日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

186.神々の深き欲望

1968年11月 日活 配給 公開  今村プロ製作  カラー作品   監督 今村昌平

古い因習が残る 南海に浮かぶ架空の離島 クラゲ島で、太根吉(三國連太郎)一家が信仰心と近代化のハザマで悲劇に至る過程とその後を描いた映画です。

製糖会社の技師 刈谷(北村和夫)が水源開発に来島し、都会に憧れる太亀太郎(河原崎長一郎)を助手にします。仕事が進まない中 亀太郎の妹 トリ子(沖山秀子)に溺れるも、社命で帰京します。
その後 悲劇が起こり、5年後 刈谷が妻(扇千景)と義母(細川ちか子)を伴い再び島を訪れる終盤に鉄道シーンが有ります。

島を訪れた刈谷達 観光客一行は島の実力者で地区長でもある竜立元(加藤嘉)の案内で、観光列車の乗り場へと歩いて来ました。
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一行の横へ1号蒸気機関車が先頭となり客車や貨車を牽いて、観光列車が亀太郎の運転でゆっくりと到着しました。傍らでは傷痍軍人のイザリ 里徳里(浜村純)が蛇皮線を弾きながら島唄を唄っています。
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蒸機の前ではスーツ姿の米国人らしき二人が、連れの男に記念写真を撮ってもらっています。
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そして一行は蒸機の次に連結された木造客車にオープンデッキから乗車しました。
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刈谷は乗らずに蒸機の足回りに給油している亀太郎の所へ行き、「どうして島に帰ったんだ」と聞くと「東京にいるとバラバラになりそうで自分が自分でないような」と呟いて島の生活の方が合っている様です。
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次に砂糖キビ畑の中を走る観光列車の姿が映ります。
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続いては走行中の車内。珊瑚礁が連なる海沿いを走っていると刈谷の妻が「アラ変わった岩だこと」と言うと竜立元が「あれは昔 帰らぬ恋人をを待ち続けた女の化身という言い伝えです」と説明します。
すると一緒に乗り込んだコカ・コーラ売り女で里の妻 ウト(中村たつ)が「トリ子岩ちゅんじゃ。実際あった話じゃ ついこの間」と言うので、「昔語りと現実の区別がつかんのであります」と困り顔です。

更に列車が砂糖キビ畑の中を進むと、運転する亀太郎の目に前方の線路を走る妹 トリ子の姿が入ります。
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死んだ筈のトリ子は楽しそうに時折飛び跳ねながら、線路の真ん中をゆっくりと走って行きます。
亀太郎はキャブから身を乗り出して「トリ子~!」と叫びますが、トリ子は聞こえないのかそのまま走ります。トリ子は砂糖キビの葉を手に、亀太郎が心配しているのを分かっていて前を走っているようです。
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なおも亀太郎が「トリ子~!」と叫び続けると、突然トリ子はこちらを向いて立ち止まりました。亀太郎は急制動を掛け 客車内も動揺しますが、間に合わずトリ子を轢いてしまった様です。
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停止後 亀太郎は飛び降りて 前方や足回りを探しますが、幻影だったのかトリ子の姿は何処にも見えません。驚いて降りてきた刈谷に謝罪すると、汽笛を鳴らして運転を再開する亀太郎でした。
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この映画は石垣島でのロケでしたが、最後の場面に蒸機列車が欠かせないので南大東島でロケが行われました。ところが現地 大東糖業では3年前に最後の蒸機が引退し、全てDL化されていたのです。
そこで 1964年1月に廃車となった独 ヘンシェル社製1号機関車をペンキ塗りして、細断した古タイヤを燃やして黒煙を出して客車の後ろからDLで押してロケが行われたそうです。

その後この1号機関車は沖縄本島で第二の活躍をする話しで送られましたが、計画頓挫となって野ざらしで朽ち果て 現在 足回りだけが公園で保存されています。
南大東島では 1983年に鉄道が廃止となり、2号蒸気機関車とDL・客車・貨車が立派な施設で静態保存されています。

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