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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

394.危険旅行

1959年8月 松竹 製作 公開  カラー作品   監督 中村登

才女と呼ばれる 松平千賀子(有馬稲子)は 忙殺される仕事から逃れ 失踪しますが、名古屋手前で 窮地を助けてくれた 雑誌カメラマンの 旗良平(高橋貞二)と 旅する道中を描いた コメディ映画です。

御礼に食事をご馳走した隙に 荷物ごと愛車を盗まれた千賀子は、旗と共に 無一文になってしまいました。旗は内山編集長(伊藤雄之助)に 泣き付くと、大阪中央郵便局々留で 三万円を取材費として 送ってもらいます。

その後 伊賀上野で知らない内に 二人でいる所をテレビに映され、それを見た編集長が 小谷編集部員(桂小金治)に大阪で 千賀子のスクープを狙えと命じます。

一方旗は 友人から借りた金を失い、大阪へ向かうべく 東海道本線の線路を 二人で歩いて行きます。三線区間の真ん中を歩く横を 下り特別急行列車 つばめ号らしきが、EF58形電機に牽かれ
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一等展望車を最後に 走り抜けて行きます。
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足の豆と疲れで へたり込んだ 千賀子の足下を、京阪電鉄京津線の 電車らしきが走っています。
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旗が千賀子の荷物を もってやり起こすと、反対側を 上り特別急行列車 第二こだま号らしきが 高速で走り抜けて行きます。
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漸く京都の一つ手前 山科駅へ到着すると、
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千賀子は 一人でジュースを買って 飲んでいます。お寺で子守りのバイトでもらった 二百円を全部使った 千賀子を見た旗は、「ここから一人120円あれば 大阪へ行けるのに」と怒ってます。

そして 京阪電鉄京津線 山科駅で 一人分の切符を買おうとして 止めた旗は、
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国鉄山科駅で 貨物列車に忍び込み 二人で首尾よく D52形蒸機が働く
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大阪近くの操車場で
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突放された有蓋車から降りました。
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ところがその姿を 操車場の職員に見つかり、C11形蒸機らしきが停車する横を 懸命に走って逃げる二人でした。
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大阪中央郵便局前で 小谷に会い 取材費を受領していると、千賀子は 地元のマスコミ連中に見つかり 二人はタクシーで 天保山桟橋へ向かいます。
そこから別府行の 関西汽船に乗る所で、小谷に それまで撮ったフィルムを 抜かれたことに 旗は気付きましたが時遅しでした。

船内でも 一騒動に巻き込まれた 二人でしたが、別府近郊の 城島高原牧場で 仲を深めた二人は 取材で福岡県の篠栗炭鉱へ行きます。
坑口から 上がって来る炭車や、
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仕事終わりの鉱夫達が乗る 人車を旗は撮っています。
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交換フィルムの購入を 頼まれた千賀子は、売店で 雑誌に載った 自分のスクープ写真を見て 旗との決別を宣言しますが・・・






PS.
  最初~4枚目の画像は 東海道本線山科~京都の、山科寄りの区間で 国鉄協力の元 職員立ち合いで ロケが行われたそうです。
  1944年に 輸送力増強の為 上り勾配である 上り線側を増線して 3線区間とした 場所でのロケで、現在では 到底許可にはならない 危険なロケでしょうね。

  先に通った 1レ特別急行列車 つばめ号は、現場を15:42頃に通過した様です。上り特別急行列車 第二こだま号は、現地を 16:44頃通過したと思われ 中線でのロケは 2㎞程移動しながら 2時間程掛かった様です。

  東海道本線を 京阪電鉄京津線が アンダークロスする地点は 山科から京都方向へ500m程行った所なので、作中では 方向的に矛盾しています。

  6番目の画像で旗は 京阪電鉄京津線 山科駅で「大阪」と言って 切符を買おうとしてますが、京阪本線経由で 京橋駅で城東線に乗り換え 大阪駅へ行こうとしたのでしょうか。(監督の手違い?)

  7~10番目の画像は 大阪駅近くの操車場なので、吹田操車場でしょうか。D52形蒸機は バック運転なので、入換作業中なのでしょう。二人が乗った有蓋車は、ワム23000形の ワム40165です。

  大阪天保山桟橋からの 別府航路は、関西汽船の大阪 16:30発 ⇒ 10:50 別府の便と思われ、予告があったので 別府港には 一万人以上の群衆が 到着を待ち構え密集し スリの被害者20人 総被害金額7万円との 騒ぎだったそうです。

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393.ダメおやじ

1973年11月 松竹 製作 公開  カラー作品   監督 野村芳太郎

万年平社員の 雨野大助(三波伸介)は 同期入社の南村不二夫(小山田宗徳)が 課長になったことから、出世を願う家族の 虐待に耐えながら 係長昇進を目指す コメディ映画です。

