日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

248.七つの宝石

1950年8月 松竹 製作 公開   監督 佐々木啓祐

元伯爵 東小路輝が殺害され それぞれに漢字一文字が入った七つの宝石が奪われます。しかしその行方が二転三転し、悪玉と善玉が競って 東小路家に伝わる秘宝にたどり着く過程を描く サスペンス映画です。

戦後復興期の京都を舞台に、街頭ロケが多い作品です。大規模な空襲はなかった京都だけに、古い街並みの中 ポール集電の市電が作中のあちこちで走っています。
強盗団の一人 ヤク中の五郎(大坂志郎)が強奪した七つの宝石を横領し その内6つを売りさばいたので、黒メガネのボスを筆頭にした一団が 宝石を捜して 再度強引に奪い取って集めるのでした。

その途上 地下区間を走る京阪神急行電鉄 100形の 102を先頭とする列車が映ります。
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その車内で一味の男の目が光り、立ち話をしている和装の女性から
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宝石付きの帯留を掏り取ります。
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続いて地下駅に 115を先頭とする列車が到着し、
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大勢の客が降りてきました。この電車の乗客には品川(佐田啓二)もいて、地上への階段の途中で一味の一人を見つけて追跡します。
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上がって来た階段の上部には、大阪・神戸・寶塚 方面と記された案内板があります。男に続いて品川は改札口を抜け、
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京都市電の後部側で大通りを渡って追い駆けます。
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改札口に「地下鉄のりば」と表示されているこの駅は、京阪神急行電鉄 京都本線 西院駅と思われます。1931年3月末に京都線 西院手前から大宮まで関西初の地下鉄として開通したので、地下鉄のりばと表示したのでしょう。
西院駅とすると京都市電の方は、西大路線 西大路四条電停手前で停止している 200形で 不鮮明だが 276の様です。昭和初期製の4輪単車で、この当時は皆ポール集電の様です。

黒メガネのボスが出入りしていた店でダンサーをしている艶子(日高澄子)の協力で、品川は宝石を取り戻します。しかし品川のミスから艶子はボスに襲われますが、なんとか逃げてバスに乗ります。
その車内で艶子は、五郎が渡した 宝石付の指輪を身につけた女を発見します。女は京都市電も走る 本町停留所で降りたので、艶子は後を追って降車して追い駆けるのでした。
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このバス停(架空名)の背後は京都第一赤十字病院の様で、市電は九条線 起点の東福寺電停の様です。女が振り返ったシーンで、右手の大きな橋は 1937年完成の九条跨線橋と思われます。
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京都市電 九条線は先の西大路線と共に京都市電 最終期まで残って、1978年9月末に他線と共に廃止されました。


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174.青春のお通り

1965年7月 日活 製作 公開  カラー作品   森永健次郎

南原桜子(吉永小百合)は短大卒業後 お手伝いさん業こそ要領のいい仕事と考え、芦屋住まいの放送作家 浪花秀介(藤村有弘)の元で住み込みお手伝いさんとなりる コメディ青春映画です。

