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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

157. 女

1948年4月 松竹 製作 公開   監督 木下恵介

SKDのダンサー 林敏子(水戸光子)は腐れ縁の恋人 町田正(小沢栄太郎)に何かと振り回されていましたが、とことんワルな町田と決別して再出発を決意するまでを描いた映画です。

ある日敏子の仕事場へ訪ねてきた町田から「明日朝一番の列車で箱根湯本へ来る様に」と言われます。翌朝 敏子は東海道本線に乗り、先ず小田原を目指します。
未だ薄暗い中 EF57 らしき電機牽引列車が迫り来るシーンと横から映したシーンが有り初期型のEF56 6が牽いて列車は小田原駅へ到着しました。
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敏子は下車して足早に箱根登山鉄道へ乗り換え、車内で隣に座る男の新聞で (三人組覆面強盗現る) のニュースを知ります。
続いて箱根湯本駅へ到着する チキ1形1が映ります。
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1919年の小田原電気鉄道 鉄道線開業時から走る、箱根登山鉄道 最古参の車両です。
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ダブルルーフの木造車体にバッファー付きリンク式連結器と、新製時のクラシックスタイルのまま走る姿は貴重な記録と思われます。
1950年 小田急乗り入れ時に鋼体化改造され、連結器も密着式へ取り換えたので改造直前のタイミングでロケが行われたのです。
この車両はその後 モハ1形 101と改番 晩年は 102と2両固定編成となり長く活躍しましたが、惜しまれながら 2002年廃車となりました。
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さて遠路駆け付け この後温泉へ向かうものと思っていた敏子に町田は、「これから浜松へ行くぞ」と告げ 敏子を唖然とさせます。
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小田原駅 下り列車を4番ホームのベンチで待つ間、町田は強盗事件の新聞記事を敏子に見せてニヤつき 敏子は町田の仕業だと確信します。
そこへEF13 1電機が牽く列車が到着しました。
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その後の走行シーンでは、EF57 電機も登場します。敏子は町田から逃れる術を考えている様子です。
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列車が有名な根府川の橋梁を渡る際、列車の横から上から下から橋梁が主役であるかの様に克明に映しています。
そして列車が真鶴駅へ到着する寸前 敏子は意を決したかの様に駅のホームへ飛び降り、勢い余ってバッタリ倒れてしまいます。
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それを見た町田も飛び降り、敏子の元へ駆け付けます。迫真の演技ですが、発車直後ではなく到着直前だったのが謎ですね。
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こうして敏子は町田からの逃避に失敗し 二人共真鶴で途中下車することになり、ヒッチハイクで熱海へ向かい一騒動となるのです。

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148.ミヨちゃんのためなら全員集合

1969年12月 松竹 製作 公開   カラー作品    監督 渡辺祐介

零細 漢方薬製造会社 経営の伊刈長吉(いかりや長介)は女房・従業員に逃げられるも、加藤ヒデオ(加藤茶)や高校時代の恩師の妹 花山美代(倍賞美津子)の助けでもち直すコメディ映画です。

鉄道シーンは終盤 従業員も元に戻り会社がもち直すが、伊刈の恩師 花山大造(ハナ肇)が街を出る場面にあります。
夜遅く、薄暗い日ノ出町駅(架空駅)で
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花山は東京迄の切符を買い求めます。妹 美代と改札を入ると突如 音楽が流れ、駅長室の方から学ラン姿の伊刈達が「ホタルの光」を演奏しながら現れます。
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ホームも日ノ出町駅として装飾してありますが、独特の古いコンクリート部分と木造の駅舎は 箱根登山鉄道 旧強羅駅と思われます。この駅は、1977年4月 現在の山小屋風駅舎へと改築されました。
そして箱根登山鉄道 モハ1形 102を先頭に電車が到着します。
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「ミヨちゃん」が演奏される内 花山と美代が乗り込み、見送りを受けます。
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22:30 最終の日ノ出町発 大河原行電車は 102を後部に警笛と共に消えて行きました。改札口からは、側線にモハ1形 101の姿が見て取れます。
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伊刈達が改札口から出てくる上には、本物の最終電車の時刻 次は 22:15と表示されています。この電車は小田原行で、23:00の到着です。運賃は 120円!でした。

箱根登山鉄道 モハ1形 102は 1919年製造され、主力電車として活躍 その後 101と102が組み走行 2002年2月末をもって引退しました。
また日ノ出町駅は京浜急行電鉄に実在しますが、架空の駅名に何故それ程離れていない実在する駅名を使ったのか不明です。

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