fc2ブログ

日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

344硝子のジョニー野獣のように見えて

1962年9月 日活 製作 公開   監督 蔵原惟繕

家族の生活の為に 身売りされた 深沢みふね(芦川いづみ)が 脱走し、追い駆ける男と みふねが寄り添う男 絡み合う三人のドラマを描いた映画です。

タイトルクレジット直後 娼家から脱走した みふねと よしえ(和田悦子)は、近くの函館本線近文駅へ入り込み 発車しかけている列車に みふねは飛び乗りますが
344-3.jpg
秋本孝二(アイ・ジョージ)に よしえは捕まってしまいます。
344-5.jpg

ホームに秋本と よしえを残し走り行く夜汽車ですが、
344-4.jpg
みふねはデッキで 車掌(青木富夫)に無賃乗車で捕まってしまいます。
344-6.jpg
そこを一等車から出て来た ジョー(宍戸錠)に、金を払ってもらい 助けられました。

そして列車は、翌日終点の函館駅へと着きます。
344-7.jpg
乗客が皆降りた ゴミが散乱する車内通路で、みふねは未だ 寝ていました。
344-8.jpg
漸く気付いた みふねは、
344-9.jpg
慌ててホームに出て 郵便車の横を進んで行きます。
344-10.jpg
先に改札口を出た ジョーを追い駆けて ホームから飛び降りて フェンスの下穴から 外へ出ちゃいますが、この間 みふねはずっと 裸足のまま 砕石の上を走ったりするのには驚きです。

その後 みふねはジョーのことを 心に求める{ジョニー}と思い込んで、ジョーに邪魔者扱いされても 寄り添い続けるのでした。ジョーは 競輪の予想屋を本業に、見込んだ競輪選手 宏(平田大三郎)のトレーナーもやってます。
ジョーは 宏に頼まれた 五万円を工面する為 函館駅に近い天狗食堂へ行くと、外で待つ みふねは 秋本に見つかってしまいます。秋本の背後には 函館駅に停車する、気動車急行らしきが見えています。
344-11.jpg

ジョーは 秋本を撃退しますが 宏から 選手の編成替えで 18:00発札幌行で 小樽へ行く必要があると聞いて、金の工面に困った挙句 みふねを 娼館花乃家の おきく(武智豊子)に売ってしまいます。
みふねには 18:00に競輪場で 待ち合わせの約束をしておいて、発車間際の 札幌行に乗り込み 宏に金を渡して 同行するジョーでした。
344-12.jpg
離れた座席では 宏の恋人和子(松本典子)が、二人の様子を 伺っています。
344-13.jpg
続いて走行中の蒸機牽引列車が映ります。
344-14.jpg

そして 一人泣きながら ジョーを待つみふねの前に 秋本が現れ、函館駅に連れていかれました。D51形蒸機が バックで機回し中らしき様子が 先ず映ります。
続いて 函館終着の普通列車が停まり、秋本はみふねの髪を 引っ張って乗せようと
344-15.jpg
デッキの前に移動します。下車客が尽きるのを 待っていると、秋本が売り飛ばして 自殺した京子の 兄(玉村駿太郎)と鉢合わせします。

妹の敵である 秋本に気付いた男は ナイフを取り出し、秋本の心臓の斜め上辺りを 刺してしまいます。直ぐに騒ぎとなり 男は駅員に取り押さえられ、秋本は別の駅員によって 救助されます。
騒ぎが収まり 折り返しの列車に乗る乗客に混じって みふねも二人分の荷物を持って 乗り込もうとしますが、
344-17.jpg
はたと気付いて 秋本が入院した病院へ 荷物を届けに向かいます。

一方 みふねを裏切り 宏と札幌行の列車に乗ったジョーは、発車間際に買った ウヰスキーを飲んで すっかり寝込んでいました。然別駅で 発車の汽笛で起きると、宏の姿は無く 決別の置手紙がありました。
344-18.jpg
騙されたことに気付いたジョーが 反対の窓の外を見ると、宏が和子の手を引いて 改札口の方へ走っています。ジョーはデッキへ 宏の名を叫びながら走り出ると、
344-19.jpg
既に加速している列車から 飛び降りそうになる所を 車掌に制止されたのでした。

宏に自分の夢を掛けていただけに ジョーは腑抜け状態となり、一般客立ち入り厳禁の 青函連絡船の航送車輛デッキで 呆然としている姿があります。
344-20.jpg
一方病室へ荷物を届けた みふねは、秋本が不憫に思えたのか 付き添って看護するのでした。秋本は人身売買で 手配中だったので、退院と同時に逮捕となる身でした。

