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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

383.銀座二十四帖

1955年9月 日活 製作 公開   監督 川島雄三

銀座で花屋を営む コニーこと 三室戸完(三橋達也)と知り合った 京極和歌子(月丘夢路)が、少女時代に描いてもらった 絵の作者を巡る謎解きと 薬物撲滅を目指す 三室戸の活躍を描いた青春映画です。

序盤 世田谷砧の花畑で収穫された花を 芝生花市場へ運ぶ三輪トラックに 途中で三室戸が便乗し 仕入れに行く場面で、大きく右カーブする登坂へ向かう 都電とすれ違うシーンがあります。
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登場人物の紹介を兼ねた やり取りの終盤に、銀座中央通りを行きかう 都電を捉えた映像が流れます。京橋付近でしょうか、1系統の他 19・22・40系統の電車が 次々と走っています。
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軽妙な 森繁久彌のナレーションで 銀座の玄関口として、新橋駅汐留側に 1914年から1970年頃まであった 風格ある駅舎が紹介されます。
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続いて 有楽町駅を通過する 特別急行列車2レ つばめ号東京行が、牽引するEF58形電機から
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最後部の一等展望車まで映ります。
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そして 東京駅10番線に到着した つばめ号の
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8号車から 和歌子の姪 仲町雪乃(北原三枝)が降り立ち、
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カバン持ちをさせた プロ野球投手赤石峰男(岡田眞澄)を 和歌子に紹介します。

その後全国に257か所有ると言う 何々銀座を紹介する中で、雪景色の 札幌市電の様子が映ります。
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雪乃は両親に内緒で ミス平凡コンテストに応募し、東京本選で入選します。和歌子は雪乃の両親に ファッションモデルとなる了承を 取り付けるべく大阪へ行き、和歌子の監視付きを条件に 話を纏めると 大阪球場で雪乃に伝えます。

赤石が投げてる大阪球場には 絵描きの振りをしている 望月三太郎(大坂志郎)も来ていて、南海電鉄難波駅をバックに 和歌子が所有する絵画の作者について 雪乃と話しています。
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また 高島屋の屋上へ 和歌子が向かった場面では、御堂筋から 南海電鉄難波駅が入る 1932年に完成した 高島屋百貨店が映ります。
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その後 三室戸は銀座の街からの 薬物撲滅を目指して、元締めである 銀座のGMを捜して 和歌子の夫である 京極克己(河津清三郎)に行き着きます。
その時 かねてより内偵捜査をしていた 望月刑事の指揮で 警官隊による一斉摘発が行われ、和歌子の絵を描いた作者は 京極の親友で 三室戸の兄 三室戸五郎であると告げた後に 逮捕を拒んで 拳銃自殺してしまいます。

一時は 三室戸の花屋で働いていた 和歌子でしたが、鵠沼で別れて住む 娘珠代(江川美栄子)の元へ帰るべく 新橋駅へ向かいます。
ルリちゃん達に「見送りに行かなくちゃ」と 花束を渡された三室戸は、新橋駅1番線 東海道本線下りホームへ行きます。

折りしも 海上自衛隊員の 壮行会が行われていて、ホームが混んでいる中 三室戸は和歌子を捜します。
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和歌子を見付けた 三室戸が「奥さん」と声を掛けると、花束を受け取った和歌子は「コニーさん・・・」と潤んだ眼で 呟いただけで言葉が続きません。
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そこへ 16:24発の833レ小田原行 80系初期型湘南電車が、二人を覆い隠す様に 到着したのでした。
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PS.
  森繁久彌のナレーションで つばめ号は朝9時に大阪を出発し、時速90kmで走って 夕方5時に東京駅へと到着しますと 紹介されています。

  ところが続いて「1等は無くなりましたが、偉い人は特急券無でも 乗れるという噂もあります」と続いています。脚本家は 本作公開2か月前に無くなった、1等寝台車と間違えたのでしょう。

  7枚目の画像で 雪乃は二等の8号車から降りてきましたが、隣の7号車は 帯無しでも3等車ではなく食堂車です。

  当時の食堂車は 普通急行列車と特別急行列車では 一品料理や飲み物のメニューが違い、定食も 普通急行が朝定食は150円昼・夕定食は240円に対して 特別急行列車では定食が300円・350円・500円の3種類でした。

  三室戸の花屋で働くルリちゃん(浅丘ルリ子)は 当時中央区立 今川中学校3年生で、(緑はるかに)でデビューしてから 本作が2作目でした。




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379.三等重役

1952年5月 東宝 製作 公開   監督 春原正久

地方では大きな会社である 南海商事の社長桑原(河村惣吉)が 会社内外の諸問題を、腹心の浦島人事課長(森繁久彌)と共に 抜群の感覚で明るく乗り切る コメディ調の人情ドラマです。

前社長の 奈良庄右衛門(小川虎之助)が 戦後公職追放となり、総務部長だった桑原が 急きょサラリーマン社長の様に 繰り上がったのでした。
本作のメイン鉄道シーンは 東京出張に出掛ける 場面にあります。地元の南海駅へ 桑原と浦島がやって来て、
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東京には 今晩8時半の到着ですと浦島が伝えています。

桑原は「今回は 出張所へ予告せずに、出し抜けに行く」と言い、ありのままの姿を 見たいそうです。 
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そして 前方へ進むと 東京へ同行することになっていた 顔見知りの藤山(進藤英太郎)が、なんと愛人の 芸者おこま(藤間紫)を連れていたのでした。
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そこへ C58形蒸機牽引列車が 到着したので、
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一同は 二等車へ乗車します。二等寝台車の 日中状態らしく、ゆったりしているだけが 良点の様です。
端の席で 藤山はおこまと宜しく やっているところへ、浦島が食堂車から 飲み物を桑原に 運んできました。
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浦島は桑原に「車内から夫人に 電報を打って、東京へ呼びましょうか」と言うと、「お鶴を呼ぶならまだしも・・」と言って 直ぐに取り消す 桑原です。
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その後 電機に牽かれた列車が 淡々と東京へ向かうシーンに続いて
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車内では 桑原と藤山が相席し、「帰りは箱根に 寄りたいが、同行しませんか」と藤山が誘いますが 辞退する桑原でありました。
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東京駅へ到着し 一行が降車口改札を抜けた所で、
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「あなた」と 藤山に向けて 呼び掛ける声がしました。藤山が驚いて 立ち止まると、「急にあなたと旅行がしたくなって、飛行機で来たんです」と藤山の京子夫人(岡村京子)です。
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藤山はまさか 夫人が先回りしているとは驚き おこまから離れると、「えらいものが 飛ぶようになったもんだ」と呟くのでした。

更に「ところでそちらの ご婦人はどなた?」と詰め寄ると、藤山は「こちらは要するに 桑原夫人だ」とドモリ声で 逃げます。それを聞いて桑原は「要するに家内です」と、冷や汗顔で 調子を合わせざるを得ませんでした。
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翌朝 8時半の鐘が鳴る 銀座四丁目交差点の 様子に続いて、
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横須賀線の 新旧形式の電車が混ざった姿で 走る傍らにある出張所に 二人はやって来ました。
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東京出張所 視察業務が終わり、帰りも二人は 九州直通急行列車に乗った様です。
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車内で旧知の 加藤さんに 偶然乗り合わせますが、
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「ちょっとヤボ用で 来た帰りです」と語った後で 話しに花が咲いています。
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PS.
  東宝サラリーマンシリーズでは(89.ホープさん サラリーマン虎の巻)と双璧の 先駆的作品で、好評だったので 続編が数本製作されています。