真面目で正直な 雨野に惚れこんだ本田冬子(倍賞美津子)は 結婚式・披露宴に続いて、東京駅らしき7番線から皆に見送られ グリーン車で二人は 新婚旅行に出発します。
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一同が見送りを終えて帰り際に 南村は冬子の短大の後輩 由美子(吉田日出子)に 声を掛けている背後には、9番線に停車中の 横須賀線電車が映っています。
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グリーン車内で雨野は「出世の為に 冬子さんには お尻をひっぱたいて欲しい」と願い出ると 冬子は承諾しますが、これが後々 悲惨な雨野の生活への 発端になるのでした。
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そんな未来が 来るとも知らず、二人を乗せた列車は 旅行先へと向かいます。
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10年後 雨野は相変わらずの平社員で、妻と 一人息子タコ坊(佐野伸寿)の 三人で団地住まいです。

ところが 後輩由美子の夫 南村が 課長に昇進したと聞いた冬子は、係長昇進の条件である 宅地建物取引主任者の 今年度試験合格を雨野に厳命し 一段と強く尻を叩きます。

この為雨野は 満員の通勤電車車内でも、連日対策本を 読んでいます。
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しかし試験ノイローゼと なってしまった雨野は、試験会場から 脱走する始末でした。

その後 北海道の土地開発を夢見て 本を出版する社長の 太田元蔵(豊島泰三)でしたが、会社が取得した 北端稚内の土地開発は 全く目途が立ちません。

そこで南村は 雨野に警備係長の 肩書を付けて、稚内事務所に転勤させることを 部長(田武謙三)に 進言するのでした。

そして雨野が旅立つ日 上野駅14番線には、
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南村始め会社の同僚が 見送りに来ていますが
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冬子とタコ坊はいません。
スピーカーから「22:00発 山形・秋田周り青森行 特急あけぼの号です」と 構内放送が流れています。

南村は「二三年経ったら 必ず呼び返すからな」などと、調子のいい事を言ってます。雨野がデッキから 車内へ移動して 通路のカーテンを上げると、皆が「栄転なんて言ったって 島流しだね」などと言ってます。
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皆の見送りを受けた雨野が乗る 特別急行あけぼの1号は、静かに上野駅から去り行きます。
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ところが 走る車内で 雨野が一人寂しく座っていると、突然冬子とタコ坊が 荷物を持って現れました。雨野は思わず「お前も一緒に?」と言うと「当たり前でしょ」と言って 転勤に同行するのでした・・・
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ラストシーンでは 20系特別急行列車 あけぼの号らしきが、暁の陸奥路を 走り去る姿で エンドマークとなります。
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PS.
  1970年から12年間に渡って 週刊少年サンデーに連載された 古谷三敏の漫画が原作で、長女雪子は登場しない 三人家族として描かれています。

  1・2枚目の画像の列車は 3枚目の画像で ホームの時計が11:21頃なので、東京駅11:20発 725м伊東行で ロケが行われたのでは? でも続く車内シーンは セット撮影の様です。

  6枚目の画像で映っている橋梁は、1980年代まであった 立場川橋梁に似てますね。

  9枚目の画像からの 上野駅・車内シーンは セット撮影と思われますが、作中で同僚が見送る部分では 実際に現地で撮影している様です。

  特別急行あけぼの号は 1970年奥羽本線(福島~秋田区間)初の 寝台特急として登場し、本作公開時までには 秋田行も増便され 特別急行列車にふさわしく 1号には食堂車が連結されていました。
  しかし上野発車が 22:00で秋田到着が 7:03・終着が10:22と 実質 朝食しか営業出来ない 不採算列車食堂でしたので、本作公開8日後をもって 食堂車は外されてしまったそうです。

  また雨野は何故か 秋田切り離しの11号車に 乗っています。青森行の 1号車~8号車が 取れなかったので、秋田から 青森行編成に移動して 立席特急券で 青森へ向かったのでしょうか。
  北海道連絡列車と言えば、東北本線か 常磐線から連絡船を使って 同じ列車番号で繋がった筋で 行くのがスムーズだったのです。

  22:24発 5M特急はくつる ― 7:10 青森 7:30 - 連絡船5便 - 11:50着 函館発 305D急行宗谷 - 稚内22:45着が 普通ですが、雨野は上野 22:00 - 1001レ 特急あけぼの1号 - 10:22着 青森 12:05発 - 青函連絡船21便 - 15:55着 函館 16:15発 21D特急北斗3号 - 20:28着 札幌 21:20発 - 317レ急行利尻 6:26稚内着

  つまり 北海道連絡を考慮していない 特急あけぼの1号を使うと 青森に到着する7分前の 10:15に 7便連絡船は出港してしまい、乗り継ぐ 21便に青森港で 1時間43分も 待つことになります。所要時間は 32時間26分と 8時間5分も余分に掛かった上に、特急北斗の特急料金と 急行利尻の 寝台料金が余分に掛かった?(雨野はテツ?)

