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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

334.ファンキーハットの快男児

1961年8月 ニュー東映 製作 公開   監督 深作欣二

遊び人の天下一郎(千葉真一)が 探偵事務所を営む 父親譲りの勘を働かせ、幼児誘拐に始まる一連の事件解決に活躍する アクション青春映画です。

国産省 建設局長 木暮(加藤嘉)の家で働く女中 ルメ(新井茂子)は 故郷の弟が上京して 駅で待っているとの ニセ電話で、一郎の相棒 近藤茂(岡本四郎)の車で 京王帝都電鉄 井の頭線 高井戸駅に送ってもらいます。
現在の環八通りと立体交差する線路上を 当時の1000形らしきが走る姿が映り、
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ルメが築堤の上に在る 高井戸駅改札口へ向かいますが 弟はいないので 階段を降りて戻って来ました。
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その頃 ニセ電話を掛けた女は 幼稚園の送迎バスから降りた木暮靖幸(くさかべ雅人)を、ルメの代わりに待ち伏せ まんまと誘拐したのでした。
その後 自宅で身代金要求の電話を受けた 靖幸の母木暮ひさえ(檜有子)は夫に相談し、木暮は天下探偵事務所の 天下清助(花沢徳衛)に事件解決を依頼しました。

ところが事件は 警察や世間の知ることとなる中、靖幸は一人で帰って来たのです。天下清助は 犯人が怖くなって 返したと考えますが、一郎は 産業会館建設入札が 日の丸建設に決定との 新聞記事に目を付けます。
その頃 日の丸建設社長の 宇垣(神田隆)は木暮に、犯人から「500万円を払わなければ、木暮のこれまでの汚職を世間にぶちまける」と連絡してきたと話し、横浜駅での 宇垣が用意した金の 受け渡し顛末を説明します。

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宇垣が要求通り 500万円の包みを持って 指定された横浜駅7番ホームで待つと
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151系 特別急行つばめ号が到着し、
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宇垣の背後には 東急東横線横浜駅へ到着する 5000系電車が映っています。
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そしてつばめ号のドアが開きましたが、デッキに居た男は チラチラこちらを見るだけで降りませんでした。
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しかし 宇垣の背後から近寄った サングラスの女 桜井とも子(八代万智子)が「お約束の物を頂きに来ました」と告げるや、ピストルを突き付け
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金を奪って つばめ号のデッキへ乗り込んでしまいました。
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その間も 女はずっとピストルを向けたままなので
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宇垣は為す術なく固まって、ドアが閉まり 去り行くつばめ号を呆然と見送るだけでした。
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話しを聞いた木暮は「その女には男がいる そいつは我々の関係を 知り尽くしている」と推理し、部下の白石(波島進)を 日の丸建設の鷹野台浄水場建設現場へ連れ出し 白石が500万で買った 日の丸建設の株券を奪い取ってしまいます。
当時は 現場で練ったコンクリートを 画像の様なナベトロで 貧弱な工事用軽便軌道上を運搬していた様ですね。
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PS.
 ルメが向かった 京王帝都電鉄 井の頭線高井戸駅は、ロケ当時 急角度の階段を登った先の 築堤上に開通以来の姿で在りました。
 各社のロケ地として 何度も使われ 当ブログでも(31.宇宙人地球へ現る)(49.結婚の條件)(61.女妖)で登場し、(1957年東映作 純愛物語)でも 印象深い場面で使われています。

 当初は手の込んだ 営利誘拐事件だったのが 何時しか 国産省建設局長木暮の 汚職をネタにした 日の丸建設社長を恐喝する事件となり、同額の500万円を犯人は 横浜駅7番ホームで受領後に 特急つばめ号で逃走する 鮮やかな手口で行っていますね。
 最初 8番線には 上り列車が停車する姿が映り、6番線停車中の 普通列車らしきとの間の 7番線に上り特別急行つばめ号が到着します。

 当時の時刻表で読むと、上りつばめ号は2本あり、第二つばめ号は 22:37到着と夜遅いので 15:07到着の104レ 第一つばめ号と思われます。
 すると 8番線停車中の列車は 横浜に 15:05到着して第一つばめ号に先を譲り 15:10に発車する、佐世保発東京行の 40レ急行西海号の様です。
 隣の下り列車は東京発 111レ門司行 普通列車と思われ、15:11に到着して 15:14に発車で 終着は翌日の 20:15!。おそらくは第一つばめ号が 5分遅れで 15:12に到着し、15:13に発車して行ったので 当時日本一の長距離普通列車だった 111レと同時停車シーンが映ったのでは?と推察します。尚 111レは本作公開の翌月末で廃止されてしまいました。

 桜井とも子が 宇垣にピストルを突き付け 金を奪う場面で、停車中のつばめ号12号車の 窓側の乗客がロケに気付き、笑い顔で同席者と話している姿が映ってしまい 撮り直しの出来ない監督としては・・・
 また横浜駅到着時に降りないで、デッキからチラチラとカメラの方を見ていた謎の男はスタッフなのでしょうか?