  1~4枚目の画像で ロケが行われた駅は、73おやぢ様のコメントから総武本線両国駅と思われます。

  車内シーンは全て セット撮影ですが、二等車は東京~九州各地を結んだ 直通急行に連結された 寝台車のヒルネを 意識していると思われます。(テーブルは・・・)

浦島は東京到着が 晩の8時半と言ってますが、20:30到着は 当時大阪発の 4レ特別急行列車はと号でした。
近いのは 20:08着の急行阿蘇号ですが、寝台車はゼロなので対象外です。
  本作の設定に合う 二等寝台車を連結していたのは、18:55に到着する 急行きりしま号でした。

  一方飛行機の方は 日本航空の 大阪伊丹空港15:50発の便が、東京羽田空港着17:30でしたので この便を京子夫人は使ったのでしょう。
但し特急はと号は一等車を使っても4580円に対し、飛行機は6000円もしました。さすがは社長夫人ですね。

  こうして夫の行動を怪しんだ 藤山夫人は、高額の飛行機で先回りして 東京駅で待ち構えていました。
  この場面は 実際の東京駅丸の内降車改札口で 行われた様ですが、現在では到底 不可能と思われます。


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378.三匹の牝猫

1966年9月 日活 製作 公開   監督 井田 探

一癖ある3人の女達が 美人局的に 男を誘惑しては騙し、巻き上げた金で 共同の夢を目指す アクション映画です。

三崎葉子(八代真矢子)は 暴力団里見興行の幹部 木村(郷英治)に 暴行された上に 肩に薔薇の入墨をされ、解放された隙に ナイフで木村を刺してしまいます。
木村の元から逃げ出した葉子は 明け方に帰宅すべく ふらつきながら、都電大久保車庫への 回送線を走る 12系等電車の横の 線路上を歩いています。
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その後 追手から逃げる為 葉子は矢代(藤竜也)の手引きで 熱海の島田(天坊準)の所へ向かうことになり、東京駅9番線で 矢代の見送りを受けています。
先ず 3ドアの111系か113系電車が入線してきました。
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続いて売店横で 話す二人の背後で、向かいのホームに 停車していた旧型客車列車が出発して行きます。
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この時代では珍しい旧客で サボは読めませんが、前夜に大阪始発で 13:45に到着した144レが 品川客車区へ 回送されるシーンでしょうか。

続いて113系電車らしきの 走行シーンが映って、
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一等車内で 化粧直しをしている葉子が映ります。
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すると 葉子から後方座席に座る女性が 隣席の男から、無理やりな行為を受けて 困惑している様子が見えました。
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そこで葉子は 二人の元へ行って
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向かいの席に座ると、「あたしと言う恋人が居ながら アパートから消えたと思ったら、こんな男と・・」と言うや 女の首を締め上げます。
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慌てた男は「偶然隣に座っただけだ」と言って 逃げて行きました。ところが助けた女は 斉田みどり(水上竜子)と名のり「退屈しのぎに からかおうと思っただけ」と言って仲良くなります。
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やがて列車は 熱海駅2番ホームへ到着し
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二人が駅前へ出ると、スケコマシの鉄(野呂圭介)が 今川まり(野川由美子)を騙して タクシーに乗せるところを目撃します。
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二人はタクシーで追い駆けると 連れ込まれた旅館の部屋では、本性を現したまりに 鉄の方がやり込められていました。

こうして仲良くなった三人は スケベな男を騙して 金を巻き上げ、自分たちの マンションを建てようと 誓うのでした。
最初は 首尾よく熱海の釘貫一家から 三百万円を奪い取り 逃走しますが、里見興行と 釘貫一家の双方から 追われてしまいます。

一方 葉子の行方を 心配していた矢代は、漸く居場所が掴めて 公衆電話から連絡出来ました。
その横の 都電専用線区間を、6000形らしき電車が 走り抜けて行く姿があります。
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PS.
  最初の画像は 新宿靖国通りから分岐して 都電大久保車庫へ向かう 連絡線で、回送車が運行される 非営業区間だった様です。
  八代真矢子(後に万智子)はともかく、新聞配達人は 都電側と打ち合わせた上でのロケでしょう。

  東京駅ホームでのロケは 当時では段々難しくなり、次の画像の様なシーンは 最後かもしれませんね。
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  そんな中で 旧型客車普通列車が映っている、東京駅でのシーンには 魅かれました。

  上野駅・新宿・両国などでは まだまだ残っていましたが、東京駅では ごく少数で 日中到着する144レは目立ちました。
  この他 熱海発の13:11着848レも残っていて、3.4枚目の画像は この列車の可能性もあります。

  九州行の急行列車 31レ雲仙・西海33レ高千穂・35レ霧島は、まだ昼行始発で残っていました。

  11枚目の画像は、急行型の153系でしょうか。急行電車が次々と発着する、華やかな時代とも言えるでしょう。

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377.青春三羽烏

1953年12月  松竹 製作 公開   監督 野村芳太郎

性格は違うが 仲の良い3人の男が、意中の女性との結婚を目指す コメディ調の青春映画です。

沖倉淡三(三橋達也)の家に 婿入先候補の 藤原仙子(高友子)が突然来訪し、沖倉の上着に入れていた 候補№6 宮田千晴(藤野高子)の 写真を見られて騒ぎ出します。
そこへ到着した中ノ目覚(高橋貞二)が 昨夜飲み屋で 上着を間違えたのだと誤魔化し、その後 到着した千晴を 強引に中ノ目が連れ出して 沖倉の窮地を救ったのでした。

すっかり憤慨して速足で歩く千晴を 追い駆けた中ノ目は、橋の上で追い付き 宥めている背後を ポール集電仕様の 都電初期型6000形らしきが走っています。
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喫茶店で話す内に すっかり意気投合した二人は、ひとまず別れて帰宅するべく 千晴は地下鉄乗り場に向かって行きました。

地下鉄銀座線の高架区間を 3輌編成の電車が走るシーンに続いて、
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東京急行電鉄 東横線への改札口を入った所で 二人は再会して驚きます。

続いて 東横線の高架区間を走る 東京急行電鉄3000系が映り、
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共に代官山駅で降りた二人は 手を振り別れます。
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ところが 角を2回曲がると、バッタリ再会です。実はお互いの家は、近所だったのでした。

千晴の叔母さんの家で飼っている 犬の具合を獣医大学生の 中ノ目が診ていると、千春の父親が 養子候補者に会いに 上京して来ると知らせがあったので 候補者代役として 会ってくれと頼まれます。

東海道本線 新橋駅上りホームに、EF58形電機牽引の 列車が到着します。
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先頭客車から 千晴の父親 宮田甚助(日守新一)が降りて来て、
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中ノ目が候補者として 千晴に紹介されました。
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二人と父親は 一緒に音楽会へ 出掛けたのですが、親友 牧野虎太郎(川喜多雄二)と 中ノ目の妹 桂子(紙京子)が 会場で揉めたことから、偽候補者であることがバレて 中ノ目は面会禁止と言われてしまいます。
跨線橋の上で 中ノ目と千晴は もう会えないが好意はある などと話す内に、
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下を72系らしき 国電が走り抜けて行きます。
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その後 中ノ目の亡くなった父親の 親友だった及川潔(北龍二)から 飼い犬が飲み込んだ ダイヤの指輪を、中ノ目が無事 吐き出させた御礼に 貰ったお金で母親シゲ(東山千栄子)と 温泉旅行に出掛けます。
電機牽引列車の走行シーンが映り、
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並二等車席に親子で 向かい合せに座っています。
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やがて列車が横浜駅に到着すると、
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中ノ目が窓から シューマイ売りを呼びますが 聞こえない様です。
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そこで デッキから呼びますが 通じないので、
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シゲが止めるのも聞かずに 中ノ目は走って買いに行ったのでした。
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シゲはハラハラドキドキの 様子ですが、中ノ目は「乗り遅れるもんか お茶は次の駅で買うよ」などと 余裕顔でシューマイを勧めています。
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一方及川が姪を連れて 中ノ目の行く湯河原温泉へ向かったと 牧野からの情報を聞いた沖倉は 千春の通う洋裁学校へ向かい、千晴と仲良くなった仙子の手前「湯河原で中ノ目と見合いさせようとしている 及川の計画打破の為 湯河原へ行こう」と誘います。

