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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

148.ミヨちゃんのためなら全員集合

1969年12月 松竹 製作 公開   カラー作品    監督 渡辺祐介

零細 漢方薬製造会社 経営の伊刈長吉(いかりや長介)は女房・従業員に逃げられるも、加藤ヒデオ(加藤茶)や高校時代の恩師の妹 花山美代(倍賞美津子)の助けでもち直すコメディ映画です。

鉄道シーンは終盤 従業員も元に戻り会社がもち直すが、伊刈の恩師 花山大造(ハナ肇)が街を出る場面にあります。
夜遅く、薄暗い日ノ出町駅(架空駅)で
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花山は東京迄の切符を買い求めます。妹 美代と改札を入ると突如 音楽が流れ、駅長室の方から学ラン姿の伊刈達が「ホタルの光」を演奏しながら現れます。
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ホームも日ノ出町駅として装飾してありますが、独特の古いコンクリート部分と木造の駅舎は 箱根登山鉄道 旧強羅駅と思われます。この駅は、1977年4月 現在の山小屋風駅舎へと改築されました。
そして箱根登山鉄道 モハ1形 102を先頭に電車が到着します。
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「ミヨちゃん」が演奏される内 花山と美代が乗り込み、見送りを受けます。
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22:30 最終の日ノ出町発 大河原行電車は 102を後部に警笛と共に消えて行きました。改札口からは、側線にモハ1形 101の姿が見て取れます。
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伊刈達が改札口から出てくる上には、本物の最終電車の時刻 次は 22:15と表示されています。この電車は小田原行で、23:00の到着です。運賃は 120円!でした。

箱根登山鉄道 モハ1形 102は 1919年製造され、主力電車として活躍 その後 101と102が組み走行 2002年2月末をもって引退しました。
また日ノ出町駅は京浜急行電鉄に実在しますが、架空の駅名に何故それ程離れていない実在する駅名を使ったのか不明です。

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 147. 胎動期 私たちは天使じゃない

1961年4月 新東宝 製作 公開  監督 三輪彰

封建的な看護学校寄宿舎生活に反発しながらも、次第に変わって成長してゆく看護学生たちの三年間を描く 青春映画です。

鉄道シーンとしては、序盤 主役の鈴元春子(高須賀夫至子)が秋田から上京する場面からあります。
汽笛と共に砂箱や蒸気溜が角型の戦時型 C11形蒸機が回転式火の粉止付煙突から黒煙を吹き上げ、スポーク式動輪が動き出します。
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客車の窓から春子が名残惜しそうに、ホームの祖父母を見ています。
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羽後西山(架空駅)と書かれた駅名板をバックに、祖父母二人で見送っています。
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やがて列車に乗る春子から祖父母は遠くなり、春子は懸命に手を振ります。客車の上には架線が有り、電化間近なのでしょうか。
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さて この駅舎 何処かで見覚えがあります。( 123. 汚れた肉体聖女 )でも登場した、五日市線 西秋留駅(現 秋川駅)を仕立てて撮影したと思われます。
当時 都内で蒸機牽引列車が走り 田舎風の駅舎の在るこの駅は各社のロケに使われましたが、映画公開前の2月中旬電化されたので直前に撮影したのでしょう。

次は小田急電鉄 西生田駅(現 読売ランド前)から笠原婦長(賀原夏子)ら二人と春子が降りて来て、春子の母 鈴元豊(三宅邦子)が出迎える場面があります。
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中盤 東海医大前駅?(不鮮明な架空駅名)の木造跨線橋から笠原婦長と春子が降りて来るところを、春子を疑う鹿川真砂子(山﨑左度子)が物陰から見ています。