  
  本作のタイトルは(126.やさぐれ刑事 18分)に次ぐ 12分40秒と長く、雨野が未だ平穏で幸せな時代と その後の分岐点に タイトルが置かれています。(300.張込み)は 11分15秒なので、当ブログ中 3位となりました。

  社長が自論の本を出版する時 ポスターの原案を 部長が提示するシーンで、懐かしい 田中角栄首相の(日本列島改造論)をモジった ソックリさんポスターが登場しています。
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390.あの橋の畔で 第一部

1962年7月 松竹 製作 公開   監督 野村芳太郎

数寄屋橋で将来を誓い合った 菅野光晴(園井啓介)と 新村葉子(桑野みゆき)が、過酷な運命に翻弄されながらも 魅かれ合う姿を描いた メロドラマの序章です。

父親の看護の為に 長崎へ帰郷した葉子を 菅野が大学を卒業し就職したら 迎えに行く約束でしたが、菅野は実権のある 葉子の兄 新村健二郎(南原宏冶)に 結婚を断られた矢先に 重症の交通事故に会ってしまいます。

その後 菅野と三ヶ月間 音信不通だった葉子は 上京を決意し、特別急行列車あさかぜ号に乗って 東京へ向かいました。
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思い出の 数寄屋橋畔の公園で 漸く菅野と 待ち合わせることができて、背後に都電が行き交う公園で 再会した菅野は 手足が未だ不自由な状態で 葉子は別れ話をされてしまいます。
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一方 葉子の兄夫婦の策略で 上司の沢野伸介(穂積孝信)と 政略結婚させられそうになった葉子は、菅野が転勤した 北海道夕張へ向かうべく 兄の家を飛び出し 上野駅へ向かいました。
上野駅 12番線で 急行北上号に乗った葉子は、菅野の親友 藤川俊春(山内明)と 柏村綾(千之赫子)から 見送りを受けています。
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藤川は葉子に 餞別を渡し、
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綾は「これで幸せになれるんだから」と励まします。
更に「お化粧道具持ってる?」と聞くと、葉子が否定したので バックを逆さに開けて 中身を 渡しました。
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葉子は 二人の親切心に涙し、二人は葉子と 菅野の幸せを祈り 手を振って見送ります。
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青森行急行北上号は ゆっくり加速して、12番線を離れて行くのでした。
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菅野が 飲み屋ひさごやの女給 のぶ(渡辺美佐子葉子)と 一夜を共にした頃、葉子を乗せた 蒸機牽引列車が 一路夕張を目指して 走行するシーンがあります。
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そして 遥々東京から到着した葉子と 菅野が 大夕張ダム湖畔で 抱擁する場面では、背後にダム湖を横断する 下夕張森林鉄道 夕張岳線 第一号橋梁が 映っています。
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更に この特徴ある 三弦トラス橋を渡る 森林鉄道列車の姿も、映像からは 僅かに見て取れます。
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しかし葉子は のぶから 自分と菅野が 深い関係にあることを 告げられると、D50形蒸機が牽く 運炭列車が近付く道で 汽笛を鳴らされると 絶望感にみまわれ しゃがみ込んでしまいます。
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のぶは 何とか菅野を 自分のものに しようとしますが 菅野に難く断られると 自殺を図り、止めようとした菅野と 共に崖から転落してしまいます。
のぶは重症ながらも 助かりますが 菅野は行方不明となり、帰京した葉子は 泣く泣く沢野との 結婚を承諾するのでした。

それから一年後 立野という名の 記憶喪失症の男が 東京に現れ、付き添っている チカ坊(中山千夏)の話から 男は死んだと思っていた菅野であると 皆が確信します。

葉子は 何とか菅野の 記憶を取り戻そうと 奔走しますが、それが 沢野や 同居する姑(沢村貞子)との 関係悪化に繋がるのでした    第二部へ続く・・・





PS.
  1枚目画像の EF58形電機牽引 特別急行あさかぜ号は、電源荷物車を含め 牽引定数いっぱいの 20系14輌フル編成です。

  長崎県平戸の 生月島からの 上京を考えると、生月島―(連絡船)・・・平戸口 11:39 ―(621レ)― 13:08 佐世保 13:27 ―(2308レ準急第一弓張)― 15:49 博多 16:30 ―(4レ特別急行あさかぜ)― 9:30東京

