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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

 126. やさぐれ刑事(デカ)

1976年4月 松竹 製作 公開   カラー作品   監督 渡辺祐介

北海道警のハミダシ刑事 西野剛(原田芳雄)が暴力団幹部 杉谷保夫(高橋悦史)に妻 真穂(大谷直子)を寝取られ、警察を辞めて駆け落ちした二人を列島縦断で追い掛け 復讐を図るアクション映画です。

大西警部(神田隆)を射殺した杉谷は手配され、西野達が小樽から函館へと行方を追う内 誘拐された真穂と同行していることが分かります。更に青函連絡船を避け、漁船で大間方面へ渡った様です。
しかも無理やりではなく 仲が良さそうだったことから遂に西野はキレ、警察手帳を破って警察官ではなく一個人として駆け落ち逃走した二人を追い掛ける決意を固めます。開始 18分のここでタイトルと異例な映画です。

鉄道シーンはここからで、二人を追った西野は大畑駅から大畑線に乗ります。126-1.jpg
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大湊線・東北本線と乗り継いだのでしょう、青森駅西口から出て来た西野の姿があります。
しかし杉谷に再び逃げられましたが、元部下の松井(清水章吾)から福島県 相馬へ向ったとの情報を得て後を追います。だがここでも杉谷に逃げられ、相馬の組を爆破して東京へと向かいます。

東京では再び松井のサポートを受け、更に真穂から杉谷のバックや行方の情報を得て大阪~神戸で麻薬組織に打撃を喰らわします。そして次の逃走先 小倉へ飛び、飲み屋で聞き込みをしているところを刺客に襲われます。
その刺客を返り討ちにして捕まえ、雇い主の地元組長から杉谷が鹿児島 南竜会の所へ行った情報を得た。翌朝西野が 小倉駅から 7:06発 1005M 特急有明2号 西鹿児島行にギリギリ飛び乗るシーンがあります。
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車内は 581系特有のシートピッチだけが広く、それでいて向い合せ 固定 ノンリクライニングシートという現在では考えられない特急車両です。西野は入口を入って直の席に座り、これを監視する眼があります。
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次に有明海らしき海岸線を走り抜ける 581系 特急有明の美しい姿があります。
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そして熊本駅へ、有明が到着するシーンが続いています。
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9:37到着 ここで西野は停車後一寸おいて突然列車から飛び降りました。
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追っ手をまこうと下車したのでしょうか? 熊本駅前からタクシーに乗り「川尻へ」と告げました。古い木造駅舎の川尻駅前ロータリーを一周した所で、刺客の山路(阿藤海→阿藤快)を車内から射殺しました。
鹿児島でまた松井からサポートを受け、更に山路の女の線から杉谷が枕崎にいることを突き止めます。そして西野は今は無き 枕崎駅舎前にバスで到着し、
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ここでも真穂と再会 ゴールへと突き進むのでした。



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125. からたち日記

1959年4月 松竹 配給 公開   監督 五所平之助

信州の貧しい農家に生まれた つる(高千穂ひづる)は地主の家で子守し、売られた芸者置屋では下働きから半玉へと苦労するも幸せを掴みきれない女の半生を戦前から戦後へと描いた映画です。

半玉のつるは軍需会社のロンパリ(山形勲)に水揚げされ、3号さんになった。一転 余裕のある生活となったが、時節柄 勤労動員に工場へと働きにでて本山(田村高廣)という軍人といい仲となる。
一時療養から部隊復帰となった本山が、上諏訪駅から出発する日に見送る約束をつるはしていました。夜の上諏訪駅ホーム 時計は 19:27 で本山・妹の民子(島倉千代子)・母親(吉川満子)がいます。
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ホームは出征兵士を見送る一団が送る歌を歌って賑やかな中、本山は つるの姿を捜して目を泳がしています。そんな本山に母と妹は言葉を挟めず、母はオロオロ 民子は不機嫌な様子です。
ところが つる はその夜に限ってロンパリが居座り、駅へ行くことができません。汽車の発車時刻が迫り、つる は落ち着かず 不自然な様子にロンパリは疑い 外出を阻みます。

そうこうするうち、20:07 発 新宿行上り列車の到着を知らせる放送があり、D51 587 蒸機牽引の列車が入って来ました。
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つる は遂にロンパリを振り切って家を飛び出します。
踏切へ近付くと手動式遮断機が下り、汽笛を鳴らしながらスノープロウ付 D51 牽引の列車が つる の前を通過して行きます。つる は「本山さ~ん」と4回叫ぶしかありませんでした。
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この上諏訪駅でのロケを考察してみます。最初のシーンで時計は 19:27 を指しています。ロケ当時 19:17 に下り 417ㇾ長野行・19:22 に上り大月行 420ㇾが上諏訪駅を出発して行きます。
そこで乗降客が居なくなったホームで夜の出征シーンの撮影が行われたと思われます。次に 21:30 到着の長野発上諏訪止まりの 516ㇾを新宿行上り列車として撮影したと思われます。
20:07 発新宿行という放送はアフレコで、戦時中のダイヤでは 長野発 404ㇾで20:57 に上諏訪を発車 翌朝 5:00 新宿に到着します。ロケ当時は 22:36 発 418ㇾが該当し、4:30 新宿着でした。

