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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

365.安藤昇のわが逃亡とSEXの記録

1976年9月 東映 製作 公開  カラー作品   監督 田中登

安藤興業社長 安藤昇(本人)は債券取り立てを 拒絶された 極東船舶 社長 早川哲司(近藤宏)を 子分に狙撃させ、愛人の所を転々と 移動して 逮捕されるまでの 34日間を描いた 好色系 アクション映画です。

子分の船橋一也(蟹江敬三)が 早川を撃った時、安藤はアリバイ作りなのか 熱海の旅館に居ました。そこへ襲撃成功の知らせが入り、翌日東京へ戻ることにします。
小田原から乗り換えたのでしょうか 小田急ロマンスカー上り列車の最後部で、安藤は古山広(石橋蓮司)・進藤英夫(内田勝正)と共に 前日の事件を報じる新聞を読んでいます。
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終着駅新宿へ到着する 特別急行あしがら号から
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降りて来た安藤の周囲を、ボディーガード役の 古山と進藤が警戒しながら 前方へ進んでいます。

ところが改札口付近に 私服の刑事らしきの姿があり、国鉄側のホームにも 警官がいたので、
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三人は途中でUターンして 普通電車に乗換えました。
車内で運転室直後の最前部へ移動し 後方を警戒して過ごし、
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タイトルクレジットが続く中 下北沢駅で下車して 改札口へと三人は向かいます。
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そして下北沢のアジトへ トップ屋の森裕彦(小松方正)を連れ込み 警察の捜査状況を聞くと、早川は全治二か月の重傷で 警察は下山事件以来の 大捜査網を敷いているそうです。
指名手配された安藤は 警察が存在を承知するも 住所氏名不詳の 最新の愛人としてノーマークである 山辺康子(荻野まゆみ)の所へ潜伏します。また警察に狙撃犯とみなされた 河原邦彦(滝波錦司)は、上野駅から東北へ向かいます。
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その後安藤は 警察が家宅捜索後も厳重に張っている 赤坂の山岸旗江(中島葵)の家に4日居た後、伏龍部隊時代の戦友 田所有二(小池朝雄)の家で 田所が連れて来た愛人 田代文子(ひろみ麻耶)と最も長く 10日間潜伏します。
そろそろヤバイと 古山が次の移動先を探した日、文子は安藤のワイシャツに 口紅で別れ文を書いて 京王帝都電鉄井の頭線 神泉駅前の
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公衆電話から 警察に通報するのでした。そして間一髪で 古山が運転する車に載り込み、安藤は脱出することが出来ました。

続いて 小田急電鉄ロマンスカー 3100形NSEらしき展望席で、前方の右カーブから現れた
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国鉄御殿場駅始発の連絡急行 3000形SSEあさぎり号とすれ違います。
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その展望席には、安藤と古山が並んで座っています。そして右下にチラリと 国鉄厚木駅が映りながら
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小田急の厚木駅を通過すると、
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5年前に架け替えられた 新しい相模川橋梁へ向かっています。
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そして 葉山の貸別荘を潜伏先としますが、最後はプール際で 警官隊に古山と共に逮捕されました。護送中に森とカメラマンがハコ乗りで並走する車から、果敢にインタビューを試むのでした。
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PS.
  1958年6月11日に 東洋船舶で起きた 横井英樹社長 銃撃事件の顛末を、当の本人の主演で 愛人達との交流と 逃亡の過程を 共に主体的に描いた 異色のセミドキュメンタリー映画で 当ブログでは2作目の成人映画です。

  当ブログでは 過去小田急ロマンスカーが登場していますが、NSEを初めとする展望席でのロケ映画は初めてです。

  最初の画像が撮影された列車を想像すると 小田原8:44発の 特別急行さがみ2号 ⇒ 10:08新宿着で 車内ロケを行い、新宿駅ホームでのロケ後に続いて 10:19着のあしがら50号で 到着シーンの撮影。

  12枚目の画像以後の下り先頭展望席でのロケでは、途中で 3000形SSEとすれ違います。こちらもロケ当時の時刻表から想像すると 有力なのは、新宿12:00発の 特別急行はこね19号に乗り 海老名~厚木で連絡急行あさぎり2号とすれ違った様です。

  一応時代設定は1958年6月で、逃亡途中に賭場で遊ぶ時は聖徳太子の千円札束を使っています。
  しかし小田急ロマンスカーを初め、車もロケ当時の車を使って、特に時代設定に気を使っている様子はありません。