  4枚目画像からの 上野駅見送りシーンでは、青森行 急行北上に乗る葉子が 映っています。しかし当時のダイヤで 急行北上は7番線から、16:30発と 明るい内の出発です。

  このシーンの撮影は 12番線で 夜間に行われているので 国鉄の協力の元、20:50発113レ 青森行普通列車に 北上の札を付けてもらい ロケが行われたのでは?と推察します。

  11枚目の画像に映っている 下夕張森林鉄道 夕張岳線 第一号橋梁は、作中でも登場する 大夕張ダム建設の為 1958年に完成した 珍しい 三弦トラス形式の鉄橋です。
  大夕張ダムは 本作公開と同じ 1962年の完成ですが、下夕張森林鉄道 夕張岳線は 翌年の1963年に廃止されてしまい 森林鉄道の橋梁として使われたのは 僅か5年間でした。 本作中には 貴重な走行映像の片鱗が 映っております。

  その後 レールだけ撤去されましたが、美しい姿は 地域のシンボルとして 残されました。しかし 大夕張ダムの下流側に より規模の大きい 夕張シューパロダムが 2015年に完成し、現在では 渇水期に姿を現すだけで 通常期は水没しています。

  本作は メロドラマの大御所 菊田一夫氏の原作で、当時は TBSテレビで連続ドラマとして 放送中に製作されました。
テレビでは 新村葉子役は 島倉千代子ですが、菅野光晴役は 園井啓介が映画と掛け持ちで 出演したそうです。(当時の本人は 本業がテレビ俳優で、映画はアルバイトだそうです)


まもなく迎える №400号を記念して、№400号の前後 №390~410を カラー作品特集と致します。今回の(390.あの橋の畔で)は 全4作の長編なので、前半2作と後半2作に分けて 取り上げる予定です。










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388.自分の穴の中で

1955年9月 日活 製作 公開   監督 内田吐夢

40代の未亡人 志賀伸子(月丘夢路)は 利己的な義理の息子・娘と三人暮らしだが、亡夫の遺産生活の為 苦労の末に 一家崩壊へと突き進む過程を 描いたホームドラマです。

学生時代 志賀家で世話になった 小松鉄太郎(宇野重吉)は 銃器会社を退職し、立川基地界隈を歩いた後 新宿のキャバレーへ向かう時 セットの電車内シーンがあります。
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伸子は 義理の娘 志賀多美子(北原三枝)と 出入りしている医師の 伊原章之介(三國連太郎)の 結婚を望んでいますが、当人は 伊原と伸子の仲を怪しんで 乗り気になれません。

ある日 京都に残っている 志賀家の土地売却の件で 多美子が現地へ向かう時、多美子は途中から 伊原に「話があるので横浜まで送ってほしい」と電話して 品川から列車に乗り合わせます。

白いカバーが掛かった 並ロらしき車内で 二人は向かい合って座っていますが、
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多美子は一向に 話をしないので 伊原は小松から聞いた 会社を辞めた話しをしました。
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やがて 列車が横浜駅へ 到着しそうになったので 伊原は立ち上がって「それじゃあ」と言いながら 多美子の手を取り 別れの握手すると、多美子は 手を引き寄せて 離しませんでした。
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一方小松は 四日市の海軍燃料廠跡・白浜三段壁・奈良・京都を 旅する場面に続き、EF58形電機に牽かれた 特別急行列車はと号の 走行シーンが映ります。
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続いて 食堂車内へ小松が入って来て
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近くの席に座り ウエイトレスに「ジュース」と注文すると、先に向かいの席に 座っていた多美子が気付いて 小松に声を掛けました。
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旅先での偶然に、普段と違って小松も饒舌です。
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その後 二等車席に二人が並んで座り、多美子は寝込んで 小松の肩にもたれ込んでいます。小松は膝に乗っている 多美子の手を、そっと持ち上げて お腹の上に置きました。
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すると多美子は 眠りから覚めて「今何処」と小松に聞くと、「やがて大垣」と答えます。 東京へは「あと6時間程」と話すと、「長いわね~」と 気だるけな返事をする 多美子でした。
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やがて 夜の有楽町駅界隈を走る はと号らしきの姿が映り、車内では 東京駅到着前から 網棚の荷物を降ろして デッキの方へ移動する 客の姿があります。
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小松が「渋谷まで送りましょうか」と言うと「もう大丈夫」と多美子は断り、東京駅構内から 伊原の家に電話します が不在と聞いて落胆しています。







PS.
  車内シーンは 全てセット撮影で 2枚目からの 東海道本線車内の画像は、伊原と多美子が向かい合って座るシーンですが スクリーン・プロセスの出来が少々・・・ですね。

