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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

 8、 赤い夕陽の渡り鳥

 1960年7月 日活 製作 公開  カラー作品    監督 斎藤武市

 小林明の渡り鳥シリーズ第4作  やや無国籍風の勧善懲悪 痛快アクション映画です。

 鉄道シーンは序盤 二宮靖子(浅丘ルリ子)が旧福島駅舎から降り立ってくる場面がある。 明治期建築の威風堂々たる木造駅舎でラストにも登場する。
赤い夕陽の渡り鳥1
 今となっては貴重な姿だが、撮影後建て替えとなり2年後の1962年には現在の面白味の無い駅舎となっている。

 中盤 ハジキの政(宍戸錠)が福島駅から偽装退去に準急列車に乗り込み、発車直後反対側のデッキから飛び降りるアクションシーンがある。 この列車は当時、日中 福島発唯一の客車準急である 上野行あぶくま号と思われる。

 ラスト 吾妻スカイライン開通式に滝伸次(小林明)が不在なのを知った靖子は町を去るつもりと察知し、福島駅へとタクシーを飛ばします。
 しかし到着直前 D51重連の下り列車は動き出す。赤い夕陽の渡り鳥2 (2)
地下通路からハイヒールで懸命に3番線へ駆け上がった靖子だが、無情にも汽笛と煙を残し列車は去って行った。

 駅構内には架線が張られていますが、映っているのは蒸機ばかりです。この映画は1960年5~6月に撮影されましたが、1960年3月に東北本線 白河~福島が電化 1961年3月 福島~仙台電化と丁度この頃福島駅が電機から蒸機への切り替え駅であったと推察します。 くしくも東北本線近代化真っ最中にロケが行われた訳です。

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 7、 今日のいのち

 1957年6月 日活 製作 公開    監督 田坂具隆

 北原三枝 主演の悲恋映画 

 鉄道シーンとしては、木造の常磐線取手駅舎が木製のラッチと共に出てくる。7-1.jpg
 京都迄の切符を鳥羽岳二(津川雅彦)が買うが、三等で990円。これに急行券350円が加算されると思われる。7-2.jpg
 岳二は東京駅午後10時15分発京都への最終の急行があると言うが、これは大社行 急行出雲号で翌朝8:25京都に到着する。

 琵琶湖畔で思いつめた岳二が南方理子(北原三枝)の止めるのも聞かずに、貨物列車の直前を横断するシーンがある。この列車を牽引しているのが江若鉄道のイギリス ダブス社製 1118号蒸気機関車です。7-3.jpg

 明治生まれで鉄道省時代の1937年江若鉄道に払い下げとなり、以来走り続けた老兵の力強い走行シーンが映っています。

 江若鉄道ほその後1969年10月末をもって営業廃止となり、その路線の半分以上が1974年開通の国鉄 湖西線の敷地として再利用され今に生きている。

 また京都駅で帰京する理子がホームで見送ろうとする岳二を断り、入場するシーンがあります。最初のカットでは駅の時計が22:45 とすると急行彗星号でしょう。 
 しかし改札直前のシーンでは23:05 なので急行月光号に乗車とも考えられますが、ホームでのシーンが無い為分かりません。

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 6、 東海道非常警戒

 1960年12月  新東宝 製作 公開    監督 山田達雄

  特急こだま車内から昨今話題のオリンパスの社長令嬢が誘拐され、山内刑事(宇津井健)を中心に追跡する刑事ドラマ。 全編に渡って東海道本線の列車が登場している。

 冒頭 神戸始発の特急第一こだま号で帰京する山内刑事のシーンがあるが、1958年11月デビューの特急こだま号に神戸始発便があったのは1961年9月末まで。東京駅に到着するシーンもあります。6-2.jpg
 劇中のパーラーカー クロ151が付いた,こだま号神戸便は1960年6月~1961年9月の短期間でした。

 中盤 雑誌記者 中西京子(小畠絹子)が犯人の一人から車で泥水をかけられるシーンでは川崎市電が横を走っている。
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 終盤 誘拐した娘を連れた犯人一味は車で逃走し、沼津から長崎行急行雲仙に乗り込む。その後有名な由比~興津の海岸沿いをEF58牽引で快走するシーンが入る。6-5.jpg


 その後 浜松で下車し
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車に乗り替える際 背後に遠州鉄道新浜松駅停車中の電車が映っている。

 ラスト 東京駅で山内らが鉄道公安官の友人が乗る神戸行特急第二こだま号を見送るシーンでは、先頭のクロ151パーラーカーの区分室と続く片側1席のシートが並ぶ車内がチラリと映っている 下の写真に写っている出入り口は1号車パーラーカーの区分室と開放室の間にある出入り口です。6-9.jpg
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  5、 刺青一代

 1965年11月 日活 製作 公開  カラー作品    監督 鈴木清順

 昭和初期の裏日本地方 とある港町を舞台に高橋秀樹 主演による任侠映画。

 鉄道シーンは、とある港町ということもあり銚子電鉄を使い電車以外のデキとハフが随所に出てくる。そして撮影時ポール集電だったデキ3ELにハフ2客車を引かせて、昭和初期のローカル私鉄の雰囲気を出そうとしている。5-1.jpg


 撮影場所としては主に木造駅舎の仲ノ町駅を中心に、ヤマサ醤油の工場が映らない様に数カットある。
 とくに出入りの場面では、未だ停車前の客車から次々飛び降りるアクションシーンを広い構内を俯瞰しながら映している。
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 また本銚子駅付近の切通し区間の走行シーンもあるが、昔風の外川駅を何故か使わないのは残念に思う。

 本線走行するポール時代のデキ3と手動ドアで半木製2軸客車ハフ2の走行シーンをカラーで今に残す一品である。
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