜の銀座で生きる 二人の愛欲の機微を 描いた映画です。

かおりは 独り者という触れ込みで 働きだすと たちまち人気者と なりますが、インターン研修医 牧野吾一(蜷川幸雄)と同棲中でした。
土手の上らしきで 話し合う二人の 背後には、上り勾配区間 を走る 帝都 高速度交通営団 地下鉄 丸ノ内線らしきの 電車が映っています。
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その後 かおりに惚れている 客の岡林(金子信雄)は 金で二号にしようとしますが、騙されたと知った かおりは逃げ出し 行方不明となります。
かおりの弟で 流しから高見によって クラブ麗で歌い出した 三宅信一(森進一)の処へ 届いた手紙から、高見は潜伏先の仙台へ行って
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かおりを捜し出し 東京へ連れ戻そうと列車に乗ります。
ED75形電機らしきに 牽かれた列車が映り、
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いかにも セット撮影の客車内で かおりと高見は 並んで座っています。
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その後 少し寝た高見が起きると、隣のかおりは 荷物と共に 消えていました。
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高見が必死に 車内を捜すと、閉鎖されている食堂車手前の デッキでかおりを発見します。
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しかし かおりが突然 扉を開けて 飛び降り自殺しようとするのを 阻止した高見は、頬を叩いた上に 接吻し抱きしめるのでした。
二人は 1:54に到着した 次の停車駅 平で降り、
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「平~ 到着の列車は 2:03発上野行 急行十和田号でございます」と 放送が流れる中 
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無人のホームを 改札口へと歩きます。
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駅前旅館で 互いの愛情を確認した高見は クラブと縁を切る為、翌日 急行列車の 6号車デッキで かおりの見送りを受けながら
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「今日中に戻る」と言い残して 東京へ向かいました。
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高見が辞表を出すと 予想通り 社長の取り巻きから リンチに会い、更に麗の女給 朝子(白木マリ)から 高見の計略を聞いた牧野に 背中を刺されてしまいました。

担ぎ込まれた病院で 治療を受けている頃、平駅の改札口では かおりが 高見の帰りを待っていますが 現れません。
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高見が 警察の聴取を受けている頃 部屋から 平駅舎を見ていて
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諦めた かおりは 常磐屋旅館を引き払い、番頭(相馬剛三)に 見送られて 一人寂しく 平駅2番線から ED75形電機牽引列車に乗るのでした。
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PS.
  最初の画像は 帝都高速度交通営団地下鉄 丸ノ内線の 赤坂見附駅から 四ッ谷駅へ向かって、トンネルから出て 上り勾配を走る姿と 思われます。

  4枚目の画像からの 車内シーンは 明らかにセット撮影ですが、美術さんは あえて1等と2等席の 中間的な感じの座席に したのでしょうか。1950年代後半の 新東宝映画 車内セットの様です。

  8枚目の画像で映る列車は アフレコと思われる「2:03発上野行急行十和田号」と放送音が入っていますが 急行札が無いので、7:58青森始発で 翌日 0:34平着 0:51発の 上野行228レで ロケが行われたと想像します。
  また平駅での 発着時刻は合っていますが 210レは第一十和田号なので、その後に 第二~第四まで十和田号は 続いて来ることから 放送に 第一を付け忘れることは 無いと思われます。

  10枚目からの画像で映る デッキでの別れのシーンは、自動扉ではない 旧型客車ならではの 哀愁が漂っていますね。

  最後の場面で映るのは 高見を諦めた かおりが再び 仙台へ向かうべく 平駅2番線で、ED75形電機牽引列車への 乗車を待つ場面で 磐越東線のDC列車も 片隅に映っています。