  安藤と田所は各種あった特攻戦法の中でも 成功の可能性がゼロに近く 訓練中に事故死者が復数出た 悲惨な伏龍部隊の戦友という設定で、安藤が伏龍部隊で訓練を受けて 事故死者を目撃したのも事実だった様で 作品内で語られた稀な映画です。

  


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364.美徳のよろめき

1957年10月 日活 製作 公開   監督 中平康

裕福な生活を送っている人妻が 偶然再会した昔の男と恋仲となり、逢瀬を重ね 泥沼にハマってゆく様を描いた よろめき映画です。

倉越節子(月丘夢路)は名家に生まれ 裕福な倉越一郎(三國連太郎)と結婚して息子もいたが、東京で偶然にも 昔恋した土屋(葉山良二)に会い 誘われ 密会の沼にハマってゆくのでした。

序盤 都電が行き交う銀座四丁目交差点で
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節子は信号も警官の警告も無視して、和服姿で銀座通りを 強引に渡った後
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偶然土屋と一瞬 目が合っただけの再会でした。

翌年には東京駅構内で夫と歩いている時
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スキー旅行へ行く土屋と偶然再会しましたが、一瞬立ち止まり黙礼しただけでした。

夫の倉越一郎は 自宅のある鎌倉から横須賀線で 東京まで通勤している様で、今朝も鎌倉駅2番線で 東京行の上り列車を待っています。
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その後 喫茶店で偶然会った二人は 送って行くからと 新橋駅から
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横須賀線に乗ると、
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車内で土屋は 長く付き合っている間柄の様に振舞い 節子を驚かせます。
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それからも度々二人は会い 女学校以来の親友 牧田与志子(宮城千賀子)にそそのかされ、遂に夫に嘘をついて 泊まり掛けで伊豆へ行くことに同意した節子は 東京駅の待合室で土屋を待ちました。
続いて 東海道本線根府川駅先にある 白糸川橋梁を渡る 80系電車らしきが映ります。
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しかし翌日 節子が関係を拒絶して 気まずい雰囲気となった二人が乗る 上り列車が大船駅に着くと、
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乗換える節子だけが 二等車からホームへ降ります。
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やがて電車が動き出し 窓の外に節子の姿が見えても、土屋は顔を背けて 外の節子の方を見ようとしません。
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去り行く 土屋の乗った上り列車を、節子は寂しそうに 見送るのでした。
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次に 銀座のバーで土屋といる所に 偶然倉越が現れ、節子は咄嗟に「こちら御存知の 土屋さんの弟さん 銀座でお食事を御馳走になったの」と言い訳して 一緒に帰り 鎌倉駅の降車口から 出て来たシーンがあります。
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その後 夫の子を身籠った節子は 土屋への想いもあって 堕胎しますが、入院した病室に 与志子から聞いた土屋が駆け付け 散々な節子です。 
更に与志子が 只のボーイフレンドだと言って 弄んだ飯田(安部徹)に 刺されたとの知らせに二人で行くと、包帯だらけの哀れな姿で 絶命してしまいます。

そして 横須賀線で土屋と帰る車内で 節子が「このままどこかに連れ去ってくれたら」などと妄想していると、
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土屋が「今度大阪へ行って 仕事をしようかと思っている」などと話します。
しかし 鎌倉の浜辺を歩いている時、遂に節子は 別れ話を切り出したのでした。

翌朝 何事もなかったかのように 出掛けた倉越ですが、鎌倉駅のホームで 知り合い二人に挨拶されたのに 節子のことを考えているのか無言のままです。
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PS.
  小生は未読ですが 三島由紀夫の原作を かなりソフト化した脚本を 新藤兼人が書き、中平康が監督して 節子の心情を 高橋昌也がナレーションする形で進行しています。

  序盤の銀座四丁目場面は 特撮か不明ですが、交通整理の警官の動きが リアルで実写としたら 撮影許可は大変でしたでしょうね。
監督はこの場面で節子が想定外の奔放な行動をする女だと、表現したかったのでしょうか?

  車内シーンは 全てセット撮影ですが、7枚目の横須賀線70系二等車と 12枚目の東海道本線80系二等車場面で セットを使い分けているのは流石ですね。

  駅でのロケは 東京・鎌倉・新橋で 短く行われましたが、大船駅では 到着した電車から 月丘夢路が降りて、去り行く電車を見送るシーンのロケは 深夜帯で行ったことでしょう。



  図らずも硬派・軟派の作品を 交互に取り上げましたが、当ブログの趣旨は 一貫して鉄道シーンの紹介にあります。次回はあくまで、その趣旨に沿った 作品を取り上げます。


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