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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

234. 黒線地帯

1960年1月 新東宝 製作 公開   監督 石井輝男

週刊誌にネタを売り込むフリーの雑誌記者 町田広二(天知茂)が追っていた麻薬・売春組織のワナにハマるが、ヌードダンサー 摩耶(三原葉子)の協力で組織を暴く 新東宝ラインシリーズ第二弾のサスペンス・アクション映画です

横浜の人形店から人形に仕込んだ麻薬を運ぶ摩耶を尾行する町田は、新宿の洗濯屋に辿り着きます。洗濯屋の泰造(守山竜次)にブツを渡した摩耶を、町田は強引に自分のワーゲンに乗せるのです。
摩耶が騒いだので ワーゲンを発進させますが 急勾配の大谷石壁に仮設ホームを取り付けた様なこの場所は、西武新宿線 西武新宿駅 1番線ホーム下の様です。( 当時は新宿駅ビル乗り入れまでの仮駅状態でした )
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一連の動きを町田のライバル 東洋タイムスの鳥井五郎(細川俊夫)も見張っていたので、会社の車でワーゲンを尾行します。どうやら車は横浜税関方面へと向かう様です。
そして鳥井が車を先へと回り込ませて停車させた場所は、新港埠頭の6番岸壁付近の様です。横浜臨港線の横浜港駅の荷扱線らしき場所で、現存する赤レンガ倉庫の一部も映っています。
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麻薬・売春組織のワナにハマって殺人容疑者として追われている町田は、鳥井に証拠の点で限りなく黒だと言われます。鳥井には 48時間の猶予を与えるが、過ぎれば警察へ通告すると宣言されるのでした。
組織に密告されて一緒に逃走する途中で、ケガを手当てしてもらった摩耶は恩を感じて町田に組織の話しをします。山下町のクラブの裏口に踏み込んだ町田は、組織のボス 橘祐吉(大友純)を締め上げ 吐かせます。

ところが拳銃を持った殺し屋のジョー(宗方祐二)が現れ、逆転ピンチです。しかしジョーが撃ったのは橘で、組織を乗っ取るつもりの様です。その時女子高生の美沙子(三ツ矢歌子)が電灯を壊して大混乱になります。
逃げるジョーを追い掛ける町田ですが、ジョーは通りかかった横浜臨港線の蒸機が牽く貨物列車の無蓋車に飛び乗ります。その車上から拳銃を町田に向けて撃ちますが当たらず、逆に町田が投げた石が当たります!?

すかさず列車に飛び乗る町田 無蓋車上で格闘戦が始まります。
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前に後ろに移動しながらの殴り合いですが、車内後部にはクッション替りでしょうか ムシロが立ててあります。
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何故か汽笛が繰り返し鳴るカットが入りますが、特徴ある斜め汽笛で 大型蒸機のC62形やD52形を思い起こします。でも牽いているのは、横浜区のC56 160 機関車の様です。
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臨港線独特の併用軌道を走り、
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クライマックスの新港橋梁上から組み合ったまま二人は水中へ転落してしまいます。
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スタントマンが一人で人形を背負って飛び込んだのかも知れませんが、見事なアクションシーンです。





PS.

   走る蒸機牽引列車の上での格闘と言うと、カテゴリー大夕張鉄道の( 13.新網走番外地 嵐呼ぶ知床岬 ) を思い出します。場所柄 と機関車運用の都合で、夕刻の撮影となったのでしょうが迫力ありますね。

 本作で登場していると思われる C56 160 蒸機は、1965年に松本へ転属となり飯山線を走った後 上諏訪区へ転属後に幸運にも梅小路での動態保存機に選ばれて現在も元気にしています。

 横浜臨港線の蒸機を担当した横浜機関区は 1967年2月18日のお別れ会をもって、蒸機の使用を終了してDD13形内燃機等に替っています。
その後も貨物衰退が続き( 139.俺は待ってるぜ ) で前述した様に国鉄の横浜機関区は、1986年11月1日付で高島信号所以南の横浜臨港線と共に廃止されました。 


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 233. 狼

1955年7月 近代映画協会 製作 公開   監督 新藤兼人

収入に困り 生命保険勧誘の仕事に挑んだ人の良い5人が夢破れ、生活に行き詰って現金輸送の郵便車を馬喰坂で襲う成り行きを描いた社会派映画です。

東洋生命では面接で 応募者全員が試用外務員として合格採用となります。半年間は月千五百円支給されますが 、この半年以内に合計五百万円の保険契約を勧誘出来ないと正社員になれない規則です。
戦争未亡人の矢野秋子(乙羽信子)達 22人は全員 池袋支社の所属となり、初出勤の日 都電3000形らしき電車が支社前を走る道路を秋子が歩いて行きます。

営業課長(三島雅夫)は なけなしの金をギャンブルにつぎ込む貧乏人等を的に勧誘しろと言いますが、予想通り殆ど契約は取れず 辞める仲間が続出して最後は5人となって全員クビとなります。
そして明日からの生活に行き詰った5人は、元自動車修理工の三川義行(殿山泰司)が提案した 現金輸送車襲撃計画に賛同して 取りあえず現地へ下見に出掛けます。

大きく右カーブしたホームへ京浜急行電鉄 デハ420形らしき浦賀行 2連電車が、大きなカントで傾いた車体を停車させます。
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ドアが開くと、5人のメンバーが降りて来ました。
改札口へ向かうべく前方の構内踏切方向へ歩いて行く先に、谷津坂の看板がチラリと見えます。
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谷津坂とは 1982年に現 能見台へ改称された駅名です。
1969年に現在地へ移転しているので、ホームの様子は現状とは まるで違います。地名は犯罪映画なので、谷津坂を馬喰坂として設定した脚本と思われます。

決行の日 三川が外車のビュイックを盗み出し、秋子と同じく未亡人の藤林富枝(高杉早苗)・元銀行員の原島之男(浜村純)を乗せて横浜へ向かいます。
そして 1928年竣工の横浜駅3代目駅舎が建つ東口前で、
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元映画脚本家の吉井房次郎(菅井一郎)を拾って 下見をした馬喰坂へと車を走らせます。

計画通り 郵便車から金を奪い、運転手達3人をトランクに押し込んで 正丸峠を目指します。その途中 原町田付近で踏切に引っ掛かり、暫く停車します。
脇の派出所の警官(下條正己)にジックリと車内を見られ、一同冷や汗が噴出し ドキドキです。当時は遮断機の無い第三種踏切の様で、横浜線の 40系電車らしきが高速で通過して行きます。
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人の良い5人は正丸峠付近で3人を無事解放し、更に交通費まで渡します。そして立川付近の草地に車を捨て去り、一人7万円を山分けして別れたのです。
夕刻 鶴見線の安善駅から三川が降りて来て 自宅へ向かって歩き出すと、
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昔の仲間に声を掛けられます。ドキッとする三川ですが 懐が暖かいので、千円をカンパした上 飲み屋で奢るのでした。

原島は帰宅すると 折り合いの悪い女房に、手切れ金として6万5千円を渡して別れます。そして駅近くの屋台で夜遅くまで深酒して、それまでの憂さを晴らすのでした。
多目に支払った後 フラフラして線路端で戻してしまう原島ですが、背後ではC50形らしき蒸機が入換作業をしている様です。この辺りの雰囲気、池袋貨物駅辺りでしょうか?
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