ところが 退院の日に迎えに来た 警官から自分を棄てた妻の行方を 伝言されたので 暴れて窓から逃走し、又しても みふねの誠意は 裏切られたのでした。
漠然と故郷稚内を目指して 放浪するみふねは 釜谷駅に現れ、
344-22.jpg
駅員に「稚内」と言うや 呼び止める声も聞かずに 下り方面の線路上を歩いて行ってしまいます。

更に雨降る夜間でも 線路内を歩き続けるみふねは、前方から近付く 蒸機の灯りを 夢見るジョニーと思い込んで 避けようとしません。
9600形らしき蒸機は汽笛を鳴らし続けるのに 退避しないので 急ブレーキで停車するや、
344-23.jpg
乗務員が倒れ込んでいる みふねを救助し 入院の運びとなります。
344-24.jpg

それから 退院したみふねは 遂に故郷の実家に辿り着きますが、既に家族は引っ越した後で 行方も分からないのでした。
その頃ジョーは ヒッチハイクで 秋本はギターをつま弾きながら 列車で みふねの行方を追っています。
344-27.jpg
D51形蒸機牽引列車が映り、
344-25.jpg
小さな駅舎から秋本が出てきました。











PS.
  芦川いづみが 出演作品中 ベストワンに自選した 映画だそうです。頭の弱い女性役で 変顔を全編で連発し、飛び乗りシーンや 裸足でホームから飛び降りたりと 彼女のイメージに合わない異色作品です。

  近文駅は 函館本線終点旭川駅の 一つ手前ですが 半車一等車付の 上り普通列車は 夜間に無いので、ロケ用の列車を走らせてもらい 芦川いづみには珍しい 飛び乗りシーンを撮影したと思われます。

  近文から函館は遠く 当時のダイヤで作中の様に 直通の普通列車となると、旭川始発の 近文6:24発で 函館19:21到着の 122レが唯一の列車でした。

  宏がジョーと待ち合わせて 乗った函館18:00発の 札幌行も架空列車で、実態に近いのは 函館15:08発45レ札幌行です。宏と和子が降りた 然別駅も遠く、45レに乗ったとしても 21:52頃の到着で 終列車でした。
  何故か 12枚目の画像は C62形蒸機が牽引する 急行列車なので、函館 14:25発 17レ釧路行の急行まりも号の雄姿と思われます。

  秋本が嫌がる みふねを連れて 乗ろうとした列車も、撮影用の列車を用意してもらって 多数のエキストラを動員しての ロケと思われます。普通に乗るなら 23:20発 419レ釧路行が 該当します。

  腑抜け状態となった ジョーが入り込んだ 青函連絡船の航送車輛デッキでの撮影は 大変珍しいロケで、多数の映画で ロケが行われたのは 青函連絡船の屋外デッキでした。
344-21.jpg

  放浪する みふねが辿り着いた 釜谷駅は、江差線の釜谷駅と 思われます。函館本線沿いではなく 函館から海岸沿いに歩いたので、釜谷駅に着いたのでしょうか。
  しかし駅員は 下りに乗れば稚内で「歩くと1~2時間掛かりますよ」と言っているので、該当するのは 天北線の 宇遠内仮乗降場です。(無人駅でしたが稚内まで4.8㎞)

  最後から一枚手前の画像は みふねの元へ 列車で向かう秋本ですが、蒸機牽引列車の筈が 座席の後ろに 排気管が出っ張っていて 気動車の様ですね。


  みふねが通路で寝込ん で函館に到着した場面で、遥か昔 常磐線の松戸から 上り上野行 長距離普通列車に乗った時、もの凄い量のゴミが 座席の下にあったのを思い出しました。









PageTop

271.終わりなき生命を

1967年7月 日活 製作 公開   監督 吉田憲二 

働きながらも明るく洋裁学校に通う小神須美子(和泉雅子)は難病に罹り下半身麻痺となってしまいますが、周囲の励ましで絶望の底から生き抜いていこうと決心するまでの過程を描いた映画です。

冒頭 北海道の樽前山をバックに室蘭本線社台駅付近の社台ファーム横を走り抜ける、C57形蒸機らしき牽引の旅客列車が映ります。
271-02.jpg
続いて 室蘭本線 苫小牧近郊の直線区間らしきを走り来る D51形蒸機が映って、タイトルが入った後 昭和39年3月と公開3年前からの話と表示されます。
271-03.jpg

岩内に住む須美子が友達と帰って来て、岩内駅から出てくる場面があります。
271-1.jpg
1954年9月の岩内大火で全焼し、翌年再建された駅舎です。1985年6月末をもって、岩内線(小沢~岩内)と共に廃止されました。