本山との関係がバレた つるは 諏訪に居られなくなり、芸者時代仲良しだった かるた(水原真知子)を頼って千葉へ弟 忠夫(柴田昭雄)と向かいました。しかし空襲で かるたは死んでしまいます。
戦後 つるは生活苦の中で朝鮮人の松村(殿山泰司)の下で石鹸売りをして、弟を進学させることを希望に頑張っていました。だが弟は病気を苦にして自殺してしまい、諏訪に戻ることにします。
最後の鉄道シーンは、松村達の見送りを受け千葉を離れる時です。ロケ地は不明ですが架線が張られた駅から蒸機に牽かれた列車で、想い出多い地に別れを告げ 諏訪を目指して出立して行きます。
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 124. 学園広場

1963年12月 日活 製作 公開  カラー作品   監督 山﨑徳次郎

舟木一夫のシングル曲(学園広場)のタイアップ歌謡映画で、とある男子校に代々受け継がれてきた学校一勇敢な者が被れる「勇者の帽子」を巡るコミカル学園ドラマです。

今年の持ち主 古山(植頭実)が帽子を紛失し、巡り巡って街の公金横領を図る隅田興業社長の子分 奥山(由利徹)が変装用に使ったことから高校生達に追われます。
鉄道シーンは映画後半のここから始まります。学ランを着て高校生に変装した奥山が公金を抱えて国鉄 八王子駅北口らしき広場に現れ、後ろから高校生の集団が追い駆けて来ます。
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改札口からホームへ行くと、何故かグリーン塗装の京王電鉄車両が。あわてて飛び乗った車両から前方へと奥山は移動して行きますが、高校生達も後を追い掛けて進みます。
続いてのカットでは、京王電鉄 2000系と 2700系 共に急行同士のすれ違いシーンがあります。2000系の改良形で同様な 2010系が、京王れーるランドに静態保存されています。
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奥山は先頭車両まで来ると、よろけて女性三人組のヒザに乗ったりニワトリが入った箱をひっくり返すなど騒ぎを起こして次の駅で飛び降りました。
降りた駅が島式ホームで、丁度反対側へ到着した電車に乗り移りました。この島式ホームの駅は、上北沢駅の様にも見えます。京王電鉄の島式ホーム駅は案外少ないのです。
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ところが集団で追い掛けていた高校生達は、奥山が降りたのに気づくのが遅れて一人も降りることができずに窓から顔を出して悔しがるだけです。

この一連の動きを見ると、奥山が降りようとした駅は相対式ホームです。両側に電車が停車している画像の場面は島式ホームですが、奥山の姿はありません。
続いて奥山が対面の電車に乗り込むシーンはアップで撮っているのと、ホーム屋根の形が違うことから別の島式ホーム2面4線の追い越し駅での撮影かもしれません。

追い駆けてくる高校生達を撒いた奥山は、車内で「勇者の帽子」の先輩(ミッキー安川)に出会ってしまいます。奥山としてはそんな大事な帽子とは知らず、聞かれてもシドロモドロです。
先輩に付き合えと強引に降ろされた駅の地下通路で、二人は又も追い駆ける高校生の一団と遭遇。その騒ぎで奥山は双方から逃げられました。この駅は高幡不動でしょうか。

この様に国鉄八王子駅や京王電鉄各駅でドタバタの追跡シーン撮影が行われましたが、続くシーンでは何故か遠く青梅鉄道公園へ飛んでいます。
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ここまで苦労して逃げて来た奥山は、2120形蒸機のキャブに座り 公金の包みを開けますが中身はバナナというオチでした。まだ開園から一年なので後ろの 8620形1号機も綺麗です。
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123. 汚れた肉体聖女

1958年11月 新東宝 製作 公開   監督 土居通芳

新東宝お得意の何とも気を牽くタイトルですが、例によって・・・です。  修道女の同性愛を焦点にしたキワモノ映画です。

しかしこんな映画でも貴重な鉄道シーンがあるので、今回は本作を取り上げてみます。平恵利(高倉みゆき)は兄の友人 津山(三村俊夫)に襲われ、不幸にも妊娠します。
親に無理やり中絶させられた恵利は、上京して津山と話をしようと地元の南島原駅(架空駅)へ行くところから鉄道シーンが始まります。

汽笛と共に C11 8 蒸機が4両の客車と2両の貨車を牽く混合列車で、南島原駅へ到着します。123-1.jpg
架空駅と上記しましたが、現 南島原駅は当時 島原湊駅であり映画公開の二年後に現在名に改称されました。
ですから当時としては架空駅であり、車両基地のある現 南島原(島原湊)駅とは別物です。思うに五日市線の西秋留(現 秋川)駅で、駅名標などを大掛かりで改装してロケが行われたと思われます。

