日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

213. 松川事件

1961年1月 松川事件劇映画製作委員会製作 公開   監督 山本薩夫

1949年8月17日未明 東北本線 松川~金谷川で青森発 上野行 412ㇾがレールが外される列車妨害で脱線転覆させられた事件の、捜査 公判過程を高裁判決まで ドキュメンタリータッチで描いた映画です。

福島警察の本間刑事(井上昭文)が福島駅舎前で
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煙草に火を点ける場面から本作は始まります。当ブログの(8.赤い夕陽の渡り鳥)でも登場した、明治期建築の名駅舎です。
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1949年9月のシーンですが 1960年3月の東北本線 福島電化後にロケが行われたので、架線下に蒸機の姿があり 汽笛を盛んに鳴らしています。

警察は元国鉄保線職員で国労組合員だった赤間勝美(小沢弘治)に目を附け、組合幹部への憎しみや恐怖心を煽り立て 長期の取り調べ 拷問に依って当局の筋書き通りの供述書を作らされるに至るのでした。
この供述書の確認過程で、赤間は伊達駅長らの不正追及に組合員30名と共に伊達駅へ押し掛け 逮捕されます。
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追及の時 赤間は不本意に参加した様で、途中で蒸機が停まる伊達駅ホームに抜け出しすシーンがあります。
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また供述書では事件の謀議が組合事務所で行われた時、松川~金谷川のカーブ地点が最適との意見が出て 日中C57形蒸機牽引の客ㇾがカーブの先から走り寄る場面で現場付近の様子を再現しています。
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そして実行の夜 現場近くでD51形蒸機牽引の上り列車がカーブの先から近づきます。前照灯で顔を見られぬ様 一同は土手下に飛び降りて伏せ、列車をやり過ごしたのでした。
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赤間の供述を元に 1949年9月末には第一次検挙が有り、狭い街中の路上に福島電鉄の線路が在る上を警察車両が走ります。10月の第二次検挙では松川駅舎が映った後、東芝松川労組長が検挙されます。
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そして福島地裁での公判場面で 武田久(藤田啓二)の妹が証言台に立ち、8月16日の晩 本田昇(山科年男)達が家に集まり 酔った本田を駅前の辰巳屋旅館の前まで送ったと証言します。

その回想場面では 本田を見送り 家に帰ろうとする前を、福島電鉄(1962年7月 福島交通に社名変更)軌道線の電車が通過して行きます。
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福島駅前から湯野町に至る飯坂東線を走るモハ 2000形の 2022です。1960年 日車製で、福島の路面電車 最終新型車でした。軌道線はその後 1971年4月に全線廃止となりました。

赤間に面会の為 赤間の兄 博(名古屋章)が保原支署へ大塚弁護士(宇津井健)と斎藤千(相川延夫)と行った時、福島電鉄 保原駅に到着したモハ 1100形 1113から3人が降りてくるシーンがあります。
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1100形は電化初期に製造され、戦後 半鋼体化されて全線廃止まで活躍した車両です。軌道線としては立派な保原駅は保原線の終点駅で、ここから掛田線と梁川線が出ていました。

警察と検察の思い描く通りの判決となった一審に続き 仙台高等裁判所での二審判決の日、裁判所前は家族や大勢の支援者で溢れ 多勢の警察官も並んで異様な雰囲気に包まれています。
そんな中 高裁前の道路を仙台市電 循環線の車両が 高等裁判所前電停から普段通り走って来ました。
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特徴ある形から 1976年の廃止まで走った、比較的新しい 200形車両と思われます。

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212.あした来る人

1955年5月 日活 製作 公開   監督 川島雄三

不仲の夫婦が其々気の合う異性と知り合い離婚へと向かいますが、その相手が共に身を引いてしまう結果に至る 人間関係の難しさを描く映画です。

東海道本線を走る列車内の通路を大きな荷物を持った曾根二郎(三國連太郎)が歩く場面からこの映画の鉄道シーンが始まります。曾根は食堂車に入ると、ウエイトレスに「さっきこの席にいた女性は?」と聞きます。
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「二等車の方へ行かれました」と答えたので、10号車の特別二等車へと行きます。リクライニングシートが並ぶ車内を進むと、眼を閉じて座っている大貫八千代(月丘夢路)を見付けます。
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曾根は声を掛け「先程食堂車で自分の伝票と間違えて 貴女は多く払った様です」と伝えて、差額金を手渡しました。そこへ車掌が来たので、曾根は「ここへ席を移ります」と言って切符とお金を渡しました。
曾根が大事そうに荷物を持ち歩くのを八千代が問うと、カジカの研究資料であると告げます。その後 何故か座席を通路側に向けて座り 車掌が戻ってきても無視して、曾根はカジカの説明を八千代に延々と続けたのでした。
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この列車内シーンは全てセット撮影と思われますが、どの列車を想定しているのか検証してみます。曾根は大村湾から上京する為の乗車で、進行左手の窓から富士山が見えています(合成ですが・・)
該当するのは佐世保 16:30発 1002ㇾ急行西海 東京行で、途中の富士駅に 16:37着です。しかし特ロは4号車なので早岐から大阪まで西海号に乗り、何らかの理由で大阪から 2ㇾ特急つばめ東京行に乗ったのでは?と推察します。
セレブの八千代が上京するのに特急つばめを使うのは当然で、10号車は特ロ(特急なので二等車)で 15:00前に富士駅を通過するのです。その後八千代から父親 梶大助(山村聡)を紹介してもらった曾根は、カジカの研究本 出版の援助を依頼するに至ります。

