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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

378.三匹の牝猫

1966年9月 日活 製作 公開   監督 井田 探

一癖ある3人の女達が 美人局的に 男を誘惑しては騙し、巻き上げた金で 共同の夢を目指す アクション映画です。

三崎葉子(八代真矢子)は 暴力団里見興行の幹部 木村(郷英治)に 暴行された上に 肩に薔薇の入墨をされ、解放された隙に ナイフで木村を刺してしまいます。
木村の元から逃げ出した葉子は 明け方に帰宅すべく ふらつきながら、都電大久保車庫への 回送線を走る 12系等電車の横の 線路上を歩いています。
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その後 追手から逃げる為 葉子は矢代(藤竜也)の手引きで 熱海の島田(天坊準)の所へ向かうことになり、東京駅9番線で 矢代の見送りを受けています。
先ず 3ドアの111系か113系電車が入線してきました。
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続いて売店横で 話す二人の背後で、向かいのホームに 停車していた旧型客車列車が出発して行きます。
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この時代では珍しい旧客で サボは読めませんが、前夜に大阪始発で 13:45に到着した144レが 品川客車区へ 回送されるシーンでしょうか。

続いて113系電車らしきの 走行シーンが映って、
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一等車内で 化粧直しをしている葉子が映ります。
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すると 葉子から後方座席に座る女性が 隣席の男から、無理やりな行為を受けて 困惑している様子が見えました。
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そこで葉子は 二人の元へ行って
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向かいの席に座ると、「あたしと言う恋人が居ながら アパートから消えたと思ったら、こんな男と・・」と言うや 女の首を締め上げます。
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慌てた男は「偶然隣に座っただけだ」と言って 逃げて行きました。ところが助けた女は 斉田みどり(水上竜子)と名のり「退屈しのぎに からかおうと思っただけ」と言って仲良くなります。
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やがて列車は 熱海駅2番ホームへ到着し
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二人が駅前へ出ると、スケコマシの鉄(野呂圭介)が 今川まり(野川由美子)を騙して タクシーに乗せるところを目撃します。
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二人はタクシーで追い駆けると 連れ込まれた旅館の部屋では、本性を現したまりに 鉄の方がやり込められていました。

こうして仲良くなった三人は スケベな男を騙して 金を巻き上げ、自分たちの マンションを建てようと 誓うのでした。
最初は 首尾よく熱海の釘貫一家から 三百万円を奪い取り 逃走しますが、里見興行と 釘貫一家の双方から 追われてしまいます。

一方 葉子の行方を 心配していた矢代は、漸く居場所が掴めて 公衆電話から連絡出来ました。
その横の 都電専用線区間を、6000形らしき電車が 走り抜けて行く姿があります。
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PS.
  最初の画像は 新宿靖国通りから分岐して 都電大久保車庫へ向かう 連絡線で、回送車が運行される 非営業区間だった様です。
  八代真矢子(後に万智子)はともかく、新聞配達人は 都電側と打ち合わせた上でのロケでしょう。

  東京駅ホームでのロケは 当時では段々難しくなり、次の画像の様なシーンは 最後かもしれませんね。
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  そんな中で 旧型客車普通列車が映っている、東京駅でのシーンには 魅かれました。

  上野駅・新宿・両国などでは まだまだ残っていましたが、東京駅では ごく少数で 日中到着する144レは目立ちました。
  この他 熱海発の13:11着848レも残っていて、3.4枚目の画像は この列車の可能性もあります。

  九州行の急行列車 31レ雲仙・西海33レ高千穂・35レ霧島は、まだ昼行始発で残っていました。

  11枚目の画像は、急行型の153系でしょうか。急行電車が次々と発着する、華やかな時代とも言えるでしょう。

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377.青春三羽烏

1953年12月  松竹 製作 公開   監督 野村芳太郎

性格は違うが 仲の良い3人の男が、意中の女性との結婚を目指す コメディ調の青春映画です。

沖倉淡三(三橋達也)の家に 婿入先候補の 藤原仙子(高友子)が突然来訪し、沖倉の上着に入れていた 候補№6 宮田千晴(藤野高子)の 写真を見られて騒ぎ出します。
そこへ到着した中ノ目覚(高橋貞二)が 昨夜飲み屋で 上着を間違えたのだと誤魔化し、その後 到着した千晴を 強引に中ノ目が連れ出して 沖倉の窮地を救ったのでした。

すっかり憤慨して速足で歩く千晴を 追い駆けた中ノ目は、橋の上で追い付き 宥めている背後を ポール集電仕様の 都電初期型6000形らしきが走っています。
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喫茶店で話す内に すっかり意気投合した二人は、ひとまず別れて帰宅するべく 千晴は地下鉄乗り場に向かって行きました。

地下鉄銀座線の高架区間を 3輌編成の電車が走るシーンに続いて、
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東京急行電鉄 東横線への改札口を入った所で 二人は再会して驚きます。

続いて 東横線の高架区間を走る 東京急行電鉄3000系が映り、
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共に代官山駅で降りた二人は 手を振り別れます。
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ところが 角を2回曲がると、バッタリ再会です。実はお互いの家は、近所だったのでした。

千晴の叔母さんの家で飼っている 犬の具合を獣医大学生の 中ノ目が診ていると、千春の父親が 養子候補者に会いに 上京して来ると知らせがあったので 候補者代役として 会ってくれと頼まれます。