  特別急行列車はと号の 走行シーンは素晴らしく、先頭部分のヘッドマークも ハッキリと映っています。
  ロケ地は不明ですが 1955年夏頃の撮影だとすると 上りの米原から大垣手前は電化されていますから、残る米原~京都の未電化区間を C62形蒸機に牽かれた姿を 撮影してほしかったです。

  EF58形電機の次位は スハニ35形{半車荷物車・半車三等車}でしょうか、かなりの高速で 通り過ぎる姿に ピントを合わせ続けているのは 流石 峰カメラマンですね。

  当時の4レ 特別急行列車はと号は 大阪発12:30で、京都・米原(SL⇒EL)・名古屋・豊橋・静岡・熱海・横浜に停車して 20:30東京到着のダイヤでした。

  一等展望車・二等車5輌・食堂車・三等車4輌(ハニ1輌含む)の11輌編成と、二等車(現在のグリーン車)が 一番多いのに 乗車率82%と 盛況でした。(1955年7月上旬平均値)

  小松は 四日市から 白浜へ向かいましたが 当時の紀勢線は、紀勢東線の尾鷲 ~ 紀勢西線の 紀伊木本(現:熊野市)34.3㎞が 未開通でした。

  あえて 当時の紀伊半島を 南下する経路で 妄想すると、四日市 6:59 ―(203レ急行伊勢)― 8:02 松阪 8:23 ―(15レ)― 11:21 尾鷲 12:30 ―(国鉄バス紀南線)― 15:15 紀伊木本 16:25 ―(145レ)― 18:49 串本 19:06 ―(171レ)― 21:22 白浜口

普通の人なら四日市6:29 ―(201レ急行大和)― 9:00 天王寺 9:30 ―(106レ)― 10:41 東和歌山 10:45 ―(6レ準急熊野)― 13:02 白浜口 ですが、作中で あちこち ぶらぶら旅した 小松ですから 上記の経路かもしれませんね。


本作は 盛夏時期に 撮影されていますが この頃日活は 他社に先駆けて 撮影所に 冷房設備を導入したので、食堂車や二等車場面を始め 志賀家内で 着物姿のシーンが多い 月丘夢路は 気持ち良く 演じられた様です。


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387.心と肉体の旅

1958年1月 日活製作公開   監督舛田利雄

女優を目指して 九州から上京した 稲村直美(南田洋子)と 立花ルリ子(中原早苗)の内 落選したルリ子が 転落しながらも、友情から お互いに助け合う メロドラマ調の青春映画です。

冒頭 東京駅7番線ホームで列車を待つ 新井双葉(楠田薫)の耳に
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「あさかぜ号は25分の延着です」との放送が入った時、店の客 五十嵐(二谷英明)に声を掛けられたので 軽くあしらいます。
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双葉が一旦ホーム下の通路へ降りると 慌てる志賀甲太郎(葉山良二)に出くわしたので、「汽車は25分遅れよ」と声を掛けて お茶に誘います。

続いて EF58形電機に牽かれた 上り東京行8レ 特別急行あさかぜ号の 走行シーンが映り、
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二等車内で 直美とルリ子が
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近付く東京での コンテストへの夢を語っています。
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やがて 特別急行あさかぜ号は 東京駅へ到着し、
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直美とルリ子の二人は 出迎えてる筈の 志賀を捜しますが いませんでした。
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直美はルリ子に 動かないで待つように伝え、ホーム下へ 志賀を捜しに行きました。すると 遅れて志賀が現れ ルリ子が直美の状況を話すと、志賀は再びホーム下へ 直美を捜しに行きました。
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そして 東洋映画ニューフェイス審査会の後 ルリ子が銀座にある 双葉の店を尋ねる時、銀座四丁目交差点を行き交う 都電が映り 鳩居堂ビル屋上にある 星形のナショナル広告塔が 目立っています。
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その後 直美の父 稲村雄三(深見泰三)と 母信子(新井麗子)が上京しますが、体調がすぐれず 箱根へ静養に行くことになりました。
ニューフェイスに合格したのは直美だけで 悲しむルリ子を ホテルの部屋に残して、直美は父母を見送る為 小田急電鉄新宿駅へと向かいます。

新宿駅 10番線で発車を待つ 3000形特別急行列車が映り、
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竹内産業の社長である 竹内(安井昌二)が 稲村夫妻を見送っている所へ 駆け付けました。
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信子は離れた席に移動すると直美に、「昨夜竹内が結婚の申し込みに来た」と話して直美を驚かせます。
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その足で向かったらしく 直美と竹内が、古風な常盤橋らしき上で 話す場面があります。二人の背後に走るのは、都電17系統(池袋~数寄屋橋)でしょうか。
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それから 映画界に顔が利くと言う 五十嵐に騙されたルリ子は 転落して行きますが、女癖の悪い竹内の本性を直美に伝え 被害者の島崎マミ子(南寿美子)から話を聞いた直美は 結婚話を解消します。

