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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

260.ふたりのイーダ

1976年11月 公開   製作 配給 ふたりのイーダプロダクション  監督 松山善三

雑誌記者でシングルマザーの相沢美智(倍賞千恵子)が幼い兄妹を連れて実家へ帰った折、兄妹が廃屋で生き続ける謎の椅子と交流するファンタジック ミステリー映画です。

東京駅から東海道新幹線ひかり号に乗った 美智親子に、発車直前 美智の同僚カメラマン広岡研二(山口崇)が駅弁3個と雑誌を手渡します。駅弁は当時としては高額の、特別ランチ700円です(うなぎ弁当でも700円でした)。
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そこには美智へ宛てた手紙も忍ばせてありました。
0系新幹線の走行場面が映った後
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車内では、兄の直樹(上屋健一)と妹のゆう子(原口祐子)が入口の自動ドアで遊んでいます。
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一方 美智は広岡からの手紙で、後から両親に挨拶に来ることを知ります。
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続いてキハユニらしき合造車を先頭にした、気動車4連列車の走行シーンが映ります。
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花浦駅(架空駅)ホームでは、美智の両親 須川利一郎(森繁久彌)と菊枝(高峰秀子)が出迎えに来ています。
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やがて菊枝が列車に気付き須川と一緒に手を振ると、列車の2両目 キハ20形に乗る親子も窓から身を乗り出して帽子を振って応えます。
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そして菊枝が日傘を振る花浦駅へ、列車は到着します。
廃屋で出会った不思議な椅子は、兄妹だけの前で動き 喋るのでした。

次に 広島へ墓参りに出掛ける一家は、DC列車に乗っています。260-10.jpg
美智は原爆ドームの前で、広岡と待ち合わせていたのです。
車内では、直樹の機嫌が良くない様子です。続いて キハ58系らしき、急行形気動車3連の走行シーンが入ります。
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須川が直樹に問いただすと、「じいちゃんは信用しないんだろうけど、椅子は動くんだ」と応えます。
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PS.
   東京駅の放送で美智親子が乗った列車は、ひかり 130 番台の列車であると発車案内が聞こえます。当時の時刻表では広島行の ひかり号で、時間帯から東京 11:24発ひかり 131号広島行と思われます。

   しかし実家の場所は花浦駅が架空駅なので、広島県内の何処か分かりません。その後 広島へ行く時 気動車に乗るので、芸備線沿線を想定したのだろうと思われます。

   ひかり 131号の広島到着が 17:04 芸備線へ乗り換えですが、17:06発 812D 急行たいしゃく2号 新見行は接続不可能なので 17:51発 840レ三次行となりますが DE10形内燃機がオハ35旧客を牽く列車なので当てはまりません。
   当時の新幹線では博多行速達タイプでも広島まで 5時間8分かかっていたので、昼近くに東京を出たのでは本編の様な時間帯に着くのは不可能と思われます。

   架空の花浦駅到着前の画像で親子が乗っているのはキハ20 342で、サボは(岡山⇔津山)と津山線の列車でロケが行われた様です。その後 3RT生 様からのコメントで、花浦駅は津山線の玉柏駅でロケが行われた様です。

   祖父母と親子5人で広島へ向かう急行形気動車を想像すると、芸備線 向原 9:17発 811D急行たいしゃく1号に乗って 10:01広島へ到着した様に想定したのでは?(6枚目の画像で1つ先の駅がむこうはら{芸備線の実在駅はむかいはら})

映画の鉄道シーンで記憶に残るのは見送り場面ですが、今回は出迎え場面のある映画を5本特集してみました。本作は当ブログとしては新しい方ですが、孫を出迎える祖父母の姿が印象的なのでトリに選んでみました。

   

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190.恋のハイウェイ

1967年3月 日活 製作 公開  カラー作品   監督 斎藤武市

母親の生活態度に嫌気がさして上京した梶若葉(吉永小百合)が、旅雑誌社のカメラ記者としての活躍を描くコメディ青春映画です。

鉄道シーンの最初は若葉が上京する折、先ず東海道新幹線が富士山をバックに富士川橋梁を渡る場面があります。
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東北新幹線の第一北上川橋梁が完成するまでの間、日本で一番長い鉄道橋でした。
写真大学の同級生 森道夫(関口宏)のツテで旅雑誌社に就職した若葉は、初仕事として神戸の小説家 伊吹年之助(金子信雄)の所へ向かいます。

この時 幼なじみで上野動物園で飼育係をしている柳金次郎(新克利)が東京駅の新幹線ホームまで見送りに来てくれました。
柳は若葉の白いスーツケースを乗車口まで持って来て、名残惜しそうに渡しました。若葉は0系新幹線 7号車デッキに乗りますが、隣の車両は何故か9号車と標示されています?間違いでしょうか。
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画像の上側は当時の東海道新幹線こだま号の標準編成図の中央部分です。この頃は12両編成の内 1~7号車を二等自由席車として、8号車を必ず一等車にして9~12号車を二等指定席車にしていました(5・9号車は半車ビュッフェ)。
ところが7番目の車両が一等車で、8番目が二等車として編成した こだま号も先に存在していたのです。そこで下側の編成図の様に7番目の車両を8号車としたので、8番目の7号車の隣が9号車になったのだと思われます。
ひかり号とこだま号が共通編成であった開業時の様にひかり号編成を使ったこだま号の場合、7・8号車共に一等車なので7号車を一等自由席車・8号車を一等指定席車としたので問題ないのです。