須美子の中学校の先輩 内村弘二(山内賢)に礼を言いたくて、札幌行列車に乗り換える小沢駅ホームで捜す場面があります。曲線ホームの先からカメラは、超望遠レンズで撮っています。
牽引機関車は C57形でしょうか?発車ベルが鳴る中 須美子は前後に車内を捜しますが、内村が座る席を通り過ぎて後方へ行ってしまいます。内村が気付いて窓を開け、
271-3.jpg

271-2.jpg
呼び掛けると須美子も振り返ります。
271-4.jpg
「次は銀山」と放送が聞こえる中、列車は動き出しました。内村の問い掛けに須美子は「昨日はありがとう」と笑顔で叫び、手を振って見送るのでした。
271-7.jpg

脚に異常を感じ原因不明のまま下半身麻痺となった須美子は、変形性脊髄症と分かり札幌で手術を受けることになります。
客車のボックス席の窓側に須美子を寝かせ、父 小神修造(日野道夫)と母 はつ(望月優子)それに看護婦さんが付き添って札幌へ向かいます。
271-8.jpg
続いての蒸機走行シーンは、銀山~然別の稲穂峠でしょうか。
271-9.jpg






PS.
   冒頭のシーンは岩内線や函館本線とも違う室蘭本線で撮影された様ですが、駅構内を除いて日本一の最長直線区間(白老~沼ノ端 28.7㎞)として有名な区間で雄大な北海道らしい場所として選ばれた様です。

   岩内駅は東映作品「飢餓海峡 1965年公開」の冒頭でも、1947年の話として登場しています。ロケ当時 岩内線はDC化されているので、他で撮影された様です。本作の岩内駅舎は現地での撮影です。

   小沢駅での見送り場面は蒸機が牽く列車の方が絵になるので、岩内ではなく小沢で行ったのでしょうか。ところが函館本線もC62形重連で有名な急行ていね(後のニセコ)はありましたが、岩内から札幌直通の準急はDCでした。
   日中に小沢駅からの普通札幌行は 11:12 発の41レが唯一で、16:43 発の137レは夕方過ぎます。放送が本物ならば、長万部始発の 41レ(小樽 12:36 札幌 13:16着)でロケが行われた様です。
   


   

PageTop

 74. 乳房よ永遠なれ

1955年11月  日活 製作 公開    監督 田中絹代

乳癌で僅か31才にして闘病死した実在の女流歌人・中条ふみ子の半生を、名女優 田中絹代が3作目として監督した映画です。

東京の新聞記者 大月彰( 葉山良二 )が下条ふみ子( 月丘夢路 )の歌集出版の為、札幌の入院先を尋ねる時に鉄道シーンがあります。

小樽駅1番ホーム 停車中の急行あかしや号から降りた大月がホームの洗面所で水を旨そうに飲んでいます。この洗面所とは画像の様に蒸機時代 各地にあった、文字通り顔を洗う為の設備でした。74-1.jpg

ホームには森永の移動販売所らしきがあり、牛乳やアイスクリーム等を売っています。「15:06発 急行旭川行あかしや号」と放送があり汽笛の後に列車は動き出し、大月はデッキへ飛び乗りました。74-2.jpg


急行あかしや号は 1953年4月函館(11:30発)~札幌(18:00着)の急行として登場。1954年5月から函館(11:35発)~旭川(21:00着)に延長され、同時に急行運転は小樽までで小樽~旭川は準急運転となりました。
撮影時は函館(11:15発)~~小樽(15:45着15:49発)~南小樽(15:53発)~札幌(17:27着)ですから、小樽からは準急列車であり次の停車駅も南小樽なので放送はアフレコと思われます。
その後1956年11月の時刻改正から後年馴染深い、急行アカシヤ号となりました。1961年10月から一年間消滅した後DC急行として復活、函館~札幌を結び活躍しました。

続いて札幌駅に到着した大月が改札から出て迎えの新聞社有車で札幌病院へ向かう場面があります。札幌駅はこの頃1908年に建てられた木造駅舎を1951年から建て替え工事が始まり、1954年9月からの2期工事中でした。
それでなんとなく仮設改札と通路の様な感じに見えます。改札を通る大月のバックには停車中の列車が映っていて汽笛の音も入るので、乗ってきた旭川行の急行(劇中で )あかしや号の発車を連想します。74-3.jpg


その後大月が札幌市電570形から降りてくるシーンがあります。7系統の札を付けた570形は全鋼製で1954年製造の当時最新型であり、正面右側の運転台上部に小型の方向幕がある初期型の姿で映っています。74-6.jpg


PageTop