親子で湯河原温泉の旅館へ到着すると 及川が姪の秋子(東谷瑛子)を連れて現れ、暫くすると 沖倉が千晴を連れて合流し 更に千晴の父 宮田が駆け付け 騙された怒りで 娘を連れ帰ってしまいます。

皆も同じ列車で 帰ることとなり、宮田親子とは離れた席で皆 憂鬱な表情で 黙り込んでいます。
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そして及川が 最後の説得に、宮田の席へ赴き 説得すのでした。
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中ノ目親子が帰宅すると 桂子とケンカした牧野が、20:30の汽車で 実家へ帰ると出て行きました。桂子は20時近くなると出かけ、入れ替わりに 宮田が現れ謝罪するのでした。

新橋駅の改札口へ 桂子が到着すると、時計は既に20:37を指していて 諦め顔の桂子です。
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ところが横を向くと、旅行ポスターを見ている牧野がいます。
「乗り遅れたんだ 次の汽車は一時間後なんだ」と呟く牧野に、誤解が解けた桂子は 素直な気持ちを伝え 三組共にハッピーエンドとなった模様です。





PS.
  1枚目の画像は 橋の欄干に見覚えがあり、中央本線飯田橋駅前を走る 都電15系統かもしれません。

  2枚目の画像は 帝都高速度交通営団 銀座線(本作公開一週間前に銀座線と決定)神宮前駅(現 表参道)から 終点渋谷駅へ向かう、1000形らしき3連電車で(4連化開始される2年前)今は無き 東横百貨店が映っています。

  3枚目の画像は 東京急行電鉄東横線 渋谷から代官山へ向かう 3000系らしき電車ですが、1945年まで使っていた 並木橋駅ホーム跡が 撮影場所と思われます。

  4枚目の画像は 激変した代官山駅ですが、当ブログでは(62.踏みはずした春)でも 同じ方向から当駅が撮影されています。

  5~7枚目の画像では 宮田の上京場面を、珍しく新橋駅東海道本線ホームで 撮影しています。当時の上り列車は 2本の特急と特殊列車以外 全ての急行・普通列車が新橋駅に停車していたので、昼頃到着の 326レ(浜松始発)あたりの 先頭客車で撮影したのでしょう。

  8~9 枚目の画像で ロケが行われた場所は、遠くに私鉄電車らしきが映っていて 田端とは思えず分かりません。

  12~16枚目の画像で 横浜駅へ到着する列車は 7:36着7:38発の 325レ沼津行普通列車と思われ、シュウマイ売が 朝から販売していたのでしょうか。

  最後の画像で 桂子は牧野が 20:30の汽車に乗ると聞いて 新橋駅へ来ましたが、既に20:37なので 一度は諦めました。しかし 20:30頃の東海道本線下り 新橋発列車は20:24富士行849レと 20:40熱海行851レで、該当する列車がありません。

  上りが殆ど停車する新橋駅ですが、下りは 全ての急行列車が 通過だったのです。20:30の汽車と言えば、東京発神戸行 13レ急行銀河のことだったでしょう。牧野は「次の汽車は一時間後だ」と言いますが、故郷が神戸だとしても 21:00発の広島行21レ急行安芸で行けます。


こんなにも数多くの鉄道シーンが散りばめられている本作が、今まで全く小生のアンテナに引っ掛かりませんでした。
それ故に当ブログは、まだまだ続けるつもりです。

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376.この広い空のどこかに

1954年11月  松竹 製作 公開   監督 小林正樹

森田屋酒店主の 森田良一(佐田啓二)の処へ嫁いだ ひろ子(久我美子)が 姑・小姑と同居する環境で 自分の立ち位置が掴めず 悩む中で、理解ある夫の態度によって 徐々に森田家に馴染んで行く過程を描いた ホームドラマです。

タイトルクレジットの 終わりに、川崎駅らしきの 空撮映像が始めにあります。
序盤 森田家の明るい次男 登(石浜朗)は 京浜線 田端駅近くの高台で 苦学生の三井(田浦正已)と 人生観を語っていると、遥か先の築堤を 東北本線の下り蒸機牽引列車や 上りの気動車列車が走っています。
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また 三井の背後下方には、京浜線田端駅らしきが 映っています。
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森田家の長女 泰子(高峰秀子)は 空襲で足が不自由となり、婚約者にも逃げられ 28歳となって投げやりな性格で ひろ子にも冷たくあたる毎日です。

ある日泰子は 東海道本線らしきと交差する 道路工事現場で働く 旧友の夏子(中北千枝子)と偶然再会し 話していると、背後を 京浜線の電車に続いて
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D51形らしき 蒸機牽引の長い貨物列車が通っています。
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その後 ひろ子の田舎から出て来た 旧知の信吉(内田良平)が 帰郷する晩に ひろ子を訪ねて来て、母しげ(浦辺粂子)と泰子は 疑いの目で噂するので ひろ子は飛び出してしまいます。
後を追った森田は 川崎駅改札口で二人を発見し、
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二つのウイスキー包みを 信吉とひろ子の父親へと託します。改札口で信吉は 爽やかにひろ子と挨拶を交わし、
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更に「お父さんには幸せに暮らしていると伝える」と言って 去りました。
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終盤 抑留先から帰国後 二年間療養していた 元奉公人の俊どん(大木実)が 森田家を訪問しますが、事前に来た手紙に 泰子ことばかり書いてあったことから 泰子は逃げてしまいました。

ところが 俊どんが帰った後に 帰宅した泰子は、皆から「足が無かろうが泰子さんは泰子さんで、今でも好意を持っている」との話を聞いて 俊どんの元へ押し掛ける 決意を固めます。

そして 翌日出先から 電話してきた泰子は、森田に「荷物を東京駅まで持って来て」と頼みます。
先ず 定石通り東京駅丸の内駅舎が映り
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トランクを持った登が 8番線ホームに上がって捜すと、
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列車のデッキ横に立つ 泰子が声を掛けて 登も気付きました。
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登は泰子の胸中を慮って 余計なことは言わずに 明るく簡潔に会話し、
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トランクと土産と小遣いを渡して
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不要な風呂敷包を受け取り別れます。
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やがて泰子を乗せた普通列車は、静かに東京駅から出発して行きました。 
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PS.
  2・3枚目の画像は 非電化時代らしき 東北本線尾久支線を走る列車の様で、宇都宮電化4年前なので 殆どの列車が 蒸機牽引列車だったと思います。

  6枚目の画像は 東海道本線を走る 蒸機牽引の貨物列車ですが、品川区にも まだD51が配置されていて 横浜地区の貨物線が 電化前なこともあって 周辺の貨物列車は 蒸機が担当していた様です。