短大時代の同級生三人組はお互いを 桜子はチャッカリン 青柳久子(浜川智子→浜かおる)はケロリン 駒井中子(松原智恵子)はキドリン とアダ名で呼び合い、ケロリンと兄の青柳圭太(浜田光夫)の住む千里団地へ二人共転がり込む仲でした。
鉄道シーンは序盤 京阪神急行電鉄 千里山線 新千里山駅(現 阪急電鉄 千里線 南千里駅)を遠景で映すシーンから始まる。1600系4連が1番線に停車するホームに、梅田行 1600系電車が2番線に到着します。
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桜子が降りて来て階段へ向かうと、下から電車に乗ろうとする久子が上がって来てぶつかります。久子が何処へ行くのか答えない桜子に「お兄ちゃんを誘惑したら承知せんよ」と言い、桜子は「早よ行かんと乗り遅れるで」と返して久子を慌てさせます。
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1番線から発車寸前の梅田行電車に乗ろうとする久子ですが、車内が混んでいて乗れません。「チャッカリン 押して~」と久子が呼ぶと桜子は「よっしゃ」と答えて走り寄り、久子を押しますが他の乗客共々駅員に押されて乗せられてしまいます。
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続いて 1600系4連が走り抜けて行く姿を、陸橋上から捕らえた場面があります。1970年に開催された大阪万国博覧会で有名になった千里ですが、当時は新千里山駅まで部分延伸されたばかりで最長4連で運行されていた様です。
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桜子が住み込みで働く浪花家の妻で女優のユカリ(芳村真理)が映画出演の為 上京することになり、桜子が付き人として同行することになります。その折に結婚して国立に住む姉の瀬木梅香(長内美那子)に会いに行こうとします。
早朝 新宿駅から中央本線に乗り、アポ無しで国立を目指します。101系電車が高架線を走行している場面では 送電線の高い鉄塔が映っていますが、半分高架線が開通した翌年なので 高円寺付近でしょうか。
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そして三角屋根が特徴的な駅舎をバックに早朝の国立駅前に降り立ちます。
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この駅舎は 1926年の開業以来 2006年まで存在していましたが、高架線工事に伴い解体されました。
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新千里山駅で桜子が元に戻る方向の電車に乗せられてしまう場面は、ラッシュ時とはいえ開通間もない末端駅なので客も少なく京阪神電鉄としてもPRになり 撮影に協力したのでしょう。
それにしても久子は明らかに列に横入りだし このドアだけ3人も駅員がはりついて一般客を制限し、トラブルと危険防止を兼ねて撮影に協力していますね。コメディ映画として上出来でしょう。なお続編でも京阪神急行電鉄 芦屋川駅が登場します。








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90. 黒い海峡

1964年12月 日活 製作 公開   カラー作品    監督 江崎実生

ヤクザ組織の幹部 槇明夫(石原裕次郎)は組の為 懸命に働くが、親分の裏切りに遭い ヤクザ社会の嫌なカラクリを思い知らされる映画です。

組織を裏切った兄弟分の大貫哲次(中谷一郎)を追って神戸へ向かった槇は、大貫の女 香山知佐子(吉行和子)をつけて哲次を見付けようとします。
鉄道シーンとしては、先ず開通したばかりの0系新幹線の走行シーンが映り 関西行をアピール。
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続いて神戸市電をバックに、靴磨きを受けながら知佐子を見張る槇の姿が。

阪急神戸駅(現 神戸三宮駅)では知佐子を追い掛け、上りエスカレーターの左側を駆け上がります。関西ではこんな前から右側一列で乗り、左側は駆け上がる人用だったのでしょうか。
ホームへ上がると、知佐子が乗った阪急電車 2000系の2019に発車ギリギリで飛び乗りました。
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そして 1995年の阪神大震災で損壊してしまう駅ビル(神戸阪急ビル東館)から梅田方面へと出発して行く姿が映ります。
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次に知佐子は走行中の車内を前方へと移動し 大貫を見付けると、「槇さんが神戸に来ている」と告げました。つけられてることは分っている割には悠長な言葉の様ですが・・・
そして槇は遂に大貫を見付け 迫りますが、800系電車805を先頭で六甲駅に到着。大貫は一人でホームへ飛び降り、槇も後を追い掛けます。大貫は出口へ向かうと見せかけ向かいのホームを走り、発車寸前の元の電車に飛び乗ります。

追い駆けていた槇も再び元の電車に乗ろうとしますが、寸前でドアが閉まりホームに取り残されてしまいます。加速してゆく車内では大貫と知佐子がチャッカリ寄り添い、槇の前を通り過ぎて行きます。
六甲駅を去り行く電車のカットで、この列車最後部が 1950年製造 800系の 855であることが分かります。
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800系の中でも非貫通型で、この後本線から支線へと活躍の場を移し、1979年まで走りました。

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 50. 若い瞳

  1954年2月 宝塚映画 製作  東宝 配給 公開     監督 鈴木英夫

 勝気で純情な高校3年生 松川ひろ子(八千草薫)を中心とした青春映画です。50回記念に思い入れのあるこの作品を取り上げました。

 ひろ子が京阪神急行電鉄(現 阪急電鉄)六甲駅を降り、学校へ向かう朝の風景から鉄道シーンが始まります。
 改札は木製のラッチで、そこを覆う小さな木造駅舎は仮設のバラック風です。1973年に現在の阪急電鉄に改称しますが、この頃も略称 阪急で通用していたそうです。

