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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

82. 空想天国

1968年8月 東宝 製作 公開  カラー作品    監督 松森健

冴えない空想家の建設会社員である田丸圭太郎(谷啓)が空想から本当の大活躍を見せるアクション風コメディ映画です。

海東で地震が起き、田丸が勤める山水建設が施工した海東高校が倒壊した。田丸は原因調査を託され、海東駅へ向かったのです。
山間部をD52 蒸機が3両の客車を牽いて走る姿が映った後、(かいとう)と柱に札が付いた駅へD52 70 機関車が牽く列車が到着します。
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続いて(海東)と看板が屋根に載る木造駅舎から田丸が出てきます。
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右手を向くと山村宏子(酒井和歌子)が来て、高校倒壊で父親が死亡したことから田丸を引っ叩きました。
当時 東京近郊で蒸機牽引列車が走っていた御殿場線がロケ地に選ばれました。海東駅は松田駅と思われます。D52 70 は国府津区所属で現在は山北駅横の公園に静態保存されています。

高校倒壊の原因を突き止めた田丸が帰京する時、宏子が見送りに来ます。田丸が乗った列車は5番線に停車していて、前方では蒸機が煙を上げています。
宏子は前方から圭太郎の名を呼び、車内を捜してホームを歩きます。
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そこで汽笛が鳴り列車は動き出します。田丸が声を掛け、宏子はデッキで待つ田丸のもとへ飛び乗りました。

ホーム前方へ宏子が現れた時、ホームの時計は 12:25 でした。そして5番線。とするとこの列車は日中唯一の下り蒸機牽引列車 国府津 12:37 発の沼津行 927ㇾと思われます。
つまり駅舎前でのロケは松田で行い ホームへの到着や発車のシーンは山間の駅ではなく、東海道本線の駅でもある起点の国府津駅でまさかの撮影が行われたと推察します。

その後空想ではない場面では最初と同じ山間部をDC列車が走り、海東駅へキハ51 形DC列車が到着します。
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そして同じ海東駅舎を右に出ると、現れた女性は・・・
最初はこの映画のロケが 1968年4月27日の御殿場線前半電化直前に行われたので、海東駅には既に架線が張られているのかと思いましたが国府津でロケされたとすると納得です。

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 81. 顔

1957年1月  松竹 製作 公開     監督 大曾根辰夫

犯行現場で顔を見られたことから起こるサスペンス映画で松本清張の短編が原作ですが、作中の男女を入れ替え原作とは少々話が変わっています。

鉄道シーンは冒頭にあり、夜の東海道本線 草津駅で普通列車に座る石岡三郎(大木実)が曇る窓を拭きホームを見る場面でタイトルが出ます。客車は盛アホ オハ35 1210と何故か青森客車区所属です。
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「5番線停車中の列車は 23:19発の各駅停車 東京行です。まもなく4番線に上り急行列車が通過します」と深夜の様で、駅員以外人けの無いホームに放送が響きます。

やがて隣のホームをEF58 電機牽引の急行列車が入線して来ました。
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編成の6両目辺りから見守る駅員の前に、列車から男が飛び降りてきました。
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「アッ!」と駅員が声を上げる間も無く コート姿の男がホームへ転がり、何事も無かったかの様に向かいの各停 東京行に乗りました。

駅員は呆気にとられて、男に声も掛けません。そしてホームに転がる割れた壜を拾い、「ウイスキーじゃないか」「酔っぱらってるんだな」「あってらないことするな」などと話しています。
やがて発車ベルが鳴り、東京行の列車はゆっくりと発信して行きました
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男は飯島哲次(山内明)で車内を歩き、
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水原秋子(岡田茉莉子)を見つけると洗面所へ連れ出し、自分を避け 逃げようとしているなと詰め寄ります。

秋子は腐れ縁の飯島と手を切り 別のプロ野球選手と一緒になりたかったので、後からこの列車にまで追いかけてきた飯島に危機感を覚え 争いの果てにデッキから転落させてしまいます。
しかし洗面所での二人の言い争いの場で石岡に顔を見られたことから、秋子を巡るこの先の展開が始まるのです。








PS. 

