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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

 18. ぶらりぶらぶら物語

 1962年11月 東京映画制作 東宝配給  カラー作品    監督 松山善三

 全国を放浪する猪戸純平(小林桂樹)が九州で桑田駒子(高峰秀子)と知り合い騙され、更にとある女から二人の子供を押し付けられ東京を目指すコメディ映画です。

 冒頭C11蒸機が牽引する列車が映ります。18-1.jpg
下関駅で
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二人の子供を押し付けられた純平はホームで女を捜します。見晴らしが良く関門海峡が見える中、東京行のC62牽引列車が入線して来ます。ホームから関門海峡の海が見えます。18-2.jpg
汽笛一声 ゆっくり加速する列車のデッキからこちらを見る女。
 それを見つけた純平は追いかけますが、間に合わず汽車は行ってしまいます。
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 大阪を目指して最低区間の切符で岡山から山陽本線の急行電車に乗ると、早速検札が来て見付かります。
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映像では 153系 準急 鷲羽です。
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 この頃この区間に急行電車は無く客車急行ばかりです。優等電車は特急電車が 富士 と うずしお であり準急電車が鷲羽と びんご でした。

 和歌山から東京を目指し、貨物列車に乗り込んだ場面では東海道本線という設定だが、D52蒸気機関車が牽引して
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無蓋車トム50000に乗っています。
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 架線柱が既に見えますが、この当時電化工事が未完成だった山陽本線の広島~小郡(現 新山口)の内 岩国~徳山の辺りで撮影されたのではないかと思われます。無蓋車の上で風に吹かれる三人は気持良さそうです。

 なお 1964年7月の全線電化後もしばらくは電気機関車不足もあって、本編の様にD52 SL は架線の下で活躍していたそうです。
 東京に着いた猪戸が都電に乗る場面では、対向する都電6000形とすれ違うシーンもあります。07.jpg

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 3、その夜は忘れない

 1962年9月 大映 製作 公開    監督 吉松公三郎                           
                                                                     週刊誌記者の加宮恭介(田宮二郎)と陰有るバーのマダム早島秋子(若尾文子)の悲恋映画。

 鉄道シーンは冒頭 一等寝台車に乗る加宮がC59牽引の列車で広島に降り立つ。3-1.jpg
 終盤 帰京せねばならない加宮は秋子と広島駅で待ち合わせるが、特急あさかぜ の案内が始まっても現れずヤキモキさせられる。

 ようやく来た秋子とホームで話す中、C62牽引の特別急行あさかぜがヘッドマークを掲げて到着する。3-3.jpg
加宮と秋子は束の間別れの言葉を交わします。バックは あさかぜ号の20系車両です。3-6.jpg
 そして機関車をEF58に交換したのかホイッスルが鳴り響き、 満員の食堂車 一等座席車 一等寝台車と続く中 加宮は開いたデッキから別れを惜しみ手を振る。

 この当時 山陽本線の電化は広島まで。 冒頭でC59牽引の列車で広島に到着したのは、糸崎停車の急行列車なので糸崎~下関をC59で通し運転だった為と思われる。

 モノクロ作品である点残念だが、活気ある広島駅など新幹線開通前の在来線全盛期の姿を今に伝える一作である。

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 1、ある日わたしは


  1959年9月 東宝 製作 公開  カラー作品     監督 岡本喜八                                       
 記念すべき最初に取り上げる作品として一番好きな、この(ある日わたしは)にします。
 この作品は昭和34年東宝製作で主演 金子大助(宝田明)と城山ゆり子(上原美佐)。 
 主な鉄道シーンは共に岡山県出身の二人が学ぶ東京で知り合い、二度目の上京時20系寝台特急あさかぜ号が映ります。
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そして東京駅を降りた場面
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その後 金子の実家がある新見へ連れて行く道中 ゆり子の実家がある倉敷駅を通るので、停車中に家族と会うという場面です。
 先にC59牽引の列車が映り、
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弟 義夫(手塚茂夫)と妹 まり子(星由里子)が待つ電化前の長閑な倉敷駅に到着する時はD51牽引に変わっています。
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 これは東京から急行で岡山まで来て、岡山始発の伯備線列車で新見へ向かう為変わったものと思われます。
二人が乗る客車のサボは米子行となっています。

 その後東宝の看板女優となる星由里子が妹役でホームから窓越しに話すうち
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発車の時刻となり、発車のベルが鳴らされます。
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汽笛一声! その時具合が悪く来られないという母親が、ホームを走って来て間に合いました。
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 ゆっくり加速する列車に走り寄る母親。 やっと追いつき手短に話すも走り行く列車・・・
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 映画における鉄道シーンとしては代表的な別れの場面ですが、対向の上り貨物列車も遠く映り 未電化時代の山陽本線倉敷駅の様子をカラー映像で残す鉄道シーンの一級品です。
その後 具合の悪くなった母親を気遣う二人でした 待ち受ける跨線橋が辛そうです。
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 この映画は石坂洋次郎原作の爽やかな青春恋愛映画で全編見た印象もとても素晴らしいので、真っ先に取り上げてみました。



PS.
  二人が乗った列車を推測すると東京 22:30発25レ急行出雲号大社・浜田行に乗り、翌朝 9:22大阪に着くと 10:25始発広島行普通235レに乗り換えます。この列車が 14:51に岡山に着き、15:03始発の919レ伯備線経由米子行に乗り換え倉敷 15:25着です。

  倉敷駅では2分停車なので、あまりゆっくり話す時間はありませんね。 919レは 17:24新見到着なので、金子の実家へ夕方着きます。
 


 

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