当時島原鉄道にいたのは C12 形蒸機であり、C11 8 機関車は武蔵五日市支区所属でした。脚本家はいかにもありそうな南島原駅と設定したのでしょうが、まさか二年後に実在駅名になるとは思わなかったでしょう。
ホームの駅名標を始め、改札口上の長崎・諫早・門司方面の案内板等 かなり力が入っています。この駅は前出(99.警察日記)など東京近郊で地方雰囲気があり、この頃 各社でロケが行われています。
映画公開の前年 旅客列車を DC 化した五日市線なので、貨物用の C11 でロケ用の列車を仕立ててもらったのでしょうか。それも 1961年2月には電化完成となり、五日市線は近代化されました。

恵利が改札口から列車に向かうと、123-3.jpg
丁度下車して来た父親の平晃介(高田稔)に見つかり乗車できません。
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恵利がお願いするも東京行は反対され、「絶対許さない」と言われてしまいます。
貨物側線脇に移動し、同行してきた紅百合学院の木戸先生(津路清子)共々 紅百合学院という全寮制の修道女学校への入校を説得されてしまいます。
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122. 混血児リカ ひとりゆくさすらい旅

1973年4月 オフィス 203・近代映画協会 製作 東宝 配給  カラー作品   監督 中平康

少年鑑別所 愛友学園を脱走し横浜へ戻ったリカ(青木リカ)が、三沢から来たミドリ(村田美智子)から花子(宗田政美)の窮状を聞き助けに行くアクション映画です。

鉄道シーンとしては、リカが横浜から花子のいる三沢へ向かう道程に集約されています。先ず今は無き横浜駅三代目旧駅舎(1928年~1980年)へ、リカが入る場面から始まります。
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切符売り場で「東北線 三沢一枚」と言って買うと、東海道本線上りホームへと向かいます。この場面で早くも怪しい目つきで監視する男がいます。

ホームで待つリカの腰に男の手が伸びた瞬間、男は線路に投げ飛ばされました。そこへ 113系電車が入って来て急ブレーキの音が鳴り響き、何事ぞと線路を覗き込む人々。
続いて 485系特急が迫り来る走行シーン。
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しかし何故か電機の走行音です。次の車内シーンは 583系電車特有のシートが並んだ中程に、リカは一人で座ってお稲荷さんを食べています。
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この車内にも刺客らしき二人の男と、相対するサングラスの男が一人います。次はボンネット型 485系特急やまばと号が白河駅に進入するシーンです。
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そしてホームでリカは駅そばを食べています。
その時赤いコートの男が千枚通しを出すのを見たリカは、残っているソバを丼ごと男の顔に投げつけ 更に蹴り上げます。122-4.jpg
男は線路に転落し、そこへ電機が牽く列車がブレーキ音と共に進入して来ました。

車内でお稲荷さんやパンを食べていたリカは、何故途中の白河で降りてまでして駅そばを食べたのでしょうか。駅そばマニアだったのでしょうか。この当時の白河駅そばが有名だったか定かではありません。
またリカは やまばと号で白河へ到着したと示唆しています。在来線特急最盛期の当時 東北本線には数多くの特急列車が走っていましたが、特急は、あいづ号1本以外白河には停車しませんでした。山形行の やまばと号も全て通過でした。

そして次のカットでは 455系らしき急行電車が発車して行きます。まつしま号仙台行か いわて号盛岡行でしょうか。
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何れにしても白河駅で乗車できる優等列車はこれが正しい姿です。
続く車内シーンは再び 583系です。第三の刺客がナイフで襲おうとしますが、リカが気付かぬ内に坂井八郎(峰岸隆之介 → 峰岸徹)が相手のナイフを叩き落とし 助けられます。

次に 485系らしき特急の横からの走行シーンがあります。白河の駅そばで寄り道したので、福島辺りから特急はつかり号にでも乗り換えて先を急いだのでしょうか。
その甲斐あってか、明るい内に小雪舞う 三沢駅に降り立つリカの姿があります。この美しい白樺の駅舎は、新しい駅舎となった現在も一部が旅行センターとして残っているそうです。
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この三沢駅頭でまたしても刺客がリカに襲いかかろうとしますが、リカを父親と間違えた男の子が抱きついたので断念しました。
この男の子の家に寄ることになり 雪が残る砂利道を二人で歩いていると、DE10 1160 ディーゼル機関車が単機でゆっくり走り抜けて行きました。
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これは 2006年廃止となった、米軍三沢基地へのジェット燃料搬入専用線と思われます。

当時のダイヤでリカの行動を追ってみます。朝早く横浜を出発、上野発 6:40 臨時急行 いわて1号 6101M で 8:58 白河着。9:36発の 101D 急行 八甲田1号に乗れば、17:20何とか明るい内に三沢に着きます。
でもこれでは 485系や583系の特急に乗れません。映画に合うのは、上野 9:13発 1103D 急行 いいで・ざおう1号で 11:46 白河着 12:05発の 1101M 急行 まつしま1号で 12:34郡山着 12:41発 2021M 特急はつかり1号に乗り継ぎます。
このまま乗って行けば明るい内に着きますが、三沢には停まりません。そこで 17:38着の尻内(現・八戸)で 18:28発の各停 525ㇾに乗換ますが、三沢到着が 18:52 と夏場でもなければ真っ暗な時間帯です。

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