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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

70. 非行少女

1963年3月 日活 製作 公開    監督 浦山桐郎

東京で仕事がうまくいかず 故郷 金沢に戻った21歳の沢田三郎( 浜田光夫 )と生き方が不器用で、少々グレた15歳の北若枝( 和泉雅子 )の純愛映画です。

鉄道シーンとしてまず北陸鉄道金沢市内線3番の電車で、沢田が職安へ行くシーンがあります。映っているのはモハ2200形でしょうか。次に幼馴染の若枝に偶然会った沢田は共に北陸鉄道浅野川線に乗り河北潟(架空)駅で降りました。
この駅は粟ヶ崎駅かと思われます。この電車は1961年に新製された、内灘行き単行のモハ3501 です。またこの車内では案内が車掌の肉声で行われています。なお河北潟とはこの地にある大きな湖です。

若枝は失火事件を起こしたことから更生施設に入り、父親が行方不明になる。その父親が山梨県の勤務先でケガをした知らせが施設に入り、若枝は先生に連れられ行くことになります。
北陸本線複線非電化区間でしょうか、C57牽引の列車が映った後2両編成の電車が映ります。山梨といえば富士急ですが、もしや7030系かな と思われます。帰り道の列車内のシーンはセット撮影と思われます。

やがて若枝は沢田に告げずに大阪へ働きに行くことにします。旅立ちの日 河北潟駅(粟ヶ崎駅)で父親に見送られるシーンがあります。到着したのは1962年製の最新型モハ3551です。
涙も無く父親と別れた若枝は、大野川橋梁の真ん中で因縁の赤いハイヒールを窓から川へ捨ててしまいます。70-1.jpg
一方 人伝に若枝の大阪行を聞いた沢田は、オート三輪で金沢駅へ送ってもらいます。

金沢駅構内には、14:16発名古屋行 循環準急こがね号と14:24発普通列車 大阪行の案内放送が流れています。循環準急とはその名の通り、名古屋9:30発で米原ー金沢ー富山ー高山ー名古屋と一周して20:10に元に戻る列車です。 こがね号と反対廻りの循環準急 しろがね号もありました。
改札口で若枝に追いついた沢田は、構内食堂で必死に説得しますが若枝の決意が変わらないので大阪行の発車案内放送が流れる中 若枝の手を引き乗り場へ急ぎます。

地下通路を走る中 発車の汽笛が聞こえてきます。階段を上がりホームへ出ますが、動き出した列車の最後尾のオハ61客車の後ろのデッキに飛び乗ることができました。アフレコと思われますが、次の停車駅が加賀笠間と放送しています。
沢田は次の停車駅まで同乗し、3年間の別れを告げます。金沢の隣駅 本当は西金沢ー松任ー加賀笠間と続きます。途中の走行シーンはC5734が牽き、加賀笠間駅ではC5717で共に金沢区の所属です。70-2.jpg


加賀笠間駅で沢田は降り、いよいよ別れのシーンです。固い握手を交わし、汽笛が鳴ると若枝は機関車の方を振り向きます。列車が動き出し、若枝は「三郎さん」と叫ぶのみで言葉が出ません。
汽車が走り去り、沢田は一人加賀笠間駅のホームに残り煙草を吹かし余韻に浸っている様です。一方 涙の別れが終わり若枝は車内の席に座ると、キャラメルを食べ大阪での新生活を夢見てか明るい表情に変わっています。

走行シーンでは全て架線が張られて電化工事完成直前の様子ですが、福井~金沢が電化されたのが1963年4月ですから正に電化直前だったのです。
浦山監督はラストの別れのシーンで是非とも蒸機列車を入れたかった様で、後年 主演の和泉雅子さんの思い出として金沢駅食堂での撮影の後 少なくなった蒸機列車が来るまで待ち時間が大変長かったそうです。

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