続いて京阪神急行電鉄神戸本線 芦屋川駅へ到着する 950形の姿が映ります。後ろに続く中間車は 920形でしょうか。この駅から若葉は、伊吹宅を尋ねますが不在でした。
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中盤 若葉の父親の所在を知る伊吹に同行して、三重県志摩へ行く場面があります。近鉄二代目ビスタカー 10100系の走行シーンの後、二階席に若葉と伊吹が並んで座っています。
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父親に会った帰りは同じ場所で反対方向への 10100系の走行シーンの後、
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二階席に一人で座る若葉がいます。そこへバンドメンバーの左近鉄兵(花ノ本寿)が現れ、シートピッチ 920ミリの狭い所を跨いで空いてる窓側に座ります。

そして左近の件で友達の家を追い出された若葉が、終電近く 柳の家を頼って駅を降りてくる場面があります。考え事をしている若葉は改札をそのまま通り過ぎ、「お客さん 切符」と言われてしまいます。
ロケが行われたこの駅は、京王電鉄の 2010系らしきが停まっている終端型の駅であることから府中競馬場前駅かもしれません。
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更に会社の受付係 浜野節子(山本陽子)の家からも森との関係を誤解されて追い出された若葉は、又も終電近く 柳の家を頼って駅から降りてくる場面があり 同様に改札を抜けて注意されます。
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終盤 若葉は節子の誤解を解くべく柳を自分の許婚として偽り会社内に紹介し、森と節子の仲を取り持つのでした。 そして今後のことを相談しに大阪の母親の元へ向かうことにします。
東京駅から新幹線に乗る若葉は、またしても柳の熱い見送りを受けるのです。2面4線と初期の東京駅新幹線ホームから発車して行く0系の姿を有楽町側から映した場面が続きます。
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最後は柳への愛情に気付いた若葉が再び上京して柳の元へ向かう折、アップで走り去る0系新幹線の走行シーンに続いて最初と同じ富士川橋梁を渡る場面があります。
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 144. 国際秘密警察 火薬の樽

1964年12月 東宝 製作 公開  カラー作品   監督 坪島孝

世界征服を目論む世界統一同盟に対抗する、国際秘密警察の一員 北見次郎(三橋達也)の活躍を描くアクション映画です。

世界統一同盟に誘拐された竜野博士(田崎潤)の救出へ向かう警視庁の柳生警部(佐藤允)と、博士の娘 華代(星由里子)・博士の助手 宮地(二瓶正也)の三人が新幹線に乗っているシーンからスタートです。
開通して間もない東海道新幹線0系の走行シーンの後、二等車三人掛けシートに柳生を中心に座っています。
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三人が乗る超特急ひかり号が豊橋駅を通過するシーンの後
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車内に爆弾を仕掛けたとの電話が警視庁にあった旨の緊急電話があり7分後には爆発との内容です。
柳生は華代が顔を知っている同盟メンバーが乗っていると思い、車内を捜すと
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ビュッフェで見付かり柳生と格闘になります。壁の時計は 11:15
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そして男を捕えますが、男は自決してしまい爆発時刻が迫ります。しかし爆弾の遠隔装置は解除され、予告時刻より3分経過しても何事も無く車内は喜びに沸き立ちます。
時刻は 11:20 入口横の速度計は 210km辺りを差し、反対側入り口上には現在地計が有り 豊橋辺りを差しています。この格闘シーンの為、セットを組んで撮影したと思われます。

舞台となった超特急ひかり号は豊橋駅を通過後 11:15だったので、東京 9:00発 名古屋 11:27着の 7Aㇾひかり7号と思われます。
ロケ当時は東京~新大阪 4時間運転時代で、名古屋迄も 2時間 27分掛かり爆弾騒動が終わっても未だ名古屋に着かないのです。開業一年後から 3時間10分運転となりました。

事件は解決し、ラストシーンは東京駅丸の内口です。東京中央郵便局をバックに東京ステーションホテル入口前で、同盟メンバーの6号 ルミ(水野久美)が当局に引き渡されます。
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そして北見が皆に別れを告げ、駅前広場から都電方面へと歩き出したところでエンドマークとなります。旧新丸ビルをバックに走る6000形らしき都電は 28・31系統の何れかです。
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28系統は錦糸町~都庁前 31系統は三ノ輪橋~都庁前で東京駅丸の内口前を走っていましたが、この映画公開の5年後 1969年には共に東京駅前から姿を消しました。
現在ではこの映画に映っている建物全てが、建て替え又は復元リニューアルされて変わっています。

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