  最後の 泰子旅立ちシーンは、東京駅8番線ホームで ロケが行われた様です。登は発車前の 14:15に泰子と別れたので 当時の時刻表によると、14:25発の 111レ門司行普通列車が想定され 静岡到着は18:36です。
  しかし実際には 国鉄にお願いして 回送列車にエキストラを乗せた上、品川客車区まで行って 降車したと思われます

  泰子が向かったのは 静岡の山奥で「エンジンの音を響かせて、一日一回 トロッコが材木を乗せて通る」と手紙で知らせたので、赤石山脈南端の 千頭森林鉄道支線沿線等が 俊どん宅と想定されます。


  ひろ子が姑・小姑に いびられ 落ち込んでいる時、森田がスクーターに ひろ子を乗せて快走し 洋服屋へ向かうシーンがあります。
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  これは同年4月に公開されて その年の外国映画№1となった(ローマの休日)の中で、ベスパのスクーターに乗った グレゴリー・ペック と オードリー・ヘプバーンが ローマ市内を快走するシーンを意識した 演出と思われます。
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371.特急にっぽん

1961年4月  東宝 製作 公開   監督 川島雄三

東海道本線の 特別急行列車内を舞台に、食堂車従業員と 乗り合わせた ひと癖ある乗客達との やり取りを描いたコメディ映画です。

冒頭 タイトルクレジットの最後に、当時の田町電車区~品川客車区を 一望するシーンがあります。
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日本食堂品川で 食堂車コックの矢板喜一(フランキー堺)は、各種食材の上に パーラーカー専用材の入った箱を載せて リヤカーを牽いて 電車区へ向かいます。
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途中で 食堂車会計の藤倉サヨ子(団令子)から、前日伝えた「結婚して大阪で食堂しましょ」の返事を 今日大阪に着く迄に してと言われます。二人の上を、EF58形電機牽引貨物列車が走っています。
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田町電車区に留置中の 151系こだま号の食堂車搬入扉から 矢板が食材を積み込んでいると、先頭車乗務員扉から 乗り込もうとしている スチュワーデスから「踏み台を貸して~」と声が掛かります。
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食堂車クルー全員で ブランチを食べている頃、
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一等車座席では今出川有女子(白川由美)達4人の スチュワーデスがお化粧の仕上中です。
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やがて回送列車として 電車区を出発すると、
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12時15分 東京駅15番ホームへ入線します。某宗教団体客は、乗車前から ホームで大騒ぎの様子です。
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一等乗客は スチュワーデスが出迎えますが、菓子会社社長の岸和田太市(小沢栄太郎)は 旅館の女将達の見送りを受けながらも 有女子に目を付けています。
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発車時刻が迫ったので 降車した女将(塩沢とき)は、
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1号車に警官が警備する中 乗り込む政治家と 目つきの鋭い警護員達を見て「ヤクザの親分じゃないの」と呟きます。
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12時30分 1号車パーラーカーを先頭に出発した 特別急行こだま号は、
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専務車掌 影山(石田茂樹)が 案内放送に続いて 有女子と組んで検札を行います。

一方 7号車ビュッフェから出発した 車内販売担当の、谷村ケイ子(柳川慶子)と宮川セツ子(紅美恵子)は カートを押して5号車へ行きます。
検札中の有女子から 行く手を阻まれると 前方客から声が掛かったので 強引に突破し、押された有女子は 岸和田の膝の上に乗っかってしまいました。
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食堂車開店の放送があると 甲賀げん(沢村貞子)康雄(滝田裕介)親子は 直ぐに向かいますが、案内された席の向かいには 酔いどれの老人(田武謙三)が 独り言を吹いていて落ち着きません。
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列車が熱海駅へ近づき
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2番線へ停まると、チャイナドレスを着た 伊藤ヤエ子(中島そのみ)が乗り込み、
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岸和田の隣席に座り 色仕掛けで篭絡しようとするつもりの様です。

有女子は岸和田から 店を出してやると言われ、矢板に ここを辞めて一緒に店をやろうと、食堂車の調理室内まで 押しかけて口説いています。

四時半からの 予約制夕定食 第一回目が始まると 16:43名古屋に到着し、
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3分停車の間に 食堂車の給水・資材搬入時に矢板達3人は些細な事からケンカを始めてしまいます。
一方 一等車のビジネスデスクでは、女流作家が原稿を 下書きする姿もあります。
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その後 ひょんなことから車内に 爆弾が仕掛けられたとの噂が広まっているところで 列車は なんと最高速度138キロに!
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 その時 踏切でエンコしている ダンプのせいで、列車は突然緊急停車します。
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そして 矢板とサヨ子がお互いの話を 閉店となった食堂車でしている所へ、公安官の青木(堺千左夫)に追われた スリの下谷(平凡太郎)と上野(谷村昌彦)が現れ ドタバタの乱闘の末に逮捕されます。
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やがて 京都へ9分遅れで到着すると
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有女子とつきあっている佐川英二(太刀川寛)が ホームで有女子を待ち構えていましたが、岸和田の話を聞くと怒って帰ってしまいました。
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終着大阪へ着く時には
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ヤエ子が有名な女スリの(風船のヤエ)であると分かって 皆の財布や青木の手帖も戻り、矢板とサヨ子の誤解も解けてハッピーエンドなのでした。





PS.
  獅子文禄が 1960年1月から 週刊新潮に連載した「七時間半」を原作にした作品ですが、原作は 連載開始当時運転されていた 客車特急はとに乗務する(はとガール)と食堂車乗務員との間の軋轢を ひと癖ある乗客達とのやり取りと共に 描いています。

  ところが本作公開の前年 1960年6月から 東海道本線昼行特急は 全て151系で電車化され、つばめ・はとガールは 廃止されてしまいます。
  そこで現実には無い 東京12:30発大阪行の 特別急行こだま号を設定し、一等車のアテンダントとして スチュワーデス4名が乗り込むという 架空の設定にしての 脚本となっています。

  発車時刻は 旧はと号と同じに合わせていますが 151系電車なので、名古屋到着は 40分早く・大阪到着は 1時間早くなります。

  日本食堂での食堂車女性クルーの点呼では、会計係の藤倉サヨ子以下食堂車5名・車内販売2名・ビュッフェ2名・パーラー担当1名・電話担当1名の合計11名が乗り込んでいます。
  男性は食堂長森山(丘寵児)・チーフコック渡瀬政吉(森川信)・矢板・他2名・ビュッフェ担当2名の合計7名体制だった様です。

  田町電車区で乗り込むシーン以外に、出演者が現場でロケしたのは 東京駅での11番目画像の塩沢とき達と、12番目画像の 1号車乗り込み場面位でしょう。
  9番目の入線時画像の宗教団体客は エキストラで撮影し、驚くことに 東京・京都のホーム場面 車内シーンは全てセット撮影でした。

  16番目の画像は ミニチュアで 熱海到着前シーンを撮り、熱海を出ると 新幹線用の新丹那トンネル工事現場を横に
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丹那トンネルへと入って行きます。
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  東宝のステージに 一・二等車・食堂車・ビュッフェ・パーラーカー後ろ部分の、全長80mに及ぶ 同スケールのセットを製作して 撮影したそうです。
  美術スタッフが サンロクトオに向けて 製造中の工場(たぶん汽車会社東京)へ13日間通って、見学・写真撮影・採寸して シート等は模作の上に 持ち込み比較するなど 苦労の末に作ったセットだとか。