芦屋らしきの実家へ行っていた八千代が父親と上京した折、東京駅八重洲口から迎えの車に乗る場面があります。バックにはロケが行われた半年前に完成したばかりの、堂々とした八重洲本屋が建っています。
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八千代の夫 大貫克平(三橋達也)は、ヒマヤラ遠征を前に信州の鹿島槍へ一人で出掛けて遭難と報じられます。大貫と不仲の八千代は誤報の声に動かず、付き合い始めた山名杏子(新珠三千代)は心配のあまり鹿島槍へと向かいます。
夜行列車を表現した映像の後、大糸南線 信濃大町駅へC12形蒸機が牽く混合列車が到着します。
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そして信濃大町駅舎から杏子が出て来て、タクシーで鹿島槍登山口へと向かうのでした。
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大糸線は当時 中土~小滝が未開通で、大糸南線の内 信濃大町~中土は非電化でした。一日4往復の混合列車をC12が牽いていました。ですから信州の山奥を表現したいのでしょうが、信濃鉄道時代に電化されているので電車で到着が本当でしょう。
その後 遭難したのは別人で 無事 大貫は杏子に出迎えられて下山し、お互いに愛情を確認するのでした。帰路の車内 二人共黙したまま並んで座っています。旧型客車内の様なので、中央本線に乗り換え後の場面でしょうか。
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杏子は八千代の父 梶大助の庇護で洋装店を開いていたので、大貫と八千代の関係を知って交際を打ち切る決意を伝えます。その際 待ち合わせたのが、風格ある新橋駅の旧汐留口駅舎です。
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3:30 の約束でしたが 3:50 になっても杏子は現れず、駅舎の中から外へ出て捜していると漸く現れたのでした。





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211. 女を忘れろ

1959年1月 日活 製作 公開   監督 舛田利雄

元ボクサーの田所修(小林旭)が女子大生 三木尚子(浅丘ルリ子)母子の生活安定の為のアパート建設を、我が身を賭して支援することで愛情表現する青春映画です。

冒頭 車体にTKKと書かれた東急電鉄 3000系3連電車が走り抜ける線路横の道から、郵便配達のバイクが田所の住むアパートへ到着する場面から映画は始まります。
今はキャバレーでドラマーをしている田所はバー勤めの雪江(南田洋子)と同棲しており、一緒に出勤する場面で日活映画では珍しく西武新宿線が登場します。

東急沿線に住みながら、何故か西武鉄道 311系2連電車が走り抜けるシーンが先ず有ります。先頭は 311系342 で、ロケ地は新井薬師前~中井でしょうか。
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続いては走行中の車内ロケです。ドア付近に立つ田所の襟を直して世話を焼く雪江の姿を、横に立つ学生に見られて恥ずかしくなった田所は嫌がります。
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田所はその車内で友達と談笑する尚子を、初めて見掛けて見とれています。そして電車は終点 西武新宿駅1番線へと到着します。隣の2番線には田無行が停車しています。
田所と雪江は連れだって露天の1番線ホームを前方の出口へと歩きます。この駅は新宿駅迄の延伸を前提に、仮駅として1952年3月に高田馬場から延伸開業したのです。
それ故 画像の様に1番線などは木造ホームで、終戦直後でもないのに屋根も全く無い 寂しい駅でした。
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中盤 愚連隊に絡まれていた尚子を助けたことから仲良くなり、尚子に替って滞っているアパート建設を請け負っている大沢の事務所への談判を引き受けます。
仕事帰りの夜遅く 西武新宿駅前で雪江を待って、先に帰る様 話します。出札窓口の明かりだけが目立ち、将来の工事に備えて駅前は広大な空き地です。
雪江と話していると背後の山手貨物線をEF 10 形あたりでしょうか、電機が牽引する貨物列車が走り抜けて行きます。

九州の実業家 吉川(弘松三郎)に見初められた雪江は、田所と尚子の仲を知ったことから身を引いて博多へ向かう決意を固めます。
EF 58 形電機を先頭に、荷物車2両の後ろに長々と客車が続く急行列車らしきが走って来ます。
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続いて特別二等車内に吉川と雪江が並んで座り、遥か九州を目指している様です。
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