 元々隣に住んでいた大学生の中山治夫(太刀川洋一)と付き合い始めたひろ子だが、中山が就職試験に連敗したことから冷たくなり自殺をも考えるようになる。
 暗い顔で阪急神戸駅(1968年より現 三宮駅)のホームに上がるひろ子。大阪行最終電車ですと放送していますが停車している 920系966に乗ろうとせず、ホームのベンチに座り込みます。
 阪急神戸駅は当時阪急の神戸方終着駅で櫛型ホームでした。その後改造され 1968年神戸高速鉄道、山陽電鉄との相互乗り入れ開始時に通過駅となり駅名が三宮に改称されました。

 それでもなんとか ひろ子は900形 918 に乗車します。下車駅である芦屋川駅に920系 956 で着いた時にはすっかり笑顔に変わっています。
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 当時の時刻表によれば、この終電は阪急神戸 23:30 発で 23:44 芦屋川ですから今より終電が早いですね。改札には弟の松川保(井上大助)が迎えに来ていました。

 この芦屋川駅舎も木造の小さなバラック風で、本作の翌 1955年公開の東宝製作「不滅の熱球(監督 鈴木英夫)」でも同じ姿で映っています。
 また 1959年 大映製作「細雪(監督 島耕二)」や 1966年 日活製作「青春のお通り 愛して泣いて突走れ!(監督 斎藤武市)」でも各時代の駅の姿を見ることができます。

 そして東京で就職口が見つかった中山は別れを告げるべく六甲駅でひろ子を待ちます。ホームで話す内 961 を含む3連が到着しますが見送ります。
 遠ざかる 920系3連 構内の外れでは踏切警手が白旗を振っています。50-2.jpg
この頃六甲駅は構内踏切付の島式2面4線構造であったんですね。
 この 920系は 1934年より製造された2扉の名車でした。本作中では2連か3連で登場しますが、特急では4連で走っていました。

 続いて二人は国鉄神戸駅に着きます。やや迷った様子の中山は意を決した感じで 17:20 ホームへ向かいます。ホームへ上がると同時にC59129蒸機が牽引する神戸 17:35発の急行列車が到着します。50-3.jpg

 中山は席に荷物を置いて再び降りてきます。ホーム中央で別れの言葉を交わす内、遂に汽笛が響き渡ります。
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デッキに乗り込み尚も手紙の約束などする内、加速する列車は二人を引き離します。
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 悲しい BGM が流れる中、煙を残して中山の乗る列車はひろ子の視界から消え去って行くのでした。このC59129機関車はお召列車の先頭を牽いたこともある優良機で当時岡山区に所属していました。

 中山が乗った急行 アフレコと思われる構内放送では 17:35発の急行東京行らしいのですが、語尾がハッキリ聞こえず急行何号?か分りません。
 1953年は3月と11月に時刻改正がありました。ロケが行われたと思われる 11月以後も以前も17時台に上りの急行列車はありません。
 たぶん ひろ子の下校時刻に会い、神戸駅まで来て明るい内に別れのシーンなので架空の 17時台半ば発車とのシナリオになったと思われます。

 当時の時刻表では 17時台は姫路発各停 928ㇾ三宮行が 17:17 これだけです。その後は 18:28 に佐世保発の 1006ㇾ東京行の特殊急行列車(後の急行早鞆)があり東京には 6:40 到着です。
 その前は熊本発の 32ㇾ東京行急行阿蘇であり神戸 9:16発で終着東京は 20:08です。つまり 17時台では東京着が早すぎるので東京行の急行が存在しないのです。
 できれば急行券の発売枚数制限の付いた豪華編成の特殊列車 1006ㇾで撮影してほしかったものです。当時の山陽本線は西明石以西が非電化で、電化区間もC59はじめ全線で蒸機天国でした。

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