  食堂車の座席と調理室の境に 会計台が右側にあり、その前に「枯れ木」と称した 斜めの飾り木があり、透明のパーテーションで 会計台と仕切られています。(調理室を含め、忠実に再現されています)
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  6枚目の画像で 架空のスチュワーデスが 一等席で化粧や髪を梳かしています。昔の はとガールも 乗務する一等席(当時は二等席)で 化粧直していましたが、大きな白布を 首から膝下まで掛けた上で行っていました。
  清掃の終わっている 一等席で髪を梳かすなど、いくらコメディ映画としても あんまりですね。(はとガールOGが 本作を観たらガッカリでは)

  18枚目の画像は 名古屋駅で 101レ大阪行の第一こだま号と 104レ東京行の第一つばめ号が、共に11:13着・11:16発の同時発着で 両列車がダイヤ通りならではのシーンですね。

  パーラーカー登場場面は 謎の酔いどれ老人が 間違えて乗ろうとして 警護員に排除される場面と、
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爆弾騒ぎの時 公安官が警護員の所へ来た場面程度で 室内シーンが無いのが残念です。
  この時パーラー係の 藤本マサ子が、酒類が並ぶ サービスコーナーを背に立っています。
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この部分は通路を挟んで 反対側に 冷蔵庫と冷水器があったそうです。(画像では警護員が冷蔵庫に 寄りかかって座っていました)
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  日食の点呼場面では 食堂車クルーの内マサ子が パーラーカーアテンダントとして 乗務していた様です。 しかし広岡友紀氏の記述では「飲み物のシートサービスは スチュワードさんが・・」とあるので、列車給仕の方が 行った時もあったのでしょう。
  パーラーカーでは 区分室と開放室の間に 幅700㎜の乗降口があり、入ると大きな荷物置場の隣に 給仕室がありました。

7号車の半室ビュッフェで 右端に電話室があり、電話係の橘高カズ子が 乗客に取り次ぐシーンがありました。
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外部からの電話も係が取り、呼び出し放送をしました。

  パーラーカーの乗客だけは 外部へ電話する場合、席横の給仕ボタンを押して 給仕に頼みます。すると給仕室から ビュッフェの電話室に内線電話し、外部へ無線電話で取り次いでもらい、給仕は携帯受話器を客席に持参して 席のジャックに差し込み通話したそうです。
  また1960年6月から運行開始した パーラーカーですが、泉屋・ユーハイム・コロンバン何れかの 袋入りクッキーと コーヒー・紅茶のシートサービスは 8月10日から開始だったそうです。(2枚目の画像で、箱の中身はこれでしょうか)


  ラストシーンで3分程 BGMだけで パントマイムの様に ジェスチャーで、仲間が心配する中 矢板とサヨ子の誤解が解けて ハッピーエンドとなる迄を 描いているのが珍しいですね。


参考 : 鉄道ピクトリアル №109・809・815   国鉄 特急電車物語 福原俊一  

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359.重役の椅子

1958年4月  東宝 製作 公開    監督 筧正典

極東商事 総務部次長 船田三郎(池部良)が 上司の急死で二号さんや その親戚の娘と知り合う一方、会社内での勢力争いと 社内人事の裏側を描いた サラリーマン映画です。

上司である 相川総務部長が急病死した為 船田は塚越正信社長(十朱久雄)の指示で、急遽 大阪の関西物産へ 大口の契約締結交渉の為に 出張することになりました。
会社で 田崎秘書(松尾文人)から 大阪への乗車券・急行券・寝台券を渡されますが、
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この切符は社長命令で 田崎が亡くなった相川部長のポケットを 探って取り出したものでした。

続いて 寝台車の個室から出て 通路を歩く列車給仕が映った後、
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寝台車の上段で 浴衣に着替えて書類を確認している船田の 寝台カーテンが突然開けられ 着物姿の女性が 船田の目の前に現れました。
女性は「あらごめんなさい」と詫びて カーテンを閉めます。
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船田は切符を確かめ、間違いないことを確認します。
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その間にも「横浜~横浜 21:04発大阪行 二三等急行月光号です」と、横浜駅での構内放送が聞こえています。

再度女性から「あの~失礼ですが」と声が掛かり 船田がカーテンを開け「私の寝台券は間違いありませんよ」と答えると、
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「もしや他の方から…」と女性が聞くので「実は部長が急死したもんですから」と答えるや 驚いた顔で「相川さんが…本当ですか」と 絶句した様子です。
それを聞いて船田が「相川さんを御存じなのですか」と問うと 否定し、個室の扉を開けたままで 女性は通路からデッキの方へ行ってしまいました。
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床には 女性が持参した手土産か、焼売の包みが二つ落ちています。
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後日 無事大役をこなして 帰京すると、会社に 和田きみ子(淡路恵子)という女性が 船田を訪ねてきました。喫茶室で会うと「相川から万一の時は 船田さんにお願いして、会社の机から 子供名義の預金通帳を 出して頂くように」と聞かされました。
船田は 勝手に遺品に手を付ける事になると 悩んだ末に 遺族が来社する日の 際どいタイミングで入手し、きみ子のアパートで渡すと感謝され 親戚の若い女 英子(団令子)とも知り合います。

そして英子は船田に惚れ、妾になりたいと志願される始末です。
一方 社内で意気投合した専務の立花愼介(河津清三郎)と熱海へ静養旅に誘われ、立花は柳橋の芸者 松栄を同伴するので 船田は英子を連れにと誘いました。
デッキから二等車のドアが開き、買い物をしてきた英子が陽気に現れます。
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そして「美味しいわよノシイカ」と明るく言いながら皆にノシイカを配りますが、
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仏頂面一辺倒の船田に対して「失礼しちゃうわ!人のこと誘っておいて」と言いながら肘鉄+耳を抓りあげる始末です。
それを見た立花が笑いながら「どうしたんだ船田君 散々じゃないか」と言うと、
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船田は表情を変えずに「何分不慣れなもので」と応えたので 松栄は「いゃだわ~」と言いながら 船田の膝を叩き 一同爆笑です。
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旅館でお互い 別々の部屋に分かれ さていよいよと 英子が期待した時、突然「松栄が胃痙攣で大変だ」と 立花に呼ばれた二人は 一晩中看病する始末となってしまいました。
翌日 何とか帰って来た4人は、東京駅で挨拶を交わして 別れました。
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英子が「いやよ!このまま帰るのは」と言った時、通り掛かった 知り合いの宮本直彦(佐原健二)に 女連れの旅帰り姿を 見られてしまい 散々な静養旅でした。

その後 塚越社長は妻の弟で 青山商事 総務部長の富田(伊豆肇)を 次期総務部長に就任させる為、クラブで働く きみ子を口説こうとして 難航している竹山会長(柳永二郎)に 裏取引で斡旋しようと 画策します。しかし きみ子の機転で裏工作の
の存在を伝えたので 竹山を怒らせ 社長は立花に替わり、船田は大阪支店への左遷を逃れて 総務部長に就任することになりました。
また 家族との板挟みで 悩む船田の様子に、英子は船田と別れて 鳥取の実家に帰ることを決意しました。英子が帰郷する日 船田は東京駅へ駆け付け、動き出した列車のデッキに立つ英子と 握手を交わし見送ります。
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去り行く列車のデッキから 手を振りながら英子は、「立派な重役さんになってね」と叫んでいます。
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その声をしみじみと聴きながら、船田は8番線ホームから 静かに英子を見送るのでした。
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PS.
  船田が田崎秘書から受け取った 切符の当時の価格は 都区内から大阪市内への二等乗車券(2380円)と 600㎞迄の二等普通急行券(840円)・二等C下段寝台券(1560円)でした。しかし何故か 船田は東京から乗車したと思われる時から 上段寝台にいます。
  田崎秘書は 相川から頼まれ 度々出張の折に 二人分の切符を 手配していた様ですから、横浜から乗車駅を ずらして乗って来た 相手のきみ子が持っていた寝台券は 通常下段の筈で 普通の男は映像での船田の様に 上段に寝ました。
  ところが切符のシーンで、下段寝台券が映っているのは 手違いでしょうか? 眼の良い観客は(私の寝台券は間違いありませんよ)と言い張る船田こそ 間違っているのでは?と思ったことでしょう?!