東海道本線は 1956年11月に全線電化完成したのですが、東側から順次電化され最後に電化されたのが この草津駅のある米原~京都 だったのです。
故に草津駅でのロケは 1956年11月19日の全国時刻大改正以降 僅かの期間と思われます。ところが草津 23:19発の各停は大阪発 21:50の513ㇾ青森行(到着は翌々日 5:00!)なのです。

4番線を通過するのは、21:10 神戸発の16ㇾ急行銀河 東京行で草津 23:18通過の様です。先頭から8両目まで3等車 9~14両目(1号車~6号車)が2等車でハザ1両増結かな?
この時代の急行銀河は2等寝台3両2等車3両3等寝台2両と半分以上が特別料金車で、続々と連なる帯付車の豪華編成の姿が画面からも見て取れます。

東京へ逃げ帰る秋子のことを知って追い掛け、強引に飛び降りまでして追い付こうとする飯島の行動からシツコさを強調した脚本にしたかったのでしょう。
しかし電化後東海道本線の普通列車は大半が電車化され、夜行列車らしい旧客列車の東京行を追い越す急行列車という組み合わせはゼロなのです。

それでロケに際して青森行 513ㇾに東京行のサボを付けてもらい、通過する急行銀河と合わせて撮影したと思われます。なお構内放送もアフレコと思われます。
石岡の乗る 各停東京行がオハ35 なのですが所属の部分に盛アホ(盛岡鉄道管理局 青森客車区 1959年表記がアホ→アオに変更)とあることからも想像がつきます。

ダイヤから見ると佐賀から上京する石岡が乗っているのは、門司 7:26発の各停で草津を 1:06発車し東京へは 12:53の到着の112ㇾではないかと思います。
いかし追い越して行く列車は、門司 10:16発の 46ㇾ急行荷物専用列車 東京行なので話が合いません。それでこの様なロケとなったのでは・・・

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 80. その人は昔

1967年7月 東京映画 製作  東宝 配給 公開    監督 松山善三

北海道えりも百人浜の二人が東京にあこがれ上京するが、都会に翻弄されてしまう 珍しい全編ミュージカル仕立ての青春映画です。

鉄道シーンは最初に、川岸で ヨウコ(内藤洋子)とカズオ(舟木一夫)が鉄橋を渡る C11+無蓋車3両+PC 2両の列車を見て上京を決意します。
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早朝 二人は追いすがる母親を振り切り、とある小さな駅から苫小牧行のサボを付けたC11 牽引混合列車に飛び乗ります。
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途中 列車は日高本線静内駅に二つ目型C11 182 を先頭に停車します。
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ホームの西谷の駅そば店でパンと牛乳を買おうとして失敗してしまいます。
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この店は拙著 13.新網走番外地 嵐呼ぶ知床岬で高倉健が南利明に騙され、停車中にそばを食べていて列車に置いて行かれた店としても登場しています。

その後C11 183 牽引列車が力強く上り勾配を走るシーンもあります。日高本線では 1957年に混合列車が廃止され、以来旅客列車はDC化されています。
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えりも地方からの上京を強調するイメージ付けに、当時貨物列車の先頭で活躍していた C11にオハ62等PCを特別に連結させロケしたと思われます。

東京で二人は喫茶店のウエイトレスと印刷工として暮らし、地下鉄四ツ谷駅ホームで歌詞に合わせてデートの待ち合わせをするシーンが中盤にあります。
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丸ノ内線では茗荷谷 後楽園と並ぶ地上駅です。赤坂見附より到着した先頭車は 1957年から登場の500形 717号です。(増備数があまりに多く802まで有り)