本作では 当時から 人気歌手となった 森進一と 後年 世界的に有名な 演出家になった 蜷川幸雄が、役者としての台詞も多く それなりの俳優として出演しています。

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397.サザエさんの婚約旅行

1958年8月 宝塚映画 製作  東宝 配給 公開   監督 青柳信雄

九州での 法事出席に向かうサザエ(江利チエミ)カツオ(白田肇)の道中や、婚約者フグ田(小泉博)との 九州北部旅行の 珍道中を描いた コメディ映画です。

序盤 父親の名代で 若松の伯父さん宅での 法事に出席すべく 明日昼過ぎの若松到着予定で、東京駅からEF58型電機牽引の 急行列車らしきに乗って出発し 有楽町駅付近を走行する列車が映っています。
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長い道中の列車が深夜に 上郡駅に着くと、
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乗って来た老人(沢村いき雄)が サザエ達が座るボックス席の前で止まります。
そして 荷物が置いてある サザエの向かい席を見て「ここ空いてますか」と言うので「空いてます」と サザエが答えると、カツオの向かいに座る男(由利徹)は「塞がっている」と答えてサザエは呆れます。
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サザエが言い返すと 男は漸く席を空け、足を伸ばしました。カツオがトイレに行くのに 男の下駄を履いて行き びしょ濡れにして戻ると、男が怒りますが 平然と「だって汽車が揺れるんだもの」と答える カツオでした。
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翌日昼過ぎに 筑豊本線の終点 若松駅に到着しますが
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 駅前からの市営バスに サザエが乗り間違えて
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カツオと揉め、列で待つ 大阪の叔母さん 西野ちえ(浪花千栄子)に 衝突して 印象を悪くしてしまいます。

続いて 伯父さんの家に向かう 若松市営バスからの映像らしく、商店街のある 中川通りの 若松市営電気軌道上を進んでいます。
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その後も サザエは法事後の席で 酒に酔って踊り出し、伯父さんから「大阪の叔母さんの旅館で 行儀作法を教えてもらいなさい」と 怒られてしまいます。

そこへ休暇をもらった フグ田が現れ、サザエとカツオを 九州北部旅行に 連れて行ってくれるのでした。先ず長崎へ向かう場面で 海沿い区間を走る、晩年の門デフ付き C51形蒸機牽引列車でしょうか。
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長崎市内観光後に 雲仙・島原へ行き、佐世保駅から 西海橋行のバスに乗ります。
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更に 唐津へ寄ってから 旅の最後に博多へ着いた場面で、西鉄福岡市内線の 路面電車が映っています。
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フグ田から 帰りの切符を貰った サザエですが 夜行列車内で フグ田から「今度大阪へ転勤になる」と聞いた話を 思い出し、大阪で途中下車して 叔母さんの旅館で 行儀見習いとして 暫く滞在すると カツオに伝えました。
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SP.
  当時 東京から若松へ行くのは、大変な旅でした。最初の画像は 日中に出発する 九州行の急行列車と思われます。
  ところが 山陽本線 上郡が 0:54発車との脚本ですが、そもそも上郡には 急行列車は停車しません。昼過ぎに 若松駅到着との脚本なら、該当するのは 東京13:30発39レ長崎行の 急行雲仙号が近いでしょう。

  39レは 午前1:00頃上郡を通過し、10:12に 鹿児島本線折尾駅に 到着します。階段を降りて 筑豊本線に乗り換えで、折尾発 11:09 → 11:30 若松と 昼前に着いてしまいます。この後 直通は 20:30発の 41レ筑紫号となり、若松着が夜になります。
  東京18:30発 7レ特別急行あさかぜ号を使えば、10:43門司着で 11:18発佐世保行 327レに乗り換え 折尾12:05着 12:40発722レに乗り換え 12:59に若松着と 脚本に合致しますが 実態に合いません。

  7枚目の画像に映る 若松市営電気軌道の線路は、1936年 埋め立て地に進出した工業地帯で使う 原料や製品輸送の為に 若松駅から敷設された 電化された貨物専用線で 1975年まで使われました。

  8枚目の画像は不鮮明ですが 給水温め器の後ろに 二つコブがあるので、門デフ仕様で 1960年頃まで走っていた C51形蒸機かもしれません。

  車内シーンは 勿論セット撮影ですが 宝塚映画製作の カラー映像で、北九州広域での ロケを行いました。しかし 唐津くんちの場面だけは 撮影だけで 現地に俳優は行かず、現地の祭り衆は 肩透かし喰らった様です。

  