そして直美も 自分に気の有る志賀から身を引いて、志賀に思いを寄せるルリ子に譲ります。
更に東洋映画の正宗監督が 直美主演で映画製作を望んだので、一度は諦めた映画界に 直美は復帰するのでした。







PS.
  特別急行列車あさかぜ号は 1956年11月に、戦後初の 夜行寝台特別急行列車として(東京~博多)に登場しました。
  2年後 20系ブルートレインに 置き換えられた後の姿が有名ですが、本作では 寄せ集め旧型客車で 僅か二年間編成された姿の 走行シーンが映っています。

  4~6枚目の画像は 日活特有の 特別二等車セットで 撮影されていますが、登場から 1957年9月末まで 二等車はスロ54形が使われていたので 本物に近いと思われます。

  12枚目の画像では 当時の小田急電鉄新宿駅 10番線に停車している デハ3000形SE車が映っています。
  当時の新宿駅は 国鉄の番線から 通し番号だったので、小田急電鉄は 9~12番線・京王帝都電鉄は 13~16番線でした。

  デハ3000形は 小田急電鉄で初めて 一般車への格下げを想定しない 特急専用車で、連接台車方式を採用して 両端車16m弱・中間車12,7mの 8両編成でした。
  また 日本の鉄道車両としては初めて、ディスクブレーキや シールドビーム前照灯を使った 先進的な車両で 1957年7月から運行開始されました。

  作中でルリ子が「10時の新宿発」と言ってますが ホームの時計は 9:12頃なので、9:30発の 4009レ箱根湯本行と 思われます。終点まで運賃が 195円で、特急料金は 130円でした。

  15枚目の画像では 珍しく700角サイズの窓を 開けて話す様子が、アップで映されているので 窓の状況が よく分かります。
  当初は冷房設備が無く 1962年に設置されるまで 暑い時期は、画像の様に 窓を開けて 走行したことでしょう。 







 

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383.銀座二十四帖

1955年9月 日活 製作 公開   監督 川島雄三

銀座で花屋を営む コニーこと 三室戸完(三橋達也)と知り合った 京極和歌子(月丘夢路)が、少女時代に描いてもらった 絵の作者を巡る謎解きと 薬物撲滅を目指す 三室戸の活躍を描いた青春映画です。

序盤 世田谷砧の花畑で収穫された花を 芝生花市場へ運ぶ三輪トラックに 途中で三室戸が便乗し 仕入れに行く場面で、大きく右カーブする登坂へ向かう 都電とすれ違うシーンがあります。
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登場人物の紹介を兼ねた やり取りの終盤に、銀座中央通りを行きかう 都電を捉えた映像が流れます。京橋付近でしょうか、1系統の他 19・22・40系統の電車が 次々と走っています。
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軽妙な 森繁久彌のナレーションで 銀座の玄関口として、新橋駅汐留側に 1914年から1970年頃まであった 風格ある駅舎が紹介されます。
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続いて 有楽町駅を通過する 特別急行列車2レ つばめ号東京行が、牽引するEF58形電機から
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最後部の一等展望車まで映ります。
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そして 東京駅10番線に到着した つばめ号の
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8号車から 和歌子の姪 仲町雪乃(北原三枝)が降り立ち、
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カバン持ちをさせた プロ野球投手赤石峰男(岡田眞澄)を 和歌子に紹介します。

その後全国に257か所有ると言う 何々銀座を紹介する中で、雪景色の 札幌市電の様子が映ります。
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雪乃は両親に内緒で ミス平凡コンテストに応募し、東京本選で入選します。和歌子は雪乃の両親に ファッションモデルとなる了承を 取り付けるべく大阪へ行き、和歌子の監視付きを条件に 話を纏めると 大阪球場で雪乃に伝えます。

赤石が投げてる大阪球場には 絵描きの振りをしている 望月三太郎(大坂志郎)も来ていて、南海電鉄難波駅をバックに 和歌子が所有する絵画の作者について 雪乃と話しています。
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また 高島屋の屋上へ 和歌子が向かった場面では、御堂筋から 南海電鉄難波駅が入る 1932年に完成した 高島屋百貨店が映ります。
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その後 三室戸は銀座の街からの 薬物撲滅を目指して、元締めである 銀座のGMを捜して 和歌子の夫である 京極克己(河津清三郎)に行き着きます。
その時 かねてより内偵捜査をしていた 望月刑事の指揮で 警官隊による一斉摘発が行われ、和歌子の絵を描いた作者は 京極の親友で 三室戸の兄 三室戸五郎であると告げた後に 逮捕を拒んで 拳銃自殺してしまいます。

