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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

358.警視庁物語 聞き込み

1960年6月 東映 製作 公開   監督 飯塚増一

独身で靴屋を営む 石川平作(沖野一夫)が 突然失踪し 所有する土地家屋を 何者かに処分されたことから、不動産強盗殺人とも言える 犯行の全容解明と 犯人逮捕までを描いた刑事ドラマです。

冒頭 東京桜田門にある 警視庁本部庁舎前を 都電 9系統(渋谷駅前~浜町中ノ橋)か 11系統(新宿駅前~月島通八丁目)の電車が走っています。
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続いて 桜田門電停に 11系統の月島通八丁目行らしき、都電8000形が停車している様です。電停にいる男性は、9系統浜町中ノ橋行を 待っているのでしょうか。
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警視庁本部庁舎正面出入口から 松本うめ(五月藤江)が入り、捜査一課8号室から出て来た 捜査主任(神田隆)に 失踪した弟の捜索願いをしたことから 弟の石川は身元不明の 溺死体として処理されていたことが判明します。
うめの話から 弟が所有している土地家屋が 存在しない息子の 石川一郎と称する男によって 売却されたので、刑事はうめと共に 西武新宿線沼袋駅近くの 石川靴店へ向かい 聞き込み捜査が始まります。

隣のクリーニング店で聞き込むと 石川平作は急病死し、息子の石川一郎から35万円で 靴店の土地家屋を買い取ったが 連絡先は分からないと言う。
しかし 修理を頼んだ本田幸子(奈良あけみ)が 靴が戻らず困っていると、石川が顔を見せたらと 連絡先のメモを置いて行った紙を見せてくれました。
早速 幸子のアパートへ山形(中山昭二)・金子(山本麟一)両刑事が訊ねると、二人の背後には 西武新宿線 311系電車らしきが通過して行きます。
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一方 石川が所有していた土地に 住宅を注文した丸山商事は、東伏見の 小野という業者から 地元の泉住宅社が 仲介した物件だと判明しました。
翌日 山形と林刑事(花沢徳衛)が 西武新宿線東伏見駅で降りました。
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二面三線の下りホームから 階段を下りて構内踏切を渡り、
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山形刑事が改札口から 出て来ました。上りホームには 501系電車らしきが映っています。
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駅前広場の一角に 現地案内所があり 案内した客と戻って来た 丸山(大村文武)は、石川一郎は痩せた細面の男で 住所は千葉市南町15番と答えました。
丸山の様子に不信感をもった林は 主任に経過を 公衆電話から報告しますが、背後に東伏見駅へ到着する 西武新宿線の 411系電車らしきが映ります。
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その後 石川平作は 死亡推定日に 西武新宿線 新井薬師駅前の踏切手前で、丸山商事従業員運転の車から降りて 踏切を越えて行った。との話を聞き込んで、胃の内容物から 付近の寿司屋へ聞き込みに向かいます。
長田部長刑事(堀雄二)・金子刑事が 踏切で待っている前を、4連の 501系電車らしきが通過して 二人は近くの寿司屋に入ります。
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石川平作は この寿司屋で出前を注文し、その配達先は 怪しい過去の有る 吉本信彦(今井俊二)宅でした。一方丸山は 所有する車から 本名が秋田博と判明し、東郊不動産時代に 吉本と同僚だったことが分かりました。
関係者への聞き込みから 石川一郎と称する男は 特徴から吉本との線が強まり、吉本の恋人である 道子(八代万智子)が 吉本宅へ連れ込んだと見込んで 聴取する内に供述し始めました。

捜していた秋田は 六本木鳥居坂 泥酔者保護所に 入っているのが分かり、殺人の嫌疑が掛っている旨 脅かすと 吉本が横領した不動産の処分に 手を貸したことを供述するのでした。
居場所が分からない吉本を 逮捕する為 石川靴店舗が売れたと 偽の話を秋田に伝えさせて、長田が取引相手として 吉本の新しい恋人 邦子が働く喫茶店で 待ち合わせる罠を仕掛けます。

