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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

220.めぐりあい

1968年3月 東宝 製作 公開  カラー作品   監督 恩地日出夫

互いに家庭環境に恵まれない二人がめぐり逢い 様々な困難を抱えながらも、互いに微笑みを交わすことで乗り越えて行こうとする青春映画です。

冒頭 タイトルに続いて、南武線の川崎行 40系らしき国電の走行シーンがあります。
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次に江藤努(黒沢年雄)と今井典子(酒井和歌子)が、其々川崎駅の改札を抜けて行きます。
陽気に前を行く人を抜きながら江藤がふざけて典子を不意に押したことから軽傷を負わせ、その後が気になった江藤は仕事帰りに川崎駅内の階段で典子に会うことができます。

謝罪して話す内に発車を告げる放送があり、二人は南武線ホームへと走ります。しかし間に合わず 同じく 40系らしき立川行の電車は出発して行きました。
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江藤が落とした煙草を典子が拾おうとしたことから、お互い最初の微笑みを交わします。江藤が遊びに誘いますが断られ、続いて入ってきた折り返し電車に乗った笑顔の典子に置いて行かれたのでした。
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中盤 付き合い始めた二人が、川崎駅近くの京浜急行高架線が見える喫茶店で話す場面があります。高架線上を走る京急線は不鮮明ですが、初代 1000形にも見えます。
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京急川崎駅付近の連続高架線工事は 1966年12月に完成したので、まだ新しくて周囲の開発も始まっていない様です。

典子とのデートの帰りに江藤は電車内で、チンピラに絡まれている石井綾子(進千賀子)と目が合います。彼女は会社でミスオリエント自動車と呼ばれていて、大学出の白井(田村亮)とデート中です。
江藤に社内では歯牙にもかけない綾子ですが、3人のチンピラ相手に非常ドアコックの扉を開けて「電車を停めるぞ!」と叫んで退散させたので デートの相手を江藤に乗り換えたのでした。
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ある日 江藤と海へ出掛けて帰宅した典子は、隣家の人から母 雅枝(森光子)がバス事故に遭ったことを知らされ益子へ向かいます。先ず DC列車内らしき、クロスシートに座る典子が映ります。
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続いて夕景の中 キハ10系 らしきバス窓のDC3連が走り抜けて行きます。真岡線の列車を示唆している様ですが、時刻の点からは少々苦しい展開です。
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翌日夕方 6時に川崎駅で待ち合わせしていた江藤は、改札付近で同僚に冷やかされながらも典子を待っています。ところが人通りが少なくなる時刻まで待っても、典子は現れません。
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そして遂にキレた江藤は、改札横の伝言板に「甘ったれるナ」と殴り書きして去ります。典子の事情も分からず誤解して怒った江藤ですが、携帯の普及した現在では理解し辛い展開です。
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携帯の普及などで利用者が減り 21世紀の到来と共に消えて行った駅の伝言板でしたが、小生の地元私鉄駅では近年まで残っていました。

その後 お互いの家庭環境が悪化したことや、江藤が仕事中に失敗して左遷されたことから暫く冷却期間を置くことになります。典子も横浜ドリームランドに仕事先を変えて一人暮らしになります。
勤務先だけ書いた手紙を送って待つ典子の元に、秋になって漸く吹っ切れた江藤が現れます。おとぎ列車乗り場で勤務する典子と再会し、再び 微笑みを交わして再出発を誓う二人でした。
典子が働く幼児用列車の他 TDLの様に外周を走る本格的な汽車があった様に記憶してますが、本編でその姿が現れないのは残念です。ドリーム交通モノレールも登場してほしかったですね。

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 86. 夜の流れ

1960年7月  東宝 製作 公開   カラー作品    監督 成瀬巳喜男・川島雄三

料亭の雇われ女将 藤村綾(山田五十鈴)を中心とした三角関係の話と、芸者置屋「七福」の芸妓 一花こと野崎政江(草笛光子)を核とした三角関係を二人の監督が別々に撮った珍しいW監督映画です。

芸妓の政江は呉服屋の店員 滝口速太(宝田明)と付き合うが、若い女と駆け落ちした夫 野崎(北村和夫)が舞い戻って来て付きまとい 嫌がらせをします。そこで滝口は野崎に手切れ金を渡し、離婚届に判を押させました。
鉄道シーンはここからで、南武線 尻手駅1番線からクハ16形らしき川崎行電車が出発して行きます。
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向かいの立川方面行2番線ホームには決着がついた三人が現れ、和やかに立話しをしています。

野崎は「これでボクもサッパリしました」などと言いつつ、滝口に煙草をネダったりします。
野崎は二人に「ここ空いてますよ」とベンチを勧めますが滝口は断り、86-22.jpg

政江を残して夕刊を買いに売店へ向かいました。
滝口はホーム前方の売店へ行くと、2部夕刊紙を手に取り代金を支払います。
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その時川崎方からクハ12形らしきを先頭に立川方面行電車が近付いてきました。後ろはクモハ11形でしょうか。

「あなた~電車来たわよ」と政江が甘い声で滝口を呼ぶと、突然 野崎が近寄り「政江 ボクと死んでくれ」と手を掴みます。「いゃ~!」と政江は振りほどこうとしますが、野崎の力には敵いません。
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電車が近付き警笛を鳴らす中 お釣りの受け取りに手間取った滝口が漸く駆け付けますが、野崎に突き飛ばされます。そして政江の手を掴んで野崎は、遂にホームから飛び込んで無理心中してしまいました。

撮影時の南武線は省電時代からの17m級 旧型国電が活躍、旧型国電の代名詞 72系電車が山手線などから移って来るのはこの 3年後のことです。3番線から出ていた尻手~浜川崎の支線では 1980年まで走っていました。
余談ですが滝口が夕刊を買いに来たホームの売店で 売り手の背後に今は無き週刊読売スポーツの宣伝札が貼ってあり、( 巌流島の対決 )と書いてあります。
これは 1956年から3年連続日本シリーズ( 西鉄対巨人 )で対決し、この年から6年連続最下位大洋の監督となっていきなり優勝した三原修と巨人監督 水原茂の対決再来を指しているものと思います。

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