一時は 三室戸の花屋で働いていた 和歌子でしたが、鵠沼で別れて住む 娘珠代(江川美栄子)の元へ帰るべく 新橋駅へ向かいます。
ルリちゃん達に「見送りに行かなくちゃ」と 花束を渡された三室戸は、新橋駅1番線 東海道本線下りホームへ行きます。

折りしも 海上自衛隊員の 壮行会が行われていて、ホームが混んでいる中 三室戸は和歌子を捜します。
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和歌子を見付けた 三室戸が「奥さん」と声を掛けると、花束を受け取った和歌子は「コニーさん・・・」と潤んだ眼で 呟いただけで言葉が続きません。
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そこへ 16:24発の833レ小田原行 80系初期型湘南電車が、二人を覆い隠す様に 到着したのでした。
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PS.
  森繁久彌のナレーションで つばめ号は朝9時に大阪を出発し、時速90kmで走って 夕方5時に東京駅へと到着しますと 紹介されています。

  ところが続いて「1等は無くなりましたが、偉い人は特急券無でも 乗れるという噂もあります」と続いています。脚本家は 本作公開2か月前に無くなった、1等寝台車と間違えたのでしょう。

  7枚目の画像で 雪乃は二等の8号車から降りてきましたが、隣の7号車は 帯無しでも3等車ではなく食堂車です。

  当時の食堂車は 普通急行列車と特別急行列車では 一品料理や飲み物のメニューが違い、定食も 普通急行が朝定食は150円昼・夕定食は240円に対して 特別急行列車では定食が300円・350円・500円の3種類でした。

  三室戸の花屋で働くルリちゃん(浅丘ルリ子)は 当時中央区立 今川中学校3年生で、(緑はるかに)でデビューしてから 本作が2作目でした。




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379.三等重役

1952年5月 東宝 製作 公開   監督 春原正久

地方では大きな会社である 南海商事の社長桑原(河村惣吉)が 会社内外の諸問題を、腹心の浦島人事課長(森繁久彌)と共に 抜群の感覚で明るく乗り切る コメディ調の人情ドラマです。

前社長の 奈良庄右衛門(小川虎之助)が 戦後公職追放となり、総務部長だった桑原が 急きょサラリーマン社長の様に 繰り上がったのでした。
本作のメイン鉄道シーンは 東京出張に出掛ける 場面にあります。地元の南海駅へ 桑原と浦島がやって来て、
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東京には 今晩8時半の到着ですと浦島が伝えています。

桑原は「今回は 出張所へ予告せずに、出し抜けに行く」と言い、ありのままの姿を 見たいそうです。 
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そして 前方へ進むと 東京へ同行することになっていた 顔見知りの藤山(進藤英太郎)が、なんと愛人の 芸者おこま(藤間紫)を連れていたのでした。
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そこへ C58形蒸機牽引列車が 到着したので、
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一同は 二等車へ乗車します。二等寝台車の 日中状態らしく、ゆったりしているだけが 良点の様です。
端の席で 藤山はおこまと宜しく やっているところへ、浦島が食堂車から 飲み物を桑原に 運んできました。
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浦島は桑原に「車内から夫人に 電報を打って、東京へ呼びましょうか」と言うと、「お鶴を呼ぶならまだしも・・」と言って 直ぐに取り消す 桑原です。
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その後 電機に牽かれた列車が 淡々と東京へ向かうシーンに続いて
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車内では 桑原と藤山が相席し、「帰りは箱根に 寄りたいが、同行しませんか」と藤山が誘いますが 辞退する桑原でありました。
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東京駅へ到着し 一行が降車口改札を抜けた所で、
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「あなた」と 藤山に向けて 呼び掛ける声がしました。藤山が驚いて 立ち止まると、「急にあなたと旅行がしたくなって、飛行機で来たんです」と藤山の京子夫人(岡村京子)です。
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藤山はまさか 夫人が先回りしているとは驚き おこまから離れると、「えらいものが 飛ぶようになったもんだ」と呟くのでした。