国鉄有楽町駅手前を走る 72系電車に続いて、
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70系電車らしきが 日劇を横目に 走行するシーンがあります。晴海通りには 信号待ちか、賑やかに都電が 3輌連なって停車しています。
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続く銀座地区の交差点では 8・9・11各系統の 都電車輛が行き交い、運行本数がいかに多かったかを 表しています。
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銀座並木通りの 純喫茶スワンで働く 邦子(並木和子)の案内で 着席した長田と秋田の元へ 遅れて吉本が現れ、捜査車両とは知らずに 外の車に乗り込むと 長田に警察手帳を提示されてエンドマークです。




PS.
  警視庁物語シリーズ第14作で 前作に続いた筋立てになっていて、殺人事件捜査にしては ラストシーンを含め 随所にコメディタッチの 台詞がちりばめられています。

  小生にとって 馴染みの深い西武新宿線が登場する(211.女を忘れろ)以来 2本目の作品ですが、ハッキリと車輛正面が映っている 場面が無いのは残念です。

  しかし 捜査の過程で 東伏見駅が登場したことが、本作を取り上げる 決め手となりました。この駅は(200.点と線)で、西鉄香椎駅として 装飾されてロケが行われました。
  同じ東映作品とはいえ 4枚目の画像部分から始まるBGMが、(200.点と線)でも4枚目の画像から始まる BGMと同じ様な曲調に感じられます。
 
  5枚目の画像で 遠方に見える踏切に、警報器らしきの存在が 見て取れます。1958年の点と線より 2年経って、標識だけの第四種踏切から 警報器が付いた第三種踏切に昇格した模様です。

  8枚目の画像は 新井薬師駅前の踏切と 紹介されていますが、小生には 隣の沼袋駅前踏切の様に見えます。序盤に 沼袋駅前と説明された 商店街は違う様で、新井薬師近くの 中野通りの様子に似ています。

  秋田が収容された 六本木鳥居坂泥酔者保護所は 本作公開年に開設された 警察としては珍しい施設で、しばしば刑事ドラマに 登場していましたが 2007年末をもって閉鎖されています。
  





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357.安五郎出世

1953年4月 東宝 製作 公開   監督 滝沢英輔

侠客志望の中山安五郎(森繁久彌)が 軽便鉄道の車内で知り合った小万(越路吹雪)との縁で降りた西浜村で、水道工事完成に貢献し 村の厄介者も倒す活躍を描いた コメディ・アクション映画です。

タイトルクレジットの最後に 3輌の客車を牽いた蒸機が 橋梁を渡る場面があり、
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客車内で浪花節を唸る中山に 小万が酒を勧めます。
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小万が西浜名物に挙げた最後の「般若の暴れん坊」に 般若の哲(小杉義男)が反応しますが、小万がサラリと躱す中 西浜へと汽車は到着します。
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ムショ帰りの般若が帰って来ると聞いた村人が 村長(林幹)を先頭に駅頭で出迎えると、歓迎ラッパに反応した サカリ馬が暴れ来て 般若は倒されますが 中山の顔を見て 馬は笑い出し 鎮まったのでした。
その後 村の水道工事に参加した中山は 般若が黒幕で起こった ストライキ騒動中に、寄宿している寺の小僧 唖太(加藤大介)の協力で 工事を完成へと導き 村人に侠客の親分として認められました。

水道工事完成祝賀花興行として 旅役者一団の公演が行われた日 一座の女団員が急病で動けず 中山は小万に代役依頼に行くと、東京での結婚話が決まり 上京することになったと 中山は別れを伝えられます。
侠客の親分になった暁には 結婚する約束だっただけに 中山はガッカリして戻り、唖太の発案から 中山が代役の女方を演ずることになりました。 しかし着替えをしている所へ 木戸銭を般若に奪われ、2時の軽便で逃げられたと 一報が入ります。

更に村役場の金庫まで 破られていたと伝えられ、中山は侠客の親分として 女方の扮装のままで サカリ馬に乗って 逃走した般若が乗る軽便を追い駆けます。
先ず 小型蒸機牽引の 軽便列車走行シーンが映り、
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砂利道と線路が並走する道を 中山はサカリ馬で懸命に追い掛けるのでした。
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車内から 馬に乗って追い駆けて来る中山に 気付いた小万は誤解した様で、ドアの無いデッキから 身を乗り出して 手持ちのハンケチを振っています。