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396.離愁

1960年8月 松竹 製作 公開  カラー作品   監督 大庭秀雄

三浦暁子(岡田茉莉子)が 夫との婚約中に 何度か親密に会った陶工と 5年ぶりに偶然再会したことから、姪と同時に 陶工を愛する様になり 苦悩する様を描いた メロドラマです。

暁子の姪である 木谷れい子(桑野みゆき)が 自殺しかけたのを 境道介(佐田啓二)が 助け保護した 京都の友人宅へ、前日知らせを聞いた 叔母の暁子が 東京から迎えに行きました。

そこで 5年前に親密に会った 思い出のある境道介が、れい子の恩人と分かり 驚く暁子です。帰路に乗った 特別急行列車つばめ号
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一等車に 二人は並んで座っています。
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その道中で れい子は境と暁子の 馴初めからのことを、事細かに聞いて 暁子を困らせるのでした。
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れい子の婚約者 八田光太郎(山本豊三)が 自分の机に 暁子の写真を飾っていたことから 自殺未遂を起こしたのですが、れい子は親切に助けてくれた 境を愛するようになり 暁子と競う様に境宅を訪れます。

暁子の夫 三浦清高(中谷昇)は フランスへ出掛け、暁子は義父母が滞在する 軽井沢の別荘へ ご機嫌伺に行きます。そこへ山へ行く序に 寄ると、れい子からの知らせで 暁子は駅へ向かいます。

改札口で れい子を出迎えると
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れい子は再びホームへ入り、去り行く汽車に向かって 大きく手を振るのでした。
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暁子が「どなた」と聞くと、「境さん 長野の奥様の実家へ お見舞いに行くそうなの 昨日から益子へ行ったり ずっと一緒だったの」
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それからも れい子は頻繁に 境の工房を訪ね、東急電鉄東横線沿いの道を 帰路に境と 連れ添って歩く 場面があります。
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そして踏切での別れ際に れい子は、堺への愛情心を 伝えるのでした。
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れい子の母 芳枝(三宅邦子)は そんなれい子の行動を心配し 暁子に相談したので 来るように依頼すると、雨の夜 東横線 田園調布らしき駅前から 暁子に電話して来た れい子と口喧嘩になってしまいます。
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その後れい子が また境の工房を訪ねると、既に暁子が 境の帰宅を待っていました。暫くして暁子は「あと五分しても 境さんが戻らなければ、今日は一緒に帰りましょう」と話します。

そして二人は 横を東急電鉄5000系らしき4連が走る 道を歩きながら、
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暁子は れい子と境の関係を 問い詰めます。
するとれい子は 開き直った様に「好きになって 困ってます」と言うので「仕方がないでしょう」と返すと、れい子は「どうして?奥様がいるから?それとも叔母さまがいるから?」と言うので「バカなこと 言うもんじゃありません」と言って 鳴り出している踏切を 渡ってしまいました。
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PS.
  1枚目の画像で映る 151系特別急行電車つばめ号は 本作公開2か月前の 1960年6月より電車化され、2枚目からの画像で映る 一等車内シーンは セット撮影です。

  暁子は 前日電報を受け取り 迎えに行きますが 行程を想像すると、東京 21:00―(15レ急行銀河 一等座席)―6:38 京都・・(タクシー)・・京都 9:32―(104レ特別急行 第一つばめ・一等車)―15:30 東京
  暁子は着物姿で 迎えに行ったのと、「前夜よく眠れなかった」との台詞から 銀河の一等座席車 スロ54に乗ったと推理します。駅からタクシーで 往復を考えても、第一つばめに乗るには 銀河が最適です。

  5~8枚目の画像で映る駅は 中軽井沢駅の様に見えますが、だとすれば れい子は長野行の下り列車ではなく 上り列車に向かって 手を振っていることになります?

  この頃 日中の上野からの 優等列車は多く、臨時列車を含めると 12:27 ― 603レ急行白山金沢行・13:53 ― 1305レ準急高原長野行・16:03 ― 305レ準急白樺長野行があります。(この他気動車準急が1本)
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  9枚目の画像で映っている 東急電鉄 東横線らしき画像は、何処の駅でしょうか?ご存知の方は お知らせください。それにしても 駅をバックに 逆方向へ進み 踏切を渡りますが、この方法でしか 駅へ行けないのでしょうか?



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