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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

224.”青春ロマンスシート” 青草に坐す

1954年6月 松竹 製作 公開   監督 野村芳太郎

高校庭球部の新庄翠(美空ひばり)と戸川雄一(田浦正己)を中心に 3世代のカップルの行方を描くホームドラマ風 青春映画で、美空ひばりが 160本以上各社の映画に出演した内の一本です。

庭球部の練習帰りの夕暮れに線路端を歩く翠と戸川の横を、薄暗くて形式は不明ですが東急電鉄の2連電車が走り抜けて行きます。
何時しか二人は楽しそうに歌いながらレールの上を歩いています。
ライトを点けて側線での撮影でしょうが、ミュージカル調の場面ならではの演出として観て下さい。
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中盤 翠の母 文子(三宅邦子)は戸川を家に呼んで持て成します。そして二人の邪魔になるからと、弟 誠(水原常春)に続いて文子と翠の叔母 節子(桂木洋子)は映画館へ行くことにします。
ところが館内へ入っても弟は居ません。おまけに西部劇という話だったのに 上映していたのは恋愛洋画で、ラブシーンに翠達のことを連想して心配になった文子は映画館を飛び出して家に急ぎます。
その道中で東急電鉄の閉まっている踏切を、強引に潜り抜けてまでして急ぐ文子です。
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文子に続いて節子も潜り抜けた直後に、警笛を鳴らして東急 3000系電車が通過して行きます。
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庭球部の大阪遠征に行った折 翠は神戸にある父親の住居へ行くと、同居する父の愛人と遭遇してショックを受けてしまいます。
国鉄三ノ宮駅ホームでの待ち合わせに戸川が遅れた時、翠はイライラを戸川にぶつけて荒れます
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大阪方面の国電が発車して行くホームから街へと当ても無く彷徨う翠を戸川が追い駆けます。
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更に夜遅くになっても街を放浪する翠と付き添う戸川は、とうとう警官に補導されてしまいます。そして東京から戸川の父 貞良(北龍二)と節子が貰い下げに行くのでした。
電機に牽かれた列車の走行シーンの後、
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並ロ車内で戸川親子が並んだ席で雄一は後ろの席が気になる様です。
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後席では翠と節子が並び、向かい合って顧問の羽田信平先生(大木実)が座っています。
先生から聞かれても節子に説得されても翠は荒れて放浪した訳を話さず、ショックを受けた父親の秘密を守るのでした。
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父親から翠との交際を禁止された戸川でしたが、翠の父 新庄啓作(笠智衆)が娘の心情を悟り 愛人と手を切り 帰宅して文子に謝罪したことから新庄家の危機は去り 戸川父の誤解も解けて翠との仲も戻ります。
一件落着した最終場面では、東急電鉄の線路端で なかなか進展しない羽田先生と節子の仲・熱愛で結ばれた新庄夫婦の起伏を二人で解説しながら自分達のことを語り合う翠と戸川です。
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傍らを東急 3000系3連電車が爽快に走り抜けて行きます。
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223.警視庁物語 深夜便130列車

1960年1月 東映 製作 公開   監督 飯塚増一

東京の汐留貨物駅で差出・受取人不明の事故扱いのトランクから絞殺体が発見され、荷物の発送人を割り出す警察の捜査過程を丹念に描くシリーズ第12弾の刑事もの映画です。

トランクが大阪から発送された物なので、警視庁愛宕署の長田部長刑事(掘雄二)と林刑事(花沢徳衛)・金子刑事(山本麟一)の大阪出張が決まります。
東京駅のホームで長田は息子の正雄(住田知仁→風間杜夫)から荷物を受け取り
深夜便ー1
急行月光に乗る二人と合流します。そこへ山形刑事が駆け付け、被害者の検視結果を知らせて見送ります。
深夜便ー2
3人が乗った 17ㇾ急行 月光は 21:45東京を発ち、終着 大阪へは 8:24に着きます。14両編成中 6両の3等座席車が有り、3人は固い座席で10時間半余りを過ごしたのでした。

その後の捜査でトランクは東京の隅田川貨物駅へ軽三輪で持ち込まれた物で、大阪の梅田貨物駅で受け取られ更に天王寺駅から汐留へと送られたことが分かります。
軽三輪運送の運転手から発送人の家が判明し、駆け付けると既にアパート二階の部屋は引き払われていた。しかし一階のおかみ(菅井きん)から引き払った男は、吉村春夫(小嶋一郎)と分かります。
この聞き込みの時、背後の築堤上をC57形蒸機牽引の列車が通過します。常磐線を走る各停か、当時4本あった我孫子経由の成田行と思われます。
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また友人関係の聞き込みでは国鉄田端機関区へ行き
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9600形蒸機の 79659の前で話を聞く場面もあります。
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被害者の眼から発見されたコンタクトレンズから身元が判明し、吉村が殺害後に貯金の大半を引き出して九州出身のダンサー花山あや子(小宮光江)と高飛びを図っていることを掴みます。
あや子の身柄を確保して所持品の切符から、東京 21:30発の博多行 41ㇾ急行筑紫に乗ろうとしていたことが分かります。
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更にあや子は「吉村は熱海から乗車して合流する計画だった」と話します。