  寝台車と次の 特ロ座席シーンは セット撮影の様で、12枚目の画像と 最後の東京駅8番線見送りシーンは ロケのようです。寝台車は4人用個室が連なり、月光号にも当時 2年10か月間存在したスロネ30形二等寝台C室を 意識していると思われます。
  でも 戦後製作された スロネ30形にしては内装が、高級木材を使った 戦前製の一等寝台車の内装の様に思います。

後日 米田作市様よりの ご指摘もあり、スロネ38形でのロケか似せたセットでの撮影の様です。

  また 17レ急行月光号は 横浜22:03発車であり、21:04発車に近いのは21:03発41レ急行筑紫号博多行なので 架空放送の様です。声調が(300.張込み)の 横浜駅構内放送音声と似ており、駅の放送が 得意な声優さんが 当時はいらしたのでしょうか?

  英子は船田との愛を諦め 東京駅8番線から 鳥取へ帰るのですが、札無しの普通列車を使っています。行程を想像すると東京 14:20 ―(111レ門司行)― 4:00 京都 5:40 ―(825レ出雲市行)― 12:13 鳥取 と 22時間程掛かりますが 乗り換え1回だけです!

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356.警視庁物語 魔の最終列車

1956年3月 東映製作公開   監督小澤茂弘

急行列車の後部に連結されている郵便車内で 強盗殺人事件が発生し、沿線で発見した遺留品から犯人逮捕に迫る 捜査陣の活躍を描いた警察もの映画です。

冒頭 明け方に東海道本線 多摩川橋梁らしきを渡る列車が映り、
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電機・三等車7輌・二等車3輌の後部に 郵便車・荷物車らしきが連結されています。          
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郵便車の車内では 郵袋をチェックしたり 仕分けした 郵便物を本局毎にまとめた束を 郵袋に詰めたりと、終着駅が近付いた様子の 作業が行われています。
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そこへ トレンチコート姿の男が静かに侵入し、3人の職員を 拳銃で続けて撃ち倒してしまいます。
男は倒れた3人を尻目に 赤行囊(あかこうのう)を開けて 札束を確認すると、再び縛って
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腕時計も確認し 郵袋室へ移動して 扉を開けると袋を投げ落としました。

やがて列車は 品川駅手前の京浜急行電鉄「八ツ山橋梁」を潜ると、
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品川駅構内を走り
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7番線へ到着しました。
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後部の郵便車も 停車する様子が映ります。
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品川で降車する人々が 意外に多く、階段方向へ進んで行きます。
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リベット打外装の郵便車から 帽子を眼深に被った男は、人目をはばかる様に出てくると
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降車客に紛れて逃走します。
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続いてドアが開いたままの郵便車を 不審に思った公安官は、車内で倒れている3人を発見し 警視庁捜査一課へ「博多発1006列車内で 強盗殺人事件発生」と通報されました。

列車は品川10分延発で 東京駅にて現場検証が行われることになり、捜査一課の面々と鑑識課員が 東京駅9番線へと向かいます。報道陣は 階段の規制線で阻止されてしまうのでした。
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東京駅でのロケとセット撮影部分を、交互に繋いでいる様にも思えます。
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当初は 一人だけ生き残った佐藤職員(岡野耕作)の 狂言かと思われましたが、当人に拳銃発射痕跡が無かったので 外部からの侵入者による 強盗殺人事件と断定されます。

奪われた京都産業銀行の 送金赤行囊被害額は 1300万円で、犯人が目立つ赤行囊を 沿線の共犯者に投げ落としたのではと捜査が始まります。

横須賀線の70系電車らしきが走行する沿線で
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真田刑事(堀雄二)は薬莢を発見し、付近には新しい大型乗用車のタイヤ痕がありました。更に第四種踏切を渡った先で
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動員された警察犬が血液の付着した封筒を発見します。
封筒には 謎の計算式が記してあり、
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宛名が日暮里の 木村雄三とありました。若手の宮川刑事(南原伸二)が計算式を見て、「横は横浜発時刻で 品は品川着の時刻から 所要時間を出し、投下地点の通過時刻を割り出した計算式だ」と推測します。

一方 宛名住所へ向かった真田刑事は、C57形蒸機牽引列車が通過する 常磐線踏切と
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立体交差する京成電鉄高架線下を 歩いて木村宅へ向かいます。
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家には母親(千石規子)がいて、本人は四・五日帰ってこないと言います。真田は任意で 家に入れてもらった割には、机の引き出しを勝手に開けて 木村が女と写した写真を入手します。

木村が勤めていたキャバレー{八番街}隣の森田商行に 遺留品現場に残されたタイヤ痕と 同じホイールベースの大型乗用車が、頻繁に乗り付けられていることを 捜査陣は掴みます。
木村が事件に関与していると踏んで 捜していた捜査陣でしたが、72系電車らしきが走り抜ける中央線の線路近くの
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雑木林で木村の遺体が発見されました。
一見所持している拳銃による自殺ですが、本人が撃っていないので 他殺と断定されました。

宮川刑事が キャバレーの客として入店し 更に奥へ潜入して探っていると、森田の子分で 元プロレスラーの柏木(萩原満)に 殴り倒され捕まってしまいます。
一方 真田刑事が森田商行へ出向き 木村の写真を見せることで 森田と柏木の指紋を取得し、京都産業銀行強盗事件で 残された指紋と一致したことで 捜査陣は森田達を逮捕に向かうのでした。





PS.
  1006列車とは 1954年9月迄 佐世保を真夜中の2:00に出発し、山陽本線から呉線を経由して 進駐軍の関係か小駅「風早」にも停車する特殊列車でした。

  ロケ当時は 急行早鞆号として 東京と博多発着となりましたが、三等車無しで 全車二等車の豪華編成のままで 呉線経由もそのままでした。ネC・ネAB・ネAB・ネC・ネC・ロ・シ・ロ・ニ・ニの10輌編成です。

  1006レ上り急行早鞆は 博多 6:00発 ― 翌5:55 横浜着 6:10発 ― 6:40東京着でした。つまり横浜で15分も停車し、発車すると 以後は特急の様に 東京まで無停車で 品川には停車しません。

特殊列車時代から上りの横浜発着時刻を含むダイヤは 一貫して変わらず運行していた1006レだけに、空想とは言え 脚本家は何故1006列車を選んだのか不思議です。

  冒頭に登場するEF56 らしき電機が牽く列車は 三等車7輌・二等車3輌・ユ・ニの編成ですが、当時の時刻表から この列車は12レ急行明星号と断定できそうですし 脚本が12列車だったらスッキリでしたが・・・。

  ですから品川駅到着シーンの列車は 編成全てが映っていないので特定できませんが、リベット打外装の郵便車と 新しい郵便車が連なっている場面は 郵便車が2輌連結された急行列車が存在しないことから 或いは荷物専用列車の一部を映したのかもしれません。

  強盗犯が品川駅で伏目がちに降車する場面と 東京駅9番線で現場検証する場面の郵便車は セット撮影の様です。

  冒頭の明星号らしきに連結されている郵便車はスユ42形らしき、取扱使用郵便車の様です。この車輛は車内で郵便物を区分し集配最寄駅で郵便・小包を積み下ろしする車輛だったそうで、車内シーンのセットもスユ42形を想定した造りとなっています。