東海道本線 新橋駅上りホームに、EF58形電機牽引の 列車が到着します。
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先頭客車から 千晴の父親 宮田甚助(日守新一)が降りて来て、
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中ノ目が候補者として 千晴に紹介されました。
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二人と父親は 一緒に音楽会へ 出掛けたのですが、親友 牧野虎太郎(川喜多雄二)と 中ノ目の妹 桂子(紙京子)が 会場で揉めたことから、偽候補者であることがバレて 中ノ目は面会禁止と言われてしまいます。
跨線橋の上で 中ノ目と千晴は もう会えないが好意はある などと話す内に、
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下を72系らしき 国電が走り抜けて行きます。
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その後 中ノ目の亡くなった父親の 親友だった及川潔(北龍二)から 飼い犬が飲み込んだ ダイヤの指輪を、中ノ目が無事 吐き出させた御礼に 貰ったお金で母親シゲ(東山千栄子)と 温泉旅行に出掛けます。
電機牽引列車の走行シーンが映り、
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並二等車席に親子で 向かい合せに座っています。
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やがて列車が横浜駅に到着すると、
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中ノ目が窓から シューマイ売りを呼びますが 聞こえない様です。
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そこで デッキから呼びますが 通じないので、
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シゲが止めるのも聞かずに 中ノ目は走って買いに行ったのでした。
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シゲはハラハラドキドキの 様子ですが、中ノ目は「乗り遅れるもんか お茶は次の駅で買うよ」などと 余裕顔でシューマイを勧めています。
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一方及川が姪を連れて 中ノ目の行く湯河原温泉へ向かったと 牧野からの情報を聞いた沖倉は 千春の通う洋裁学校へ向かい、千晴と仲良くなった仙子の手前「湯河原で中ノ目と見合いさせようとしている 及川の計画打破の為 湯河原へ行こう」と誘います。

親子で湯河原温泉の旅館へ到着すると 及川が姪の秋子(東谷瑛子)を連れて現れ、暫くすると 沖倉が千晴を連れて合流し 更に千晴の父 宮田が駆け付け 騙された怒りで 娘を連れ帰ってしまいます。

皆も同じ列車で 帰ることとなり、宮田親子とは離れた席で皆 憂鬱な表情で 黙り込んでいます。
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そして及川が 最後の説得に、宮田の席へ赴き 説得すのでした。
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中ノ目親子が帰宅すると 桂子とケンカした牧野が、20:30の汽車で 実家へ帰ると出て行きました。桂子は20時近くなると出かけ、入れ替わりに 宮田が現れ謝罪するのでした。

新橋駅の改札口へ 桂子が到着すると、時計は既に20:37を指していて 諦め顔の桂子です。
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ところが横を向くと、旅行ポスターを見ている牧野がいます。
「乗り遅れたんだ 次の汽車は一時間後なんだ」と呟く牧野に、誤解が解けた桂子は 素直な気持ちを伝え 三組共にハッピーエンドとなった模様です。





PS.
  1枚目の画像は 橋の欄干に見覚えがあり、中央本線飯田橋駅前を走る 都電15系統かもしれません。

  2枚目の画像は 帝都高速度交通営団 銀座線(本作公開一週間前に銀座線と決定)神宮前駅(現 表参道)から 終点渋谷駅へ向かう、1000形らしき3連電車で(4連化開始される2年前)今は無き 東横百貨店が映っています。

  3枚目の画像は 東京急行電鉄東横線 渋谷から代官山へ向かう 3000系らしき電車ですが、1945年まで使っていた 並木橋駅ホーム跡が 撮影場所と思われます。

  4枚目の画像は 激変した代官山駅ですが、当ブログでは(62.踏みはずした春)でも 同じ方向から当駅が撮影されています。

  5~7枚目の画像では 宮田の上京場面を、珍しく新橋駅東海道本線ホームで 撮影しています。当時の上り列車は 2本の特急と特殊列車以外 全ての急行・普通列車が新橋駅に停車していたので、昼頃到着の 326レ(浜松始発)あたりの 先頭客車で撮影したのでしょう。

  8~9 枚目の画像で ロケが行われた場所は、遠くに私鉄電車らしきが映っていて 田端とは思えず分かりません。

  12~16枚目の画像で 横浜駅へ到着する列車は 7:36着7:38発の 325レ沼津行普通列車と思われ、シュウマイ売が 朝から販売していたのでしょうか。

  最後の画像で 桂子は牧野が 20:30の汽車に乗ると聞いて 新橋駅へ来ましたが、既に20:37なので 一度は諦めました。しかし 20:30頃の東海道本線下り 新橋発列車は20:24富士行849レと 20:40熱海行851レで、該当する列車がありません。

  上りが殆ど停車する新橋駅ですが、下りは 全ての急行列車が 通過だったのです。20:30の汽車と言えば、東京発神戸行 13レ急行銀河のことだったでしょう。牧野は「次の汽車は一時間後だ」と言いますが、故郷が神戸だとしても 21:00発の広島行21レ急行安芸で行けます。


こんなにも数多くの鉄道シーンが散りばめられている本作が、今まで全く小生のアンテナに引っ掛かりませんでした。
それ故に当ブログは、まだまだ続けるつもりです。

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