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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

261.悪の紋章

1964年7月 東宝 配給 公開   宝塚映画 製作   監督 堀川弘通

殺人事件の捜査をしていた城南署の菊地正明(山崎努)が冤罪で二年服役し、出所後 稲村清一と名を変え興信所で働きながら復讐を目指す サスペンス・アクション映画です。

朝のラッシュ時 国電に乗った菊地は、車内で女のバックから定期入れを掏り取る男を見つけます。東京駅6番線に着いた京浜東北線72系電車から男が降りたので、
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後を付け 連絡通路で定期券入れを取り返します。
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菊地は警官時代の先輩 松野の世話で興信所に勤め始め、事務所の新聞で定期券の名前・年齢が一致する自殺未遂者の記事(何故か本人の住所が記載されています)を見て 定期券を送ってやりました。

その後 菊地のアパートへ定期券の持ち主 浅井節子(新珠三千代)がお礼に来て つき合い始め、 考え方が合わなかった時突然節子は走り出して警報器が鳴る臨港貨物線らしき踏切で止まります。
やがて左方からDD13形らしき内燃機に牽かれた貨物列車が現れ、
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長々と貨車を連ねて通過して行きます。東京都港湾局専用線へ乗り入れた国鉄の貨物列車でしょうか。

ヤクザの花井と組んで菊地に罠をかけた元妻の恵美子(北あけみ)を脅かして湯浅貞造(安部徹)と特別な仲にさせた稲村(菊地)は、東急電鉄 旗の台駅前で待ち構え 池上線の踏切を渡って来た恵美子に
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手引きさせて湯浅から罠のからくりを自白させます。

興信所の仕事で高沢コンツェルン二代目会長 高沢重治(佐田啓二)の妻 光江(岸田今日子)の素行調査で 山中・玉造温泉へ行く内次第に事件の核心に迫り、松江で重治と殺人容疑者 柴田欣一(戸浦六宏)が会っていたことを掴みます。
稲村は松江駅で荷物事故公報から美祢駅に外国雑誌の入った大型の鞄が三か月間預けられたままなのを知り、美祢線美祢駅へと行って
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近くの秋吉台の洞穴で柴田の死体を発見します。

偽の手紙で犯人をおびき出すと節子が現れ、帰京する列車の中で詳しい事件のからくりを聞き出します。
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最初は夕暮れの瀬戸内海沿いを走る、大型蒸機牽引列車の一等車に乗っています。中途半端な並ロで、セット撮影と思います。
次にEF58形電機牽引となり、
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やがて東京駅に着きますが二人は降りません。おばさんが車内清掃を始めても動かず、
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照明を消されても動かない二人なのでした。
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PS.
   秋吉台から長躯 東京まで列車に乗り通した二人の行程を想像してみます。 

秋芳洞 16:51 ―(国鉄バス)― 17:25 厚狭 17:59 ―(232レ)― 10:04 大阪 10:22 ―(32レ急行霧島)― 18:20 東京  秋芳洞からは国鉄バスで厚狭へ出る方が本数も多く便利でした。

   232レは鹿児島本線の鳥栖発 京都行の普通列車で、呉線を経由して長距離を走る珍しい列車です。 そして大阪で一休みして、急行列車で東京へ向かうと映画に合致します。 

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260.ふたりのイーダ

1976年11月 公開   製作 配給 ふたりのイーダプロダクション  監督 松山善三

雑誌記者でシングルマザーの相沢美智(倍賞千恵子)が幼い兄妹を連れて実家へ帰った折、兄妹が廃屋で生き続ける謎の椅子と交流するファンタジック ミステリー映画です。

東京駅から東海道新幹線ひかり号に乗った 美智親子に、発車直前 美智の同僚カメラマン広岡研二(山口崇)が駅弁3個と雑誌を手渡します。駅弁は当時としては高額の、特別ランチ700円です(うなぎ弁当でも700円でした)。
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そこには美智へ宛てた手紙も忍ばせてありました。
0系新幹線の走行場面が映った後
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車内では、兄の直樹(上屋健一)と妹のゆう子(原口祐子)が入口の自動ドアで遊んでいます。
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一方 美智は広岡からの手紙で、後から両親に挨拶に来ることを知ります。
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続いてキハユニらしき合造車を先頭にした、気動車4連列車の走行シーンが映ります。
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花浦駅(架空駅)ホームでは、美智の両親 須川利一郎(森繁久彌)と菊枝(高峰秀子)が出迎えに来ています。
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やがて菊枝が列車に気付き須川と一緒に手を振ると、列車の2両目 キハ20形に乗る親子も窓から身を乗り出して帽子を振って応えます。
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そして菊枝が日傘を振る花浦駅へ、列車は到着します。
廃屋で出会った不思議な椅子は、兄妹だけの前で動き 喋るのでした。

次に 広島へ墓参りに出掛ける一家は、DC列車に乗っています。260-10.jpg
美智は原爆ドームの前で、広岡と待ち合わせていたのです。
車内では、直樹の機嫌が良くない様子です。続いて キハ58系らしき、急行形気動車3連の走行シーンが入ります。
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須川が直樹に問いただすと、「じいちゃんは信用しないんだろうけど、椅子は動くんだ」と応えます。
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PS.
   東京駅の放送で美智親子が乗った列車は、ひかり 130 番台の列車であると発車案内が聞こえます。当時の時刻表では広島行の ひかり号で、時間帯から東京 11:24発ひかり 131号広島行と思われます。

   しかし実家の場所は花浦駅が架空駅なので、広島県内の何処か分かりません。その後 広島へ行く時 気動車に乗るので、芸備線沿線を想定したのだろうと思われます。

   ひかり 131号の広島到着が 17:04 芸備線へ乗り換えですが、17:06発 812D 急行たいしゃく2号 新見行は接続不可能なので 17:51発 840レ三次行となりますが DE10形内燃機がオハ35旧客を牽く列車なので当てはまりません。
   当時の新幹線では博多行速達タイプでも広島まで 5時間8分かかっていたので、昼近くに東京を出たのでは本編の様な時間帯に着くのは不可能と思われます。

   架空の花浦駅到着前の画像で親子が乗っているのはキハ20 342で、サボは(岡山⇔津山)と津山線の列車でロケが行われた様です。その後 3RT生 様からのコメントで、花浦駅は津山線の玉柏駅でロケが行われた様です。

   祖父母と親子5人で広島へ向かう急行形気動車を想像すると、芸備線 向原 9:17発 811D急行たいしゃく1号に乗って 10:01広島へ到着した様に想定したのでは?(6枚目の画像で1つ先の駅がむこうはら{芸備線の実在駅はむかいはら})

映画の鉄道シーンで記憶に残るのは見送り場面ですが、今回は出迎え場面のある映画を5本特集してみました。本作は当ブログとしては新しい方ですが、孫を出迎える祖父母の姿が印象的なのでトリに選んでみました。

   

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