  多額の現金を赤行囊と言う布袋に入れて郵便物として運ぶ割には、一般急行列車に連結してカギも掛からない車輛で混載して運んでいたとは驚きです。マニ34形等の日銀券輸送車とは扱いの発想が違った様ですね。

18枚目の画像から宮川刑事が赤行囊の投下地点の通過時刻を割り出す計算式と推定しますが、当時横浜~品川の所要時間は20分でしたので画像の28分は掛かり過ぎでは?と思って時刻表をよく読むと横浜~新橋の所要時間でした。(品川での停車時間を含む)
  脚本家は時刻表の門司からの距離欄で横浜は1074.0㎞・品川1096.0㎞のところを新橋1098.9㎞の数値を間違えて使った様で、更に途中の計算式も間違えています。 24.9÷28=0.889 分速889mが正解 分速933mにはなり得ない。

メモの13.5を横浜駅~投下地点までの距離13.5㎞とすると、メモの6時07分30秒ではなく6時10分12秒となります。

更に正しい横浜~品川22.0㎞・所要20分から、13.5㎞の投下地点通過時刻は6時07分16秒です。(無理やり計算式で誤差14秒としていますが、実際には投下予定地点で待ち構えた森田の 14秒後に257m先の場所へ木村は投下した?)

  日暮里駅近くで京成電鉄の高架線と立体交差する常磐線の踏切は(338.警視庁物語 夜の野獣)等でも登場するロケの名所だった様です。

  木村の遺体発見現場近くで映る72系電車の最後尾には半室二等車が連結されています。本作公開の翌年101系電車(1959年まではモハ90系)の登場期に、中央線電車の二等車は廃止されました。(2023年度末に復活予定)

(鑑賞時に感動した本作だけに、重箱の隅を楊枝でほじくり過ぎでした! 反省!)

  





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351.あなた買います

1956年11月 松竹 製作公開   監督 小林正樹

プロ野球々団スカウトの 岸本大介(佐田啓二)が、大学野球の強打者 栗田五郎(大木実)を獲得するべく画策する スカウト稼業の裏面を描いた映画です。

冒頭 有望投手 高山に会う為 茨城交通湊線の那珂湊駅へ到着した蒸機牽引列車から
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東洋フラワーズの岸本が降りて来ました。
タクシーで 石灰石鉱山らしきへ行き 職員(稲川忠完)から「凄い球を投げるが、水戸の方からいい話があった」と聞いていると、背後を小型内燃機が 通過して行きます。
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しかし尋ねると 怪我をしていて当てが外れました。

栗田の両親から 委任状まで貰っている パトロン 球気一平(伊東雄之助)を篭絡しないと 栗田を獲得できないと悟った岸本は、料亭で接待したり 大相撲に招待したりと 気を使いますが 球気は他球団と天秤に掛けている様です。
秋のリーグ戦が終わるまで 契約交渉をしないと宣言していた 球気と栗田は 東洋フラワーズから 契約金額提示を受けると、実家で両親と相談すると 四国の実家へ向かうべく 東京駅で球気と待ち合わせます。

22:27
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東京駅14番線ホームの 急行せと号の前で落ち合うと 球気は「君の実家から絶縁状が届いた 兄さん達と 君の意思が違っても貫くんだ」と伝え、栗田がデッキへ乗り込もうとした時
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球気は 急にお腹を押さえて 苦し気に倒れ込みました。
慌てて栗田が駆け寄ると
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「君の口から 東洋フラワーズに決めたと 聞きたい」と話すと栗田は頷き、
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更に「さあ汽車が出るよ」と聞くと 栗田は動き出したせと号の デッキに飛び乗り
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心配そうな顔で去り行きました。
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列車が見えなくなると 急にすっくと立ち上がった球気は、周囲の怪訝な視線を気にせず 階段を駆け下りて行ってしまいました。

翌日 岸本は飛行機に乗り 更に夜行列車に乗り継ぐと、並ロの車内には 各球団のスカウト達が 乗り合わせていました。
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一人離れて座る岸本は「狸・貉・狐・モモンガと 何れも化かし会い 明日は実弾の雨が降りますよ」などと、自らも含めた スカウト合戦を 自嘲気味に皮肉って呟いています。

翌朝 電化線路併用軌道横を 各社の車が走り抜け、一路 栗田の実家を目指します。
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夜 最寄りの国鉄駅へ 車を走らせ降りた岸本は
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売店で各スポーツ新聞を買い込み改札口を通って
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読んでいると、汽車が到着し「岸本さん」と呼ばれて行くと 二・三等合造車デッキから 球気と愛人の谷口涼子(水戸光子)が 車掌に介助されながら降りてきました。
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球気は 病気が悪化した様子ですが、栗田の恋人だった 谷口笛子(岸惠子)から「時に仮病を使う」と聞いていたので 半信半疑の岸本です。
翌日 ゴタゴタの後 旅館で女中さんから 電報を渡され、「後免駅へ10時着く 迎え頼む 笛子」の電文に
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時計を見ると既に10:20です。 
後免駅を降り立ち 
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誰もいないので 川沿いの道を歩く笛子ですが、ランニング中の栗田と会い 遅れて車で来た岸本とも合流し 病床の球気に面会します。

胆石が悪化し 苦しむ球気の床へ 栗田が来ますが、球気や岸本を裏切り 土壇場で「監督が良いので、大阪ソックスに決めました」と宣言したのでした・・・






PS.
  かなり昔から 本作の冒頭で(茨城交通湊線の那珂湊駅へ到着する 4号機関車牽引列車が登場する)と、記述された文献を あちこちで見かけていました。
  しかしご覧の様に 暗く不鮮明な映像であり 斜め後ろから撮っているので、4号機と断定もできず ハフ13・14らしき L.10m級 二重屋根の古典的客車も確定は出来ません。

  4号蒸機は 1897年英国ナスミス・ウィルソン社製で、鉄道省600形631を 1927年譲渡され 空襲で被災するも生き残り、廃車間近い1963年に 後継内燃機の都合なのか 国鉄郡山工場で百万円を掛けて修理され 1966年9月に解体されるまで動いた 長生き蒸機だったそうです。

  那珂湊駅で ロケが行われたのは 確かな様ですが、続く鉱山は 手掛かりがありません。露天掘りの石灰石鉱山らしく、5t級の内燃機が映っています。

  高知の実家へ向かうべく 東京駅14番線ホームで球気と会い 22:30発宇野行 急行せと号4号車の 並ロに乗車したシーンですが、当時の時刻表では 急行せと号は 15番線からの発車です。
  せと号としては画像通り 荷物車に続く4号車並ロが先頭ですが、それは併結された 急行いずも号1~3号車が切り離された 大阪以後のことです。しかも4号車に続く 5号車以後は 本来 特ロ・ハネ・ハの筈が三等車ばかりです。

  想像すると 終列車後に国鉄の協力で 宇野行のサボを架けた ロケ用の列車を用意してもらい、エキストラを動員して 深夜にロケが行われ アフレコの構内放送を加えたと思われます。
  栗田の行程は 東京22:30 ―(23レ急行せと号)― 13:45 宇野 14:05 ―(宇高連絡船13便)― 15:20 高松桟橋 15:35 ―(105レ準急南風)― 19:02 後免

