日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

203.白線秘密地帯

1958年9月 新東宝 製作 公開   監督 石井輝男

殺人事件に端を発した秘密売春組織 SSS に対する 田代刑事(宇津井健)をはじめとする 警察との攻防を描いたセミドキュメンタリータッチの映画です。

全編 71分の映画でしたが フィルム欠損に依り 56分しか現存しません。それ故 話しがチョコチョコ飛んで 見苦しい所もありますが、歴史的映像も含まれています。
松崎(九重京司)は特殊浴場で みどり(吉田昌代)を絞殺した際、現場に秘密組織の顧客用回数券を落としてきたことから警察と秘密組織の双方から追われます。

街角で松崎は組織の フックの鉄(佐伯一彦)と伍東(菅原文太)に拉致され、独特の架線柱の有る小田急電鉄 多摩川橋梁下らしき河辺に連れて行かれました。
203-1-2.jpg
鉄橋上から電車の走行音が近付くと、命乞いする松崎に伍東は非情にも拳銃を打ち込み殺害します。通過電車は希少な小田急 1500形(初代)と思われます。
203-2-2.jpg

初代 1500形は帝都電鉄 200形・500形車両として生まれ、大東急時代の 1947年井の頭線から小田原線に転属し 1950年にデハ 1501とクハ 1551 となった2両だけの希少車です。
その後1960年に 1900形同様の車体に更新され、以後 1900形へと編入されました。この映画の中で一瞬現れる 1500形の走行シーンは、偶然と思われますが貴重な姿です。

中盤 ころがしの政子こと宇田川政子(荒川さつき)は、職安から出てくる若い女を品定めして山﨑志津江(葉山由紀子)に声を掛けます。
「ドライブクラブの事務員として貴方の様な人を捜しているの。気楽な仕事で案外実入りが良いのよ」とアイス屋からアイスを買い与えながら勧誘します。
背後では都電 7000形が、暑いので前面ガラスを開けて走っています。 15番系統車両ですので、高田馬場駅前~茅場町の路線です。ロケ地は飯田橋でしょうか?
203-3-2.jpg

ころがしの政子の行方を追った捜査員は、村松不動産付近に出没する情報を掴みます。村松不動産から出てきた若い女に、すかさず政子が近付いて話し掛けています。
そこへ左方から都電らしき車両がやって来ました。暑いのか全ての窓が開けられています。車体中央には 175と記されていますので、元王子電軌の 170形車両です。
203-4-2.jpg
1927年に製造され、車体更新を受けた後の姿と思われます。元王子電軌の路線である 27.32系統専用で1968年まで活躍し、現在この車両は 三和テッキ(株)宇都宮工場にて静態保存されています。
203-5-2.jpg

終盤 捜査が進展し、秘密組織の拠点が次々に摘発されてゆきます。そして田代は同僚と共に、フックの鉄と伍東を尾行して勝鬨橋から有明地区へと追って行きます。
とある鉄橋から単線の線路を歩いてくる二人組を、田代達は橋の袂から現れ尾行を続けて行きます。背後の特徴あるこの橋は、後述の地点から東京都港湾局専用線の晴海橋梁と思われます。
203-6-2.jpg

続いて田代は同僚に本部への連絡を頼み、一人で尾行を続けます。そして閉まりかけた踏切へと駆け込みます。背後には、豊洲埠頭の東京電力新東京火力発電所の煙突が見えています。
203-8-2.jpg
そこへ左方から汽笛を鳴らしてステップに操車掛が乗った、ハチロク形蒸機らしきが牽引する貨物列車が通過して行きました。まだ国鉄が仕分・入換作業を担当していた末期の様子です。
203-7-2.jpg

それから 広大な豊洲石炭埠頭に延びた港湾局深川線を舞台に、秘密組織と応援隊も加わった警察の迫力ある銃撃格闘アクションシーンがあります。
203-9-2.jpg

203-10-2.jpg
東京都港湾局専用線はその後トラック輸送への転換等によって順次廃止となり、1989年2月 最後の晴海線の廃止をもって全廃となりました。しかしロケ地となった晴海橋梁は遺構としてか、残されています。



PageTop