そして卒業の年 西生田駅から降りて来る春子のバックで、出発して行く小田急電鉄 1800形が映っています。国鉄 63系と同型の小田急割り当て車両で、1981年まで走りました。
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卒業前 寄宿舎を抜け出したりして問題行動の多い 久米勢津(広村芳子)が、京王帝都電鉄 2000系らしき(すぎたま様コメントより)が通り過ぎた直後に踏切ではない所で線路を渡って男の所へ向かうシーンは印象的です。
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最後は東海医大前駅?で電話ボックスから出てきた笠原婦長が、通りかかった春子を見掛けて 伝言を頼むシーンがあります。
似た名前に 東海大学前駅が小田急電鉄にはありますが、この駅はこの映画公開の 26年後に大根 → 東海大学前と改称されたので (123.) 内の南島原駅 同様の偶然でしょうか?
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このロケ地は何処か?を考えると、特徴ある木造跨線橋がヒントの様です。該当するのは、戦前唯一の橋上駅舎化された成城学園前駅ではと思われます。(54.泉へのみち)のラスト画像もここです。

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 146.昭和やくざ系図 長崎の顔

1969年10月 日活 製作 公開  カラー作品   監督 野村孝

長崎市の縄張りを巡って強引に勢力を伸ばす新興の松井組に対して、先代の息子 高間慶二(渡哲也)が三代目を継ぎ 奮闘する姿を描く 任侠系映画です。

高岡が暴力事件で服役している間に、新興の松井組に押される一方の高間組。遂に高間が仮釈放となり4年ぶりに長崎へ戻って来る日、今や落ち目の高間組だが全員で出迎える冒頭に鉄道シーンがあります。
映画の冒頭 長崎本線 喜々津~東園のトンネルから DD51内燃機に牽引された 1ㇾ特急さくら号が登場します。
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次位はカニ22ではなく簡易電源車マヤ20の様で、その後ろに 20系ブルートレインが続いています。

左手の美しい大村湾沿いに走る姿は、昔からの有名撮影地ならではと言えますね。この映画公開 3年後には長崎トンネル経由の新線が開通し、優等列車はこの区間を走らなくなったので貴重な映像です。
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この映画のロケ時であれば、特急さくら号の長崎行は基本編成なので次位はカニ22電源荷物車の筈です。故障か検査でマヤ20に替ったか、この映像のみ 1965年10月~1966年9月に撮影されたものなのでしょうか。

長崎駅舎の映像に続いて、
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さくらのヘッドマークを装着した DD51 576(鳥栖区)を先頭にさくら号が長崎駅2番ホームへ入って来ました。左手にもブルートレインの車両が見えますが、先着した新大阪発の特急あかつき号でしょうか。
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ホームに勢揃いした高間組の面々をバックにタイトルが出ます。到着した列車から続々と乗客が降り、最後に3号車後部デッキから高間がスーツ姿で降りて来ました。
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真っ先に近寄るのは、高間の おじき格 平田新吉(嵐寛寿郎)です。斎藤重作(水島道太郎)や弟分の小宮鉄男(郷エイ治)らがにこやかに出迎えています。
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145.真白き富士の嶺

1963年11月  日活 製作 公開   監督 森永健次郎

白血病を病む 18歳の磯村梓(吉永小百合)が文通する謎の恋人とを成就させようと姉の梢(芦川いづみ)が奮闘する内、病が進み事の真相が明らかとなる悲恋映画です。

梓の姉 梢は東京 新宿の洋裁学校の教師。窓から地下化工事中の京王線の線路が見え、屋上から淀橋浄水場が見えるので文化服装学院でロケが行われた様です。
妻を亡くした父 磯村修平(宮口精二)は新橋近くの高校の教頭で、梓の療養の為 逗子に引っ越したので父と姉は長距離通勤となっている。

鉄道シーンは磯村の帰路から始まる。新橋駅 東海道本線ホームで磯村がベンチで電車を待っていると、横須賀線下り電車が到着します。
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横須賀線は当時 東京~大船が東海道本線と線路が共用で、増発は 1980年 10月に別線が完成するまで待たねばならない状況でした。