既に 41ㇾの熱海発車時刻 23:32を過ぎているので次の停車駅 沼津から公安官に乗ってもらい、あや子所持の切符の裏番号 1845の前後を所持している若い男を確保する様に依頼します。

浜松機関区所属の EF5842電機が急行筑紫を牽いて沼津駅に到着するシーンがあり
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3人の公安官が乗り込み車掌に切符の捜査依頼をします。
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ところが暫らくして後番号の 1846を所持している中年男しか見付からないとの連絡が入ります。あや子が乗っていないと分かった吉村が、沼津で途中下車して東京行に乗り換えたと想像します。

41ㇾの沼津到着は 23:53で上り東京行 130ㇾが 2:20に沼津を出ます。そこで大船駅へ車を飛ばし、4:01に発車の 130ㇾに乗り込んで吉村を捜すことにします。
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沼津から乗って終着の東京まで乗った男は二人で、その内の一人が到着と同時に走って逃げだしました。
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しかしホームには待ち構えていた刑事も居て、忽ち取り押さえられてしまいました。
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222.おかあさんのばか

1964年6月 松竹 製作 公開   監督 水川淳三

両親・兄と共に平穏な生活を送っていた小学5年生の古田幸(加納美栄子)が、母の急死に因って生活が激変し 数々の困難に直面しながらも成長してゆく姿を描いた映画です。

幸の母 静江(乙羽信子)は区民水泳大会に出場した直後に、突然倒れて 脳出血に因って急死してしまいます。そして翌日から幸が一家の母親役を担うことになります。
しかし学校帰りに無人の家で魚を焼いて夕飯の準備を始めると、ガスの集金人が来て払えないのを怒られ 魚も焦がしてしまい家を飛び出して駒沢から渋谷駅へと行くのでした。
更に三段窓の京浜東北線 桜木町行 72系電車の走行シーンが映った後、
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幸は近所に住む井上猛(三上英一郎)が働く自動車工場へ会いに行き 夜になって帰ります。

ある日幸は近所に住み姉の様に慕う会社員の坂本千恵(榊ひろみ)に東京タワーへ連れて行ってもらい、両親の意向に反して 今は遠い黒四ダムで働く彼氏と結婚する決意を聞かされます。
そして千恵が旅立つ日 幸は一人早起きして、父と兄の朝ご飯の用意をしてから上野駅へ見送りに行きます。地平ホームに面して列車案内札の下がる改札を足早に通ると、14番線へと急ぎます。
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発車ベルが鳴り響く中 14番線で発車を待つ 82系気動車特急 白鳥号の元へ急ぐ幸の横には、16番線の 80系電車と 17番線の 451系電車らしきが停車している姿が見えます。
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幸は最後部から車内の千恵を捜して前方へと進むと、4両目で窓側に座る千恵を発見します。
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固定窓なので声はよく聞こえませんが、お互い身振り手振りを兼ねて別れの挨拶を交わします。
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構内放送で「 14番線は 7:43発 新潟行 特別急行白鳥号です」と流れていますが、当時 2003D 白鳥号は 9:05発 長野経由の大阪行なのでアフレコと思われます。

やがて白鳥号は、ゆっくりと動き始めました。手を振りながら少し歩きますが、立ち止まって列車の最後部を見送ると
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元来た中央改札口へと走り出しました。
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広小路口を出て振り向くと、駅の時計は 7:45指しているので
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京成上野駅方面へと急ぐ姿が映ります。幸は駒沢に住んでいるので地下鉄銀座線で渋谷へ行き、玉電に乗ったと思われます。

見送りに行ってから学校に間に合う設定なので、白鳥号を 7:43発にしたのでしょう。それでも少々苦しい設定なのですが・・・
しかし架空の新潟行としたのは不思議です。黒四の入口は大糸線 信濃大町か北陸本線 富山なので、大阪行の白鳥号のままなら富山を通ります。(上野 9:05発 → 富山 16:03着)

9:05上野発の白鳥号と 5:20青森発の白鳥号を直江津で併結して大阪まで食堂車2両を含む 14両編成で運行する方式は、1965年10月に上野発が金沢行はくたか号として分離されるまで続きました。




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