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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

381.密航0ライン

1960年6月  日活 製作 公開   監督 鈴木清順

グレーな取材方法で 特ダネを掴む 極東新聞の記者 香取耕一(長門裕之)が、密輸ルートである 香港~東京0ラインの 実体解明に挑む アクション映画です。

香取は麻薬密売組織の摘発記事の為 元同級生 佐伯(河合健二)の妹 令子(中原早苗)と関係を持ち、情報屋の季鮮信(小沢昭一)からの取引情報を 刑事の千葉伸次(高品格)に伝えて 逮捕場面を撮影し 特ダネを取得します。

労務者に変装した香取・情報屋と共に 刑事が川に停泊している小舟を見張り、
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合図と共に 応援の警察官と 一斉摘発に掛かりました。背後にある 川沿いの高架線を、京浜急行電鉄の 新旧電車が走っています。
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遅れて到着した ライバル紙 日東新聞記者で 香取の親友 仁科達男(小高雄二)は、目前で佐伯が証拠隠滅の為 自殺したのを見て 香取の取材方法を 激しく非難するのでした。

その後 香港~東京0ラインの元締め 新華貿易公司の社長 劉に会いにいったまま 姿が消えた香取が、密輸船に潜入したと思った仁科は 北陸の港に向かいます。

C62形らしき 蒸機牽引列車が映り、
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二等車に 仁科が乗っています。
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そして 新潟・柏崎・
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直江津・富山と、信越・北陸本線沿線の駅が映り 各地の港を尋ねます。
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それから次の駅でホームを歩きますが、

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そこは敦賀駅でした。
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更に列車を乗り継ぎ
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降りた街の酒場で 雪子(初井言栄)と知り合い、金で手引きしてもらい 香港へ向かう船に 密航者として潜り込むことが出来た様です。
ところが船には 令子が乗っていて 仁科は正体をバラされ 船底の石炭倉にブチ込まれますが、そこには既に 香取が収容されていました。






PS.
  1枚目の画像は 労務者に変装した香取が 情報屋と歩く背後を、京浜急行電鉄 日ノ出町~黄金町の 高架区間を走る電車が映っています。

  2枚目の画像で走行しているのは、不鮮明ですが500形電車でしょうか。

  3枚目の画像では 230形と電装解除した 120形らしき、一時代前の 小型車輛が映っています。

  4枚目の画像は 常磐線を走るC62形蒸気の画像として、昔 見た様な気もします。(先ず新潟を目指した筈が、まさか磐越東・西線周り?)

11枚目の画像で 乗換案内板に、1963年に休止・翌年廃止された 柳ケ瀬線が表示されています。
  1957年 北陸本線の木ノ本~敦賀の新線開通に伴い 旧線となった疋田~敦賀を 柳瀬線として残しましたが、予想通りの超赤字線で 僅か6年で 運行停止となった柳ケ瀬線の 短い現役時代に ロケが行われた様です。

  また 1961年6月の 北陸トンネル開通前なので、敦賀の右隣駅が新保です。話に聞いた 北陸本線一番の難所である、杉津越えのある 旧線時代なのが印象的です。

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274.愛と希望の街

1959年11月 松竹 製作 公開   監督 大島渚

買い手が逃がすと元の巣に戻る鳩の帰巣本能を利用して繰り返し売っては生活費を稼ぐ少年が、善意で買ってくれた少女と本作のタイトルを裏切ることになる社会派映画です

冒頭 国鉄川崎駅東口に出来たばかりの「駅ビルかわさき」と、広場の先に在る京浜川崎駅(現.京急川崎)から続く京急本線は高架前の地上線です。
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その川崎駅東口前で武田正夫(藤川弘志)が、靴磨きのおばさん達の横で鳩を売っています。そこへ京子(富永ユキ)が通り掛かり、2羽の鳩を正夫から買います。

正夫は帰り道で玉子や野菜の他に文具を買って妹 保江(伊藤道子)が一人遊びをしている線路端へ行き、画用紙とクレヨンを渡してあげます。
誰かの銅像がある横の側線には DD12形内燃機らしきが停車していて、横の本線を C11形蒸機らしきがバック運転で通過して行く様子が映っています。
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家で秋山先生(千之赫子)と進路相談をした後、正夫は市役所通りを京急線の踏切まで先生を送って来ました。
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踏切を越えた所で別れようとした時、京子と偶然会います。
その時 踏切が閉まり、230形らしき3連が通り過ぎて行きます。
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MIYAと看板の一部が映り背後の角地に建つのは、1951年新築の小美屋百貨店です。(現.川崎DICE)