 2004年1月末に 東急東横線横浜駅は 地下駅へ移転したので 現在では7・8番線から東横線電車は見えませんが、東横線の場所は 現在9・10番線で 横須賀線・湘南新宿ライン上下用の ホームとなっています。

桜井とも子の家に 監禁された境野みどり(中原ひとみ)の処分を依頼された 保釈の虎(潮健児)を 一郎は 渋谷駅から 工事中の道路へ追い駆けますが、画像の場所は 現在の渋谷区渋谷2-14・渋谷教会辺り バイパス工事中の国道246号線青山通りと思われ 右側の歩道部分を 先に作っています。(坂の下方に4年前に開館した 五島プラネタリウムの丸屋根が見えています)
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 金王坂の上から 東横線渋谷駅方向の画像で、現在では 想像できない程 大改造中の 渋谷駅東側ですね。

 

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333.六人姉妹

1959年10月 東映教育映画部 製作   監督 堀内甲

父母と六人姉妹が暮らす 地方都市家庭の日常と、長女が希望する進学に反対する父親との 葛藤を描いた教育映画です。

葛西家では 父母と高校三年生の長女節子(大森暁子)を頭に 六人姉妹が暮らしていて、絶えない姉妹喧嘩の合間に 各々将来の希望が芽生えていました。
節子は父順二(稲葉義男)に 大学進学を願い出ますが、下の子のことも考えて 却下されてしまいます。しかし叔母の説得もあって、考え直した父に節子は激励されるのでした。

晴れて東京の 女子大に合格した節子が旅立つ日、先ず C50形らしき蒸機が映り、
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車窓の節子の元には 5人の妹を始め、父順二・母安子(不忍郷子)・叔母(内田礼子)が駆け付けました。
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三女紀子(本間千代子)が「夏休みには待っているわね」等 皆で見送りの言葉を交わす中、
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汽笛が鳴り響き
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列車が動き出すと
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5人の妹達は 姉の動きに合わせて移動して行きます。
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節子は窓から身を乗り出して 手を振り 別れを惜しみ 叫んでいる様です。
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四女睦子(伊東正江)は 泣いている五女敦子(小畑町子)を優しく抱きかかえています。
そして五人の姉妹は 仲良く手を繋いで 父母の方へ歩いて行く道中、次女知子(島津千鶴子)は「今度から私がお姉さんだから言うことを聞くのよ」と宣言しています。
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最後は 跨線橋からのカメラを引いて、栃木駅東方 構内全景を映しながら エンドマークとなります。
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PS.
 当ブログでは 異色の教育映画で、読売新聞つづり方コンクールで 文部大臣賞を受賞した葛西睦子の作品を原作として、東映教育映画部が製作した作品です。

 鉄道シーンは ラストの節子が旅立つ別れの場面 しかありませんが、今では見ることの出来ない 今時分の別離シーン として取り上げました。

(111.異母兄弟)でも登場した駅ですし、5人で引き上げる場面で 駅名板が映るので、今回は直ぐ栃木駅と分かりました。

 登場した蒸機は 小山区のC50形と思われ、乗降客の少ない昼時を狙ってのロケと思われ
 高崎9:45始発の 425レを使ったとすると、栃木 12:04発で終着の小山は 12:17です。
 節子がこの列車を使うと小山 12:26発の 534レに乗り換え、上野には 13:48着なので 下宿先へ向かうのにも適当でしょう。

10枚目の画像で、5人の姉妹が引き上げている時、背後には到着する東武鉄道の1700系2連の白帯特急が映っています。

 両毛線では1951年に 桐生~高崎方面からDC化が進み、1963年には蒸機牽引列車は3本となり 1968年10月に全線電化となりました。
 DC導入の1951年より 請願新駅が 11駅も誕生した両毛線ですが、電化時までに途中 28駅中11駅が休止となり後廃止(ロケ時も11駅全て停車するのは 13本中4本のみ)
両毛線は他線に比べて 同時期に異様な程新駅が作られた 稀有な路線ですが、政治陳情駅が多かったのか 停まる列車も少なく 国鉄のやる気の程が知れてて 当然利用客が少なく12~15年で休廃止でした。


本作製作の3年後に続編が製作されました。続編の方が鉄道シーンが多いので、夏休み時期に取り上げる予定です。

 

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