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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

 121. 白蘭紅蘭

1952年6月 大映 製作 公開   監督 仲木繁夫

建築技師 井筒英志(山内明)は莫大な伯父の遺産を相続するにあたり、ヒスイの指輪を持つ竹村千草なる女性との結婚が条件であるとの遺言を聞くことから始まるラブ・コメディー映画です。

鉄道シーンとして先ず竹村千草(沢村晶子)と恋仲の学者 岩本謙太郎(根上淳)のデート場面で、郊外を走る3連の電車が映ります。架線柱は建て換えたばかりの様に新しいですね。
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二人は車内で楽しそうに話していますが、千草の隣に座る男は居眠りしてもたれ掛ったりします。続いての走行シーンでは車体に KTR の文字が読み取れ、走り去ります。
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京王帝都電鉄のデハ 2400形かな?と思われます。とすると本線を走行していると思われますが、千草が居眠り男に「終点ですわよ」と言って降りたのは吉祥寺駅の様にも見えます。
最初の画像も郊外を思わせますが、井の頭線の浜田山~高井戸などもこの頃はこんな感じだったそうです。

井筒の遺産相続の話を聞きつけた望月兇之介(春木富士夫)はキャバレーの女(久我美子)に竹村千草を名乗らせ、本物の竹村千草から奪い取ったヒスイの指輪でニセ千草に仕立てます。
そして井筒はニセ千草と引合され結婚を迫られますが、その気になれません。岩本は研究の為 渡米し喫茶店で働く千草と偶然知り合った井筒は、本物の千草とは知らずに惚れ込んでしまいます。

そんな三人の状況を表す鉄道シーンが次です。東急東横線 自由ヶ丘駅のホームへ、紅蘭 千草(久我美子)が階段を上がって来ます。丁度下り 桜木町行電車が発車した直後でした。
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最後部は 3703 と読めますから、1948年川崎車両製の新車 デハ 3700形です。東横線主体に長年運用されましたが、1975年大手間では珍しく名鉄に譲渡され犬山線系統で使われました。

東横線ホームから下方で交差する大井町線ホームを見た紅蘭 千草は井筒の姿を発見し、急いで階段を駆け下りて大井町線ホームへと向かいました。
白蘭 千草を連れて大井町行電車を待っていた井筒は、「井筒さ~ん」と呼びながら駆け寄る紅蘭 千草に気付きます。
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そしてヤバイと思ったのか、到着した電車に白蘭を促して急いで乗り込みました。

ハイヒールを鳴らして走ってきた紅蘭ですが、タッチの差でドアが閉まり乗れませんでした。
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悔しそうに指を噛んで、去り行く電車を見つめる姿が悲しそうです。
車体の数字が 3479 と読めるので、デハ 3450形です。この形式の車両は 1930年代から 50年間他社に譲渡されること無く東急一筋で使われ、トップナンバーが電車とバスの博物館で保存されています。

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