ラストシーンで、悲しい結末になってしまった ヨウコとの思い出を探しに百人浜へ行ったカズオが東京へ戻る場面にも鉄道シーンがあります。
上京時と同じ編成の列車のデッキで海の方を見ていたカズオの耳に全速で走る馬の足音が聞こえてきます。まさか!とその方を見ると・・・
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海岸近くを走る C11牽引の混合列車に沿って後方から白馬に跨るヨウコ(の様に見える)が迫って来ます。カズオは慌てて最後部のデッキへと移動します。
白馬は全力で走りますが線路沿いの道は真っ直ぐではなく、なかなか追い付けません。カズオの眼には幻とは思えず、何時までもデッキから身を乗り出しているのでした。
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 79. 錆びたナイフ

1958年3月 日活 製作 公開     監督 舛田利雄

石原慎太郎の原作。昔 起こしてしまった事件の背後に潜む黒幕に挑む男を石原裕次郎主演で描く、サスペンスアクション映画です。

鉄道シーンとしては、島原(宍戸錠)が東京から宇高(架空駅)へ悪漢をユスリに向かう場面にあります。
まず昼間に東海道本線 根府川橋梁を渡るEF58電機 牽引の列車が映ります。
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夜間の車内シーンで島原は「宇高には何時に着くか」と車掌に聞きます。
「明朝 10:35 の到着です」と答え前方へ進む車掌に、電報を依頼する男もいます。島原の動きを伝える見張り役の男の様です。

続いてコンクリート造りの立派な宇高駅舎が映り
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ホームで待ち構える勝又組の一味は島原の顔写真の確認なんぞを駅名板の下でしてます。
架空駅のロケにしては駅構内を含め大掛かりな仕立てです。{HP.想い出の和田浩治}の管理人 まゆみ様の御協力によりますと、この駅は門司だそうです。

次にC59蒸機 牽引の列車が宇高駅へ入線してきます。山陽本線からの列車ですとEF10電機牽引なのですが。
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到着した列車の3等車から島原が降りてきますが、男達に危険だからと再び乗車させられました。
「下り徳山・カワベ方面は乗換」との構内放送は、山陽本線岩国辺りの駅に到着の急行から普通列車への乗り換えを示唆しているのでしょうか。
宇高が門司とすると、東京 13:30発で門司 9:35到着の急行雲仙を想定いたのでは?と思われます。
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男達は警察の者で、勝又組が狙っているので次の駅まで保護すると島原を騙し安心させます。続いて架線下をC59牽引列車が高速で走り抜けます。
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その後男達は勝又組の本性を表し、島原を走行中の列車のデッキからすれ違うC62蒸機牽引列車に突き落してしまいます。
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関門トンネル開通時の1942年7月に幡生~門司が電化されているので、宇高駅(門司駅)構内はともかく架線下をC59が走行するシーンは何処?
幡生~下関での撮影でしょうか。続いてのデッキからすれ違う蒸機列車を映す場面は、C62牽引なので幡生以東の山陽本線と思われます。
山陽本線は映画公開の翌月 1958年4月にようやく西明石~姫路が電化。鹿児島本線の初電化も 1961年ですから、関門地区の電化区間はこの頃希少でした。

それから寺田(小林旭)が由利(白木マリ)を乗せてバイクを走らせるシーンでは、西鉄北九州本線と北方線が直角に接する魚町電停が映ります。
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バイクは北方線旦過橋方面から行き止まり終点の魚町電停を通り、右折して北九州本線沿いに小倉駅方向へと走り抜けます。
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北方線の車両は 321形でしょうか。北九州本線側は 500形の様です。この両線は軌間が違う為、接しながらも繋がっていないのです。

後半 橘(石原裕次郎)が なかなか証拠を掴ませなかった悪党の親玉 勝又(杉浦直樹)を捕まえ、留置された宇高警察署前の場面で
西鉄 1000形連接車である 1007 と 600形がすれ違うシーンがあります。
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