その後 京子は父と兄が勤める東洋精器に正夫の就職を頼み、先生共々応援したが不合格となってしまう。皆 憤慨するが、兄は正夫の鳩を使った詐欺行為が原因だと告げる。
京子が返した鳩を正夫が再度駅前で売るのを見掛けると、怒って又もや買取り「もう鳩は戻らない」と言って閉まりかけた踏切を無理やり駆け抜けて行ってしまいます。
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そのあとを 700形らしき電車が2連で通過して行きました。
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PS.
   本作公開の7か月前に完成した民衆駅「駅ビルかわさき」(現.アトレ川崎)は、前回ブログ(273.どぶ)の作品内で木造駅舎として映っている東口駅舎から激変しています。
   京急本線の高架化が完成したのは 1966年12月なので、それまで作中の様に踏切警手が操作する第一種手動踏切が活躍していました。

   保江が遊んでいた所は高圧配電線併設の電化された本線ながら、C11形蒸機も活躍し 側線は非電化 そしてアメリカ軍の置き土産 DD12形内燃機も在ります。
   川崎近郊でこんな所は何処なのか? ガスタンクが映る別場面もあるので鶴見線安善駅近くと思われ、品川区の DD12が米軍貨物輸送に出張していたそうです。

本作は大島渚監督デビュー作ですが、松竹幹部に変えられたタイトルには最後まで納得がいかなかったと後年まで語っていたそうです。

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 233. 狼

1955年7月 近代映画協会 製作 公開   監督 新藤兼人

収入に困り 生命保険勧誘の仕事に挑んだ人の良い5人が夢破れ、生活に行き詰って現金輸送の郵便車を馬喰坂で襲う成り行きを描いた社会派映画です。

東洋生命では面接で 応募者全員が試用外務員として合格採用となります。半年間は月千五百円支給されますが 、この半年以内に合計五百万円の保険契約を勧誘出来ないと正社員になれない規則です。
戦争未亡人の矢野秋子(乙羽信子)達 22人は全員 池袋支社の所属となり、初出勤の日 都電3000形らしき電車が支社前を走る道路を秋子が歩いて行きます。

営業課長(三島雅夫)は なけなしの金をギャンブルにつぎ込む貧乏人等を的に勧誘しろと言いますが、予想通り殆ど契約は取れず 辞める仲間が続出して最後は5人となって全員クビとなります。
そして明日からの生活に行き詰った5人は、元自動車修理工の三川義行(殿山泰司)が提案した 現金輸送車襲撃計画に賛同して 取りあえず現地へ下見に出掛けます。

大きく右カーブしたホームへ京浜急行電鉄 デハ420形らしき浦賀行 2連電車が、大きなカントで傾いた車体を停車させます。
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ドアが開くと、5人のメンバーが降りて来ました。
改札口へ向かうべく前方の構内踏切方向へ歩いて行く先に、谷津坂の看板がチラリと見えます。
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谷津坂とは 1982年に現 能見台へ改称された駅名です。
1969年に現在地へ移転しているので、ホームの様子は現状とは まるで違います。地名は犯罪映画なので、谷津坂を馬喰坂として設定した脚本と思われます。

決行の日 三川が外車のビュイックを盗み出し、秋子と同じく未亡人の藤林富枝(高杉早苗)・元銀行員の原島之男(浜村純)を乗せて横浜へ向かいます。
そして 1928年竣工の横浜駅3代目駅舎が建つ東口前で、
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元映画脚本家の吉井房次郎(菅井一郎)を拾って 下見をした馬喰坂へと車を走らせます。

計画通り 郵便車から金を奪い、運転手達3人をトランクに押し込んで 正丸峠を目指します。その途中 原町田付近で踏切に引っ掛かり、暫く停車します。
脇の派出所の警官(下條正己)にジックリと車内を見られ、一同冷や汗が噴出し ドキドキです。当時は遮断機の無い第三種踏切の様で、横浜線の 40系電車らしきが高速で通過して行きます。
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人の良い5人は正丸峠付近で3人を無事解放し、更に交通費まで渡します。そして立川付近の草地に車を捨て去り、一人7万円を山分けして別れたのです。
夕刻 鶴見線の安善駅から三川が降りて来て 自宅へ向かって歩き出すと、
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昔の仲間に声を掛けられます。ドキッとする三川ですが 懐が暖かいので、千円をカンパした上 飲み屋で奢るのでした。

原島は帰宅すると 折り合いの悪い女房に、手切れ金として6万5千円を渡して別れます。そして駅近くの屋台で夜遅くまで深酒して、それまでの憂さを晴らすのでした。
多目に支払った後 フラフラして線路端で戻してしまう原島ですが、背後ではC50形らしき蒸機が入換作業をしている様です。この辺りの雰囲気、池袋貨物駅辺りでしょうか?
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