日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

135. 愛と死の記録

1966年9月 日活 製作 公開   監督 蔵原惟繕

レコード店員 松井和江(吉永小百合)と印刷会社工員の三原幸雄(渡哲也)が恋仲となるも、三原の病気が二人を裂き悲しい結末へと向かう青春映画です。

序盤 三原と和江・三原の同僚 藤井(中尾彬)と ふみ子(浜川智子)が其々バイクに二人乗りでWデートに出掛ける場面で、呉線沿いの国道を走るシーンがあります。
呉線 坂~小屋浦(現在では間に水尻駅があります)の美しい海沿い区間を嬌声を上げながら走る二組のバイクを、C59161蒸機牽引の列車が高速で追い越して行きます。
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当時 糸崎区所属で客車7両+荷物車を平坦路線区間なので、軽々と高速で牽いて行きます。呉線の有名撮影地でもあるこの区間を走るC59の姿は貴重ですね。
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この C59 161機は戦後生まれで山陽本線一筋に全線電化迄走りました。呉線へ転じた後も状態が良いのかC59形最後の3両まで残り、呉線電化の時 蒸機さよなら列車として装飾した急行安芸を牽きました。
現在では広島原爆ドームからも近い、こども図書館に移設 静態保存されています。

中盤 和江が鉄道橋と並行する幅の狭い人道橋を雨に濡れながら歩いています。遠く背後で三原がバイクを降り、走り寄って来ました。左手の線路を黒煙を吹き上げる蒸機が近寄って来ます。
追い付いた三原が「バカじゃのう バカじゃ」と言うなり、和江を抱きしめます。猛然と黒煙を吹き上げ轟音と共に鉄橋を渡りながら近付く C58形らしき蒸機列車。
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一転 線路の向こう側から二人の姿をカメラが捉えると、C58に牽かれた列車が左から二人を覆い隠して行きました。ワンカットに懸ける蔵原監督の熱意を感じます。
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この特徴あるロケ地が気になりますが、登場したのがC58であることから呉線ではないでしょう。広島で C58といえば芸備線ですが、市内に該当する様な橋梁はありません。
二人がいる人道橋らしきにヒントがありました。先人の写真に見覚えが有り、宇品線(既に廃線)の猿猴川に架かる大須口橋梁の様です。短く特徴に乏しい宇品線では、宇品駅かこの橋で撮る方が多かった様です。

この映画公開の3ヶ月前に同じ日活から公開された{ 夜霧の慕情  監督 松尾昭典 }の作中でも同じ場所でロケが行われています。カラー作品で、同じく C58蒸機列車が橋を渡っています。
この人道橋は明治期 軍用線として設置した橋を架け替えした際、旧橋の橋脚を利用して住民用の人道橋を設置したので鉄道橋と平行して存在していたのです。{ 夜霧の慕情 }ではその古い橋脚の様子が映っているので特別にその画像を加えます。
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宇品線はこの映画公開後の年末 広島~上大河原と短くして大幅に本数を減らし、定期券所持者のみ乗車可という変則旅客営業となり時刻表から消えてしまいました。
その後 1972年3月末には旅客営業が完全に廃止され、更に 1986年9月末をもって貨物営業も終了となり完全に廃線となりました。



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