
1958年8月 大映 製作 公開 監督 市川崑
吃音故か内向的な溝口吾一(市川雷蔵)は父親の遺言で京都 驟閣寺の徒弟となるが、戦後 急に寺が観光化し 尊敬していた老師の堕落を目にして人間不信から放火に至る苦悩を描いた映画です。
溝口は田山道詮老師(中村鴈治郎)にとって亡き親友の息子なので、地元中学から古谷大学へ進学させ 寺の後継者とも考えられていた。戦後 寺には 外国人をはじめ観光客が大勢詰めかけて拝観料収入が増大し、
寺は豊かになって 街で芸者連れの老師を見かける溝口でした。本来の姿を失ってゆく驟閣寺内外を憂え、勉学の意欲を失い 人間不信になってゆく溝口です。
ある日 京都市電10系統 北野線電車が

通り過ぎた後を、渡って刃物屋へ溝口が入ります。明治時代開通の京都電気鉄道以来の古典的 狭軌1形電車がポールを上げて、走り抜けて行きます。
時代離れしたこの北野線は、この3年後 1961年7月末に惜しくも廃止となりました。溝口は小刀を買った後、隣の薬屋で睡眠薬のカルモチンを購入します。
そして 学友の戸苅から三千円を借りて故郷で自殺を試みますが、至らず 挫折感を深めてゆく溝口です。
その後 戸苅に挑発されて老師に嫌がらせをしたり、有名な禅海和尚に助言を求めても答えを得られず 人間不信に陥り 遂には信愛する 驟閣寺に火を点け全焼させてしまいます。
そして裏山で燃え行く美しい驟閣寺を見ながら自殺を試みますが、またも失敗して逮捕・起訴されてしまいます。
時計が 9:25を指す中 京都駅舎へ、刑事に両脇を挟まれた溝口が入って来ました。居合わせた人々は「あれが驟閣寺を焼いた犯人や」「あの人のお母さん鉄道自殺しはったそうですな」などと言ってます。
更に時計が 10:10を指す頃に、一行は改札口を通ってホームへ出て行きます。

そこへ C62形蒸機 26号機が牽引する客車列車が入線して来ました。

東京へ護送するので、東京行の急行列車の様です。
次に車内シーンが映り 窓際に溝口が座り、通路側の横と前に刑事が座っています。溝口が横に座る刑事の顔を見ると、「便所か」と刑事が聞き 溝口は頷きます。

刑事と連れ立ってデッキの便所前に来ると、手錠を外してくれます。その時突然 溝口が刑事を突き飛ばし、デッキの扉を開けて 飛び降りようとします。

そうはさせじと 刑事は背後から組み付き、何とか飛び降り自殺を防ごうとします。二度三度とデッキから飛び出そうとする溝口を引き戻す刑事ですが、遂に突き飛ばされた後 飛び降り自殺されてしまいます。
刑事は呆然とした顔で、飛び降りた方を見送るだけです。

蒸機の汽笛が悲しく響く中、列車は高速で過ぎ去って行きます。

続いて 警官二人がムシロが掛けられた遺体のある現場保存をする所へ、逃避された刑事達が車で到着したところでエンドマークとなります。

背後では小型蒸機らしき、甲高い汽笛の音が聞こえています。石山付近なのでしょうか。
PS.
原作 三島由紀夫 作「金閣寺」のモデルとなった金閣寺放火事件が起こったのが 1950年7月なので、当時を想定して製作された映画の様です。市電北野線 N電を登場させて、雰囲気を盛り上げています。
その年の暮れに東京へ護送される最後の場面では、当時走っていた 京都 10:44着の熊本発 34レ東京行の急行列車を想定している様です。
2年前に全線電化された東海道本線ですが、本編で登場した C62形蒸機が牽く列車は 姫路発 936レ京都行 普通列車と思われます。10:29到着なので、あたかも東京行の急行列車の様に見えます。
1958年4月の山陽本線 姫路電化までは、東海道本線 京都までの蒸機牽引列車が多数残っていたそうです。撮影はギリギリのタイミングで行われた様ですね。
吃音故か内向的な溝口吾一(市川雷蔵)は父親の遺言で京都 驟閣寺の徒弟となるが、戦後 急に寺が観光化し 尊敬していた老師の堕落を目にして人間不信から放火に至る苦悩を描いた映画です。
溝口は田山道詮老師(中村鴈治郎)にとって亡き親友の息子なので、地元中学から古谷大学へ進学させ 寺の後継者とも考えられていた。戦後 寺には 外国人をはじめ観光客が大勢詰めかけて拝観料収入が増大し、
寺は豊かになって 街で芸者連れの老師を見かける溝口でした。本来の姿を失ってゆく驟閣寺内外を憂え、勉学の意欲を失い 人間不信になってゆく溝口です。
ある日 京都市電10系統 北野線電車が