更に「ところでそちらの ご婦人はどなた?」と詰め寄ると、藤山は「こちらは要するに 桑原夫人だ」とドモリ声で 逃げます。それを聞いて桑原は「要するに家内です」と、冷や汗顔で 調子を合わせざるを得ませんでした。
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翌朝 8時半の鐘が鳴る 銀座四丁目交差点の 様子に続いて、
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横須賀線の 新旧形式の電車が混ざった姿で 走る傍らにある出張所に 二人はやって来ました。
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東京出張所 視察業務が終わり、帰りも二人は 九州直通急行列車に乗った様です。
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車内で旧知の 加藤さんに 偶然乗り合わせますが、
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「ちょっとヤボ用で 来た帰りです」と語った後で 話しに花が咲いています。
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PS.
  東宝サラリーマンシリーズでは(89.ホープさん サラリーマン虎の巻)と双璧の 先駆的作品で、好評だったので 続編が数本製作されています。

  1~4枚目の画像で ロケが行われた駅は、73おやぢ様のコメントから総武本線両国駅と思われます。

  車内シーンは全て セット撮影ですが、二等車は東京~九州各地を結んだ 直通急行に連結された 寝台車のヒルネを 意識していると思われます。(テーブルは・・・)

浦島は東京到着が 晩の8時半と言ってますが、20:30到着は 当時大阪発の 4レ特別急行列車はと号でした。
近いのは 20:08着の急行阿蘇号ですが、寝台車はゼロなので対象外です。
  本作の設定に合う 二等寝台車を連結していたのは、18:55に到着する 急行きりしま号でした。

  一方飛行機の方は 日本航空の 大阪伊丹空港15:50発の便が、東京羽田空港着17:30でしたので この便を京子夫人は使ったのでしょう。
但し特急はと号は一等車を使っても4580円に対し、飛行機は6000円もしました。さすがは社長夫人ですね。

  こうして夫の行動を怪しんだ 藤山夫人は、高額の飛行機で先回りして 東京駅で待ち構えていました。
  この場面は 実際の東京駅丸の内降車改札口で 行われた様ですが、現在では到底 不可能と思われます。


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378.三匹の牝猫

1966年9月 日活 製作 公開   監督 井田 探

一癖ある3人の女達が 美人局的に 男を誘惑しては騙し、巻き上げた金で 共同の夢を目指す アクション映画です。

三崎葉子(八代真矢子)は 暴力団里見興行の幹部 木村(郷英治)に 暴行された上に 肩に薔薇の入墨をされ、解放された隙に ナイフで木村を刺してしまいます。
木村の元から逃げ出した葉子は 明け方に帰宅すべく ふらつきながら、都電大久保車庫への 回送線を走る 12系等電車の横の 線路上を歩いています。
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その後 追手から逃げる為 葉子は矢代(藤竜也)の手引きで 熱海の島田(天坊準)の所へ向かうことになり、東京駅9番線で 矢代の見送りを受けています。
先ず 3ドアの111系か113系電車が入線してきました。
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続いて売店横で 話す二人の背後で、向かいのホームに 停車していた旧型客車列車が出発して行きます。
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この時代では珍しい旧客で サボは読めませんが、前夜に大阪始発で 13:45に到着した144レが 品川客車区へ 回送されるシーンでしょうか。

続いて113系電車らしきの 走行シーンが映って、
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一等車内で 化粧直しをしている葉子が映ります。
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すると 葉子から後方座席に座る女性が 隣席の男から、無理やりな行為を受けて 困惑している様子が見えました。
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そこで葉子は 二人の元へ行って
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向かいの席に座ると、「あたしと言う恋人が居ながら アパートから消えたと思ったら、こんな男と・・」と言うや 女の首を締め上げます。
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慌てた男は「偶然隣に座っただけだ」と言って 逃げて行きました。ところが助けた女は 斉田みどり(水上竜子)と名のり「退屈しのぎに からかおうと思っただけ」と言って仲良くなります。
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やがて列車は 熱海駅2番ホームへ到着し
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二人が駅前へ出ると、スケコマシの鉄(野呂圭介)が 今川まり(野川由美子)を騙して タクシーに乗せるところを目撃します。
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二人はタクシーで追い駆けると 連れ込まれた旅館の部屋では、本性を現したまりに 鉄の方がやり込められていました。

こうして仲良くなった三人は スケベな男を騙して 金を巻き上げ、自分たちの マンションを建てようと 誓うのでした。
最初は 首尾よく熱海の釘貫一家から 三百万円を奪い取り 逃走しますが、里見興行と 釘貫一家の双方から 追われてしまいます。

一方 葉子の行方を 心配していた矢代は、漸く居場所が掴めて 公衆電話から連絡出来ました。
その横の 都電専用線区間を、6000形らしき電車が 走り抜けて行く姿があります。
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PS.
  最初の画像は 新宿靖国通りから分岐して 都電大久保車庫へ向かう 連絡線で、回送車が運行される 非営業区間だった様です。
  八代真矢子(後に万智子)はともかく、新聞配達人は 都電側と打