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サカリ馬は遂に、軽便を追い越してしまう場面もあります。
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やがて列車は橋梁を渡ると
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踏切の先にある駅に停車します。
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そこで追いついた中山は 馬から降りて 客車の窓辺で「般若はいるか」と叫ぶと、
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窓から顔を出していた子分の[闇の弁慶]に気付いて 車内へ上がります。
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般若と目が合うと 般若達は、
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鞄を持ってデッキから降り 逃走を図ります。
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追い駆ける中山と 般若が決闘を始めると、列車から降りた小万も 中山に声援を送ります。
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そして苦闘の末に 持ち出した小道具の刀で、般若の額をカチ割ったのでした。 そこで気絶した中山は 般若を殺したと思い込んでいましたが、当然 刀は竹光で 般若は タンコブだけで捕まっていました。
その顛末を 警察署の窓から見届けた小万は、再度乗った軽便列車の中で「安五郎親分・乾杯!」と手酌で ウィスキーを飲んでいます。
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PS.
  最後から6枚目の画像で、顔を出している[闇の弁慶]の 下部に描かれている社紋から、この車輛は 遠州鉄道奥山線のハ1154です。
遠鉄社紋
  これこそ DRFC68様・米田作市様から(353.黒帯三国志)のコメントを頂いた時、「冒頭部分は遠州鉄道奥山線の車輛」と言うコメントの 証拠と思われます。

  両氏からの御意見通り 作中で走っている小型蒸機は、遠州鉄道奥山線の C1907(1951年の改番前はキ9形9号機関車)です。
  1924年5月コッペル製 9.7tC形タンク機関車で、宇和島鉄道で働いた後 1933年国有化・改軌で ケ220形224として 松浦線・世知原線で使われましたが 改軌により 1944年に廃車後 佐々区で保存され 1948年9月に遠州鉄道に譲渡されました。

  遠州鉄道奥山線では 1950年4月に 東田町~曳馬野8.2㎞が電化され、以北の曳馬野~奥山は 1951年8月にDC・DL化で無煙化されました。
  翌年 殆どの蒸機は廃車・DL改造されましたが、C1907は予備機として 休車保存されていたので 本作のロケで活躍したと思われます。その後1956年6月に 廃車解体される迄 残された様です。

  最初の画像は 祝田(ほうだ)駅を出て 短い橋梁を渡り、次の都田川に架かる祝田橋梁を渡り始めた所で 車内シーンへ続いています。
  おそらく この列車の1輌目に ハ1154が連結されていて、進行右側から映して オクラ入したフィルムを裏焼して(353.黒帯三国志)の冒頭部分に使った?と想像すると謎のナロー蒸機列車の件は落着?

  作中の西浜駅?に到着する 3枚目の画像は、電化・非電化区間境目の 曳馬野駅で撮影されています。しかし何故か 電化区間側の 追分駅方向から、3輌の客車を伴い やって来ました。

  中山安五郎が般若を追い駆け 並走する砂利道は 国道257号線で、今度は最後尾に ハ1154を連結して 金指~祝田を 上り列車として快走し 祝田駅に到着します。
  祝田駅のホームは 反対側の一面しかないので映らず、中山安五郎の活躍に応えて 臨時停車したかの様な 映像となっています。

  遠州鉄道奥山線は 1914年に 濱松軽便鉄道として 元城~金指の開通からスタートし、1924年に 板屋町~奥山の全線が開通しています。
  1947年に遠州鉄道と合併し 遠州鉄道奥山線となり、近代化を図るべく 曳馬野まで電化し 以北区間を無煙化しましたが 客足が伸びず 1964年10月末をもって 全線廃止となってしまいました。


  参考文献 : 鉄道ピクトリアル1952年12月号  RMライブラリィ №10「追憶の遠州鉄道奥山線」  遠州鉄道40年史


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