  岸本が栗田を追い駆ける様に 高知へ向かった行程を 映像から想像すると、東京 羽田14:50 ―(日本航空305便)― 16:45 大阪伊丹-(神風タクシー)-大阪 17:20 ―(245レ)― 21:29 宇野 21:50 ―(宇高連絡船929便)― 23:05 高松桟橋 23:55 ―(135レ)― 5:40 後免(無理やり飛行機を使っている感じです)

  栗田の実家は 高知県安芸と推定されます。そこへ向かう車が電化された 道路併用軌道横を走りますが、これは1974年に廃止された 土佐電鉄安芸線の線路と思われます。(電車が映っていないのが残念!) 
  岸本が 長男の栗田為吉(三井弘次)に 港の貯木場で会うシーンの スチール写真には、ナローレールらしきが 映っているので 魚梁瀬森林鉄道 奈半利川線のあった 奈半利町かもしれません。 

  球気や笛子が降り立つ駅は 土讃本線後免駅です。笛子は10時に到着する電報を 打ちますが、該当する列車は 10:01着と思われる 上り高松桟橋行の 106レ準急南風号のみです。(下りは10:50着の115レ)
  これを元に 行程を想像すると 東京 9:00 ―(1レ特別急行つばめ)― 17:00 大阪 17:20 ―(245レ)― 18:00 神戸-(タクシー)-神戸港 19:30 ―(関西汽船)― 9:00 高知港--高知 9:50 ―(106レ準急南風)― 10:01 後免 かなり無理な妄想が成り立ちます。

最後に 社長達が空路高知へ到着しますが 再現すると、東京 19:30 ―(11レ急行明星)― 6:11 大阪-(タクシー)- 伊丹空港 8:00 ―(極東航空53便)― 9:10 高知空港 というルートがありました。


参考 ひたちなか海浜鉄道 湊線100年史 ・ 鉄道ファン №35

  

  










  








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334.ファンキーハットの快男児

1961年8月 ニュー東映 製作 公開   監督 深作欣二

遊び人の天下一郎(千葉真一)が 探偵事務所を営む 父親譲りの勘を働かせ、幼児誘拐に始まる一連の事件解決に活躍する アクション青春映画です。

国産省 建設局長 木暮(加藤嘉)の家で働く女中 ルメ(新井茂子)は 故郷の弟が上京して 駅で待っているとの ニセ電話で、一郎の相棒 近藤茂(岡本四郎)の車で 京王帝都電鉄 井の頭線 高井戸駅に送ってもらいます。
現在の環八通りと立体交差する線路上を 当時の1000形らしきが走る姿が映り、
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ルメが築堤の上に在る 高井戸駅改札口へ向かいますが 弟はいないので 階段を降りて戻って来ました。
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その頃 ニセ電話を掛けた女は 幼稚園の送迎バスから降りた木暮靖幸(くさかべ雅人)を、ルメの代わりに待ち伏せ まんまと誘拐したのでした。
その後 自宅で身代金要求の電話を受けた 靖幸の母木暮ひさえ(檜有子)は夫に相談し、木暮は天下探偵事務所の 天下清助(花沢徳衛)に事件解決を依頼しました。

ところが事件は 警察や世間の知ることとなる中、靖幸は一人で帰って来たのです。天下清助は 犯人が怖くなって 返したと考えますが、一郎は 産業会館建設入札が 日の丸建設に決定との 新聞記事に目を付けます。
その頃 日の丸建設社長の 宇垣(神田隆)は木暮に、犯人から「500万円を払わなければ、木暮のこれまでの汚職を世間にぶちまける」と連絡してきたと話し、横浜駅での 宇垣が用意した金の 受け渡し顛末を説明します。

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宇垣が要求通り 500万円の包みを持って 指定された横浜駅7番ホームで待つと
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151系 特別急行つばめ号が到着し、
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宇垣の背後には 東急東横線横浜駅へ到着する 5000系電車が映っています。
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そしてつばめ号のドアが開きましたが、デッキに居た男は チラチラこちらを見るだけで降りませんでした。
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しかし 宇垣の背後から近寄った サングラスの女 桜井とも子(八代万智子)が「お約束の物を頂きに来ました」と告げるや、ピストルを突き付け
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金を奪って つばめ号のデッキへ乗り込んでしまいました。
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その間も 女はずっとピストルを向けたままなので
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宇垣は為す術なく固まって、ドアが閉まり 去り行くつばめ号を呆然と見送るだけでした。
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話しを聞いた木暮は「その女には男がいる そいつは我々の関係を 知り尽くしている」と推理し、部下の白石(波島進)を 日の丸建設の鷹野台浄水場建設現場へ連れ出し 白石が500万で買った 日の丸建設の株券を奪い取ってしまいます。
当時は 現場で練ったコンクリートを 画像の様なナベトロで 貧弱な工事用軽便軌道上を運搬していた様ですね。
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PS.
 ルメが向かった 京王帝都電鉄 井の頭線高井戸駅は、ロケ当時 急角度の階段を登った先の 築堤上に開通以来の姿で在りました。
 各社のロケ地として 何度も使われ 当ブログでも(31.宇宙人地球へ現る)(49.結婚の條件)(61.女妖)で登場し、(1957年東映作 純愛物語)でも 印象深い場面で使われています。

 当初は手の込んだ 営利誘拐事件だったのが 何時しか 国産省建設局長木暮の 汚職をネタにした 日の丸建設社長を恐喝する事件となり、同額の500万円を犯人は 横浜駅7番ホームで受領後に 特急つばめ号で逃走する 鮮やかな手口で行っていますね。
 最初 8番線には 上り列車が停車する姿が映り、6番線停車中の 普通列車らしきとの間の 7番線に上り特別急行つばめ号が到着します。

 当時の時刻表で読むと、上りつばめ号は2本あり、第二つばめ号は 22:37到着と夜遅いので 15:07到着の104レ 第一つばめ号と思われます。
 すると 8番線停車中の列車は 横浜に 15:05到着して第一つばめ号に先を譲り 15:10に発車する、佐世保発東京行の 40レ急行西海号の様です。
 隣の下り列車は東京発 111レ門司行 普通列車と思われ、15:11に到着して 15:14に発車で 終着は翌日の 20:15!。おそらくは第一つばめ号が 5分遅れで 15:12に到着し、15:13に発車して行ったので 当時日本一の長距離普通列車だった 111レと同時停車シーンが映ったのでは?と推察します。尚 111レは本作公開の翌月末で廃止されてしまいました。

 桜井とも子が 宇垣にピストルを突き付け 金を奪う場面で、停車中のつばめ号12号車の 窓側の乗客がロケに気付き、笑い顔で同席者と話している姿が映ってしまい 撮り直しの出来ない監督としては・・・
 また横浜駅到着時に降りないで、デッキからチラチラとカメラの方を見ていた謎の男はスタッフなのでしょうか?

 2004年1月末に 東急東横線横浜駅は 地下駅へ移転したので 現在では7・8番線から東横線電車は見えませんが、東横線の場所は 現在9・10番線で 横須賀線・湘南新宿ライン上下用の ホームとなっています。

桜井とも子の家に 監禁された境野みどり(中原ひとみ)の処分を依頼された 保釈の虎(潮健児)を 一郎は 渋谷駅から 工事中の道路へ追い駆けますが、画像の場所は 現在の渋谷区渋谷2-14・渋谷教会辺り バイパス工事中の国道246号線青山通りと思われ 右側の歩道部分を 先に作っています。(坂の下方に4年前に開館した 五島プラネタリウムの丸屋根が見えています)
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 金王坂の上から 東横線渋谷駅方向の画像で、現在では 想像できない程 大改造中の 渋谷駅東側ですね。

 

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