通り過ぎた後を、渡って刃物屋へ溝口が入ります。明治時代開通の京都電気鉄道以来の古典的 狭軌1形電車がポールを上げて、走り抜けて行きます。
時代離れしたこの北野線は、この3年後 1961年7月末に惜しくも廃止となりました。溝口は小刀を買った後、隣の薬屋で睡眠薬のカルモチンを購入します。
そして 学友の戸苅から三千円を借りて故郷で自殺を試みますが、至らず 挫折感を深めてゆく溝口です。
その後 戸苅に挑発されて老師に嫌がらせをしたり、有名な禅海和尚に助言を求めても答えを得られず 人間不信に陥り 遂には信愛する 驟閣寺に火を点け全焼させてしまいます。
そして裏山で燃え行く美しい驟閣寺を見ながら自殺を試みますが、またも失敗して逮捕・起訴されてしまいます。
時計が 9:25を指す中 京都駅舎へ、刑事に両脇を挟まれた溝口が入って来ました。居合わせた人々は「あれが驟閣寺を焼いた犯人や」「あの人のお母さん鉄道自殺しはったそうですな」などと言ってます。
更に時計が 10:10を指す頃に、一行は改札口を通ってホームへ出て行きます。

そこへ C62形蒸機 26号機が牽引する客車列車が入線して来ました。

東京へ護送するので、東京行の急行列車の様です。
次に車内シーンが映り 窓際に溝口が座り、通路側の横と前に刑事が座っています。溝口が横に座る刑事の顔を見ると、「便所か」と刑事が聞き 溝口は頷きます。

刑事と連れ立ってデッキの便所前に来ると、手錠を外してくれます。その時突然 溝口が刑事を突き飛ばし、デッキの扉を開けて 飛び降りようとします。

そうはさせじと 刑事は背後から組み付き、何とか飛び降り自殺を防ごうとします。二度三度とデッキから飛び出そうとする溝口を引き戻す刑事ですが、遂に突き飛ばされた後 飛び降り自殺されてしまいます。
刑事は呆然とした顔で、飛び降りた方を見送るだけです。

蒸機の汽笛が悲しく響く中、列車は高速で過ぎ去って行きます。

続いて 警官二人がムシロが掛けられた遺体のある現場保存をする所へ、逃避された刑事達が車で到着したところでエンドマークとなります。

背後では小型蒸機らしき、甲高い汽笛の音が聞こえています。石山付近なのでしょうか。
PS.
原作 三島由紀夫 作「金閣寺」のモデルとなった金閣寺放火事件が起こったのが 1950年7月なので、当時を想定して製作された映画の様です。市電北野線 N電を登場させて、雰囲気を盛り上げています。
その年の暮れに東京へ護送される最後の場面では、当時走っていた 京都 10:44着の熊本発 34レ東京行の急行列車を想定している様です。
2年前に全線電化された東海道本線ですが、本編で登場した C62形蒸機が牽く列車は 姫路発 936レ京都行 普通列車と思われます。10:29到着なので、あたかも東京行の急行列車の様に見えます。
1958年4月の山陽本線 姫路電化までは、東海道本線 京都までの蒸機牽引列車が多数残っていたそうです。撮影はギリギリのタイミングで行われた様ですね。


