日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

 233. 狼

1955年7月 近代映画協会 製作 公開   監督 新藤兼人

収入に困り 生命保険勧誘の仕事に挑んだ人の良い5人が夢破れ、生活に行き詰って現金輸送の郵便車を馬喰坂で襲う成り行きを描いた社会派映画です。

東洋生命では面接で 応募者全員が試用外務員として合格採用となります。半年間は月千五百円支給されますが 、この半年以内に合計五百万円の保険契約を勧誘出来ないと正社員になれない規則です。
戦争未亡人の矢野秋子(乙羽信子)達 22人は全員 池袋支社の所属となり、初出勤の日 都電3000形らしき電車が支社前を走る道路を秋子が歩いて行きます。

営業課長(三島雅夫)は なけなしの金をギャンブルにつぎ込む貧乏人等を的に勧誘しろと言いますが、予想通り殆ど契約は取れず 辞める仲間が続出して最後は5人となって全員クビとなります。
そして明日からの生活に行き詰った5人は、元自動車修理工の三川義行(殿山泰司)が提案した 現金輸送車襲撃計画に賛同して 取りあえず現地へ下見に出掛けます。

大きく右カーブしたホームへ京浜急行電鉄 デハ420形らしき浦賀行 2連電車が、大きなカントで傾いた車体を停車させます。
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ドアが開くと、5人のメンバーが降りて来ました。
改札口へ向かうべく前方の構内踏切方向へ歩いて行く先に、谷津坂の看板がチラリと見えます。
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谷津坂とは 1982年に現 能見台へ改称された駅名です。
1969年に現在地へ移転しているので、ホームの様子は現状とは まるで違います。地名は犯罪映画なので、谷津坂を馬喰坂として設定した脚本と思われます。

決行の日 三川が外車のビュイックを盗み出し、秋子と同じく未亡人の藤林富枝(高杉早苗)・元銀行員の原島之男(浜村純)を乗せて横浜へ向かいます。
そして 1928年竣工の横浜駅3代目駅舎が建つ東口前で、
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元映画脚本家の吉井房次郎(菅井一郎)を拾って 下見をした馬喰坂へと車を走らせます。

計画通り 郵便車から金を奪い、運転手達3人をトランクに押し込んで 正丸峠を目指します。その途中 原町田付近で踏切に引っ掛かり、暫く停車します。
脇の派出所の警官(下條正己)にジックリと車内を見られ、一同冷や汗が噴出し ドキドキです。当時は遮断機の無い第三種踏切の様で、横浜線の 40系電車らしきが高速で通過して行きます。
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人の良い5人は正丸峠付近で3人を無事解放し、更に交通費まで渡します。そして立川付近の草地に車を捨て去り、一人7万円を山分けして別れたのです。
夕刻 鶴見線の安善駅から三川が降りて来て 自宅へ向かって歩き出すと、
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昔の仲間に声を掛けられます。ドキッとする三川ですが 懐が暖かいので、千円をカンパした上 飲み屋で奢るのでした。

原島は帰宅すると 折り合いの悪い女房に、手切れ金として6万5千円を渡して別れます。そして駅近くの屋台で夜遅くまで深酒して、それまでの憂さを晴らすのでした。
多目に支払った後 フラフラして線路端で戻してしまう原島ですが、背後ではC50形らしき蒸機が入換作業をしている様です。この辺りの雰囲気、池袋貨物駅辺りでしょうか?
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