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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

232. 祈るひと

1959年2月 日活 製作 公開   監督 滝沢英輔

冷ややかな空気漂う家庭に育ち 父 三沢恭平(下元勉)の早死もあって 暖かい結婚生活に憧れる曉子(芦川いづみ)が、自立して生きる道を模索する過程を描く映画です。

冒頭 少女期の回想場面の後、京王帝都電鉄 井の頭線 1000形らしきの走行シーンがあります。
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続いて車内で考え込む曉子が映り、永福町駅ホームが映って下車した様です。
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未だ待避線が無い時代で、ホームには木造の駅名板が建っています。背後には空襲で焼かれ、木造で復旧したと思える車庫とホーム屋根が映っています。

その後 曉子は公務員の蓮池弘志(小高雄二)と見合いし、銀座の喫茶店に移動します。その際 旧塗装時代の 6000形が映って、場所が銀座であると示唆しています。
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その日は余りに自己チューな蓮池に呆れる曉子ですが、帰路の電車内で去年の暮の回想場面が入ります。友人の赤木・佐々木と映画を観る約束で、待ち合わせの新宿駅の改札口で待っていました。

すると母 三沢吉枝(月丘夢路)と知り合いの庫木申一郎(金子信雄)が、連れだって改札口を通って行く姿を見てしまい 思わずホームまで後を付けて行きます。
ホームの売店で吉枝は新聞を買っています。その背後ではDD11形らしきDLとC12形らしきSLが停車して、C12 から蒸気が上がっています。
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吉枝は反対側に停車している準急列車の二等車に乗る庫木に、「あなた これ」と言って新聞を渡します。それを階段際から見ていた曉子は、「あなた」と母親が発した言葉にショックを受けたのでした。
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それから蓮池が一方的に告げたデート予定をスッポカし、見合い話を断った曉子でした。次に 朝の井の頭線 下北沢駅2番線に 1000形電車が進入して来る場面があります。
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先頭車両から曉子が下車し 小田急電鉄 上りホームへ向かう階段を降りようとした時、突然 蓮池が現れ「ちょっと」と言って曉子の腕を掴んで呼び止めます。
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曉子は「失礼な人ね」と睨みますが、蓮池は「 ヤッパリ君に会いたくなった」と言って同行を求め 何故か小田急下り線ホームへの乗り換え階段へ向かいます。
蓮池は競馬場へ連れて行ってハシャイでみせたりして 意外に明るい一面を見せるので、あらためて暫く付き合うことにする曉子でした。

終盤 井の頭線 1800形らしき電車が夕暮れの中 走行するシーンがあります。
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セットらしき車内では、佐々木の婚約者 村上理津子(坂口美奈子)と曉子が並んで座っています。
そして理津子から女性の生き方についての持論を聞き、同感する曉子です。永福町で下車後 車庫の脇道を歩きながら、蓮池の件を最終的に断り 家を出て自立した生き方を決意するのでした。
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PS.

この映画は過去の回想シーンがやたらと多く、話がしょっちゅう前後して気の抜けない映画です。

京王帝都電鉄 井の頭線が緑一色で、旧型車もゴロゴロいた時代の作品です。下北沢の駅も小田急が地下化されて大きく変わっていますね。

中盤 新宿駅ホームで母親の秘密を見てしまった場面での、DL+SLは東京区の DD11と飯田町区の C12が入換作業中なのでしょうか。
反対側で庫木が乗車した準急列車は、定期列車とすると 22:45発 409ㇾ準急アルプス 長野行が唯一です。曉子の方は仕事帰りの待ち合わせなので、午後6~7時でしょうから現実的ではないですね。
ロケ当時の中央本線 新宿口は 特急・急行列車がゼロで、準急列車が定期3本・臨時1本と 現在とは隔世の感があります。


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231. 今年の恋

1962年1月 松竹 製作 公開   監督 木下恵介

裕福だが冴えない高校生 山田光(田村正和)の兄 正(吉田輝雄)と、同級生 相川一郎(石川竜二)の姉 美加子(岡田茉莉子)のラブコメディ映画です。

序盤 横須賀線の 70系電車らしきが、大船工場の様な側線の多い横を走るシーンがあります。
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続いて 光は同級生らしき女子高生と車内で話しています。
次に横浜駅に到着する場面があって、
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10番線の東京急行電鉄 東横線ホームへ上がります。そして到着した 各停 渋谷行 5000系電車に乗り継ぎます。

横浜を出た 5000系4連は橋梁を渡ると、高架線を加速して爽快に走り抜けて行きます。
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車内で光は別の女友達と気だるげに話しています。
それから大きな鉄屋根が目立つ急カーブホームの白楽駅らしきへ到着し、光は下車して帰宅します。
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中盤 光が家出し、連絡を受けた美加子と一郎が翌日 光の家に向かいます。再度 東急 5000系4連が、東白楽~反町でしょうか高架線上を走行するシーンがあります。
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車内では美加子と並んで座る一郎が、居眠りして美加子に起こされています。

光は母親と死別して独身の父 良平(野々村潔)と付き合う清子(高森和子)が滞在する熱海に居ることを電話してきます。そこで良平の車に一郎が乗って熱海へ向かいます。
正は帰宅することにした美加子を、横浜駅まで車で送ることにします。しかし道中で口喧嘩となって怒った正は、横浜駅東口前の広場を無茶な高速で一周して更に桜木町方面へ走り続けます。
1928年落成の煉瓦風3代目駅舎の前を抜け、走り来る車や横浜市電の前面に強引に飛び出します。東海道を走る、横浜市電3系統の山元町行電車でしょうか。
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正は熱海まで行く気でしたが道中で次第に美加子と仲直りして、東京 銀座の美加子宅まで送ってあげたのでした。家に上って休んでいると、一郎から電話があって「皆で京都へ行き元旦に帰る」と告げるのです。
正は光を追って直ぐに京都へ行くことにします。美加子は取り残された感じでしたが、大晦日に父親の相川一作(三遊亭円遊)に焚き付けられて京都へ向かうのでした。

富士山をバックにした東海道本線 富士川橋梁を 151系特別急行列車が渡って行く姿に続き、
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日本髪姿で食堂車に座る美加子がいます。
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テーブルには白いティーカップが置かれ、正が家に忘れたライターを玩んでいます。このライターは女物なので初対面の時 同席していた女の物かと誤解していた美加子ですが、母親の形見の品と知って届けるののでした。






PS.

2004年に地下化された東急 東横線の横浜駅と高架線を走る旧 5000系の姿は、懐かしくもあり 5000系は あらためて先進性の高い名車であったと思います。

当時はメインの出入り口でもあった横浜駅東口の広場へ車で強引に右折して一周し、高速のまま再び国道1号線へ右折して市電の前に飛び出すシーンはアクション映画顔負けの迫力ですね。

車内シーンは何れもセット撮影の様ですが、最後の 151系食堂車の壁は変わった模様です。ちなみに当時の食堂車で紅茶は 40円でした。

大晦日に京都へ向かった美加子が乗った列車は、東京 13:00発の大阪行 5ㇾ特別急行はと号と思われ 18:58に京都へ到着します。そして知恩院で除夜の鐘を正と突いて、新年を二人で迎えるのでした。

  

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