ロケ当時は長年主力で活躍した 70系電車から 111系へと置き換えが進んでいた頃で、新橋駅に到着した上り電車は 111系と思われます。
続いて、横須賀線 逗子駅から磯村が降りて来ました。そこへ療養中の梓が小走りで駆け寄り、磯村を心配させてしまいます。
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姉の梢は梓宛てのラブレターを見てしまってから、イニシャルだけの謎の恋人をつきとめ成就させようと思います。
この事を恋人の山上裕(小高雄二)に市ヶ谷~飯田橋の土手斜面で、相談する場面があります。総武・中央緩行線の 101系電車が行きかう線路端まで二人は降りて話しています。
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梢と山上で M.Tに該当する人物を捜すも、見つからず江ノ電 藤沢駅ホームで相談するシーンがあります。
当時の江ノ電 藤沢駅は小田急 藤沢駅に近く、両社の先端が斜めに近付く形で国鉄への乗り換えも現在より便利だった気がします。構内は2面3線構造でした。
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木造駅舎ホームのベンチに二人で座って話している前の1番線に、300形らしき1両の電車が到着します。
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江ノ電はこの頃利用者が減り、1965年には廃止も検討されています。その後交通渋滞から利用者が増え、藤沢駅南口再開発で 1974年現在の高架駅へと移転しました。

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 144. 国際秘密警察 火薬の樽

1964年12月 東宝 製作 公開  カラー作品   監督 坪島孝

世界征服を目論む世界統一同盟に対抗する、国際秘密警察の一員 北見次郎(三橋達也)の活躍を描くアクション映画です。

世界統一同盟に誘拐された竜野博士(田崎潤)の救出へ向かう警視庁の柳生警部(佐藤允)と、博士の娘 華代(星由里子)・博士の助手 宮地(二瓶正也)の三人が新幹線に乗っているシーンからスタートです。
開通して間もない東海道新幹線0系の走行シーンの後、二等車三人掛けシートに柳生を中心に座っています。
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三人が乗る超特急ひかり号が豊橋駅を通過するシーンの後
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車内に爆弾を仕掛けたとの電話が警視庁にあった旨の緊急電話があり7分後には爆発との内容です。
柳生は華代が顔を知っている同盟メンバーが乗っていると思い、車内を捜すと
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ビュッフェで見付かり柳生と格闘になります。壁の時計は 11:15
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そして男を捕えますが、男は自決してしまい爆発時刻が迫ります。しかし爆弾の遠隔装置は解除され、予告時刻より3分経過しても何事も無く車内は喜びに沸き立ちます。
時刻は 11:20 入口横の速度計は 210km辺りを差し、反対側入り口上には現在地計が有り 豊橋辺りを差しています。この格闘シーンの為、セットを組んで撮影したと思われます。

舞台となった超特急ひかり号は豊橋駅を通過後 11:15だったので、東京 9:00発 名古屋 11:27着の 7Aㇾひかり7号と思われます。
ロケ当時は東京~新大阪 4時間運転時代で、名古屋迄も 2時間 27分掛かり爆弾騒動が終わっても未だ名古屋に着かないのです。開業一年後から 3時間10分運転となりました。

事件は解決し、ラストシーンは東京駅丸の内口です。東京中央郵便局をバックに東京ステーションホテル入口前で、同盟メンバーの6号 ルミ(水野久美)が当局に引き渡されます。
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そして北見が皆に別れを告げ、駅前広場から都電方面へと歩き出したところでエンドマークとなります。旧新丸ビルをバックに走る6000形らしき都電は 28・31系統の何れかです。
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28系統は錦糸町~都庁前 31系統は三ノ輪橋~都庁前で東京駅丸の内口前を走っていましたが、この映画公開の5年後 1969年には共に東京駅前から姿を消しました。
現在ではこの映画に映っている建物全てが、建て替え又は復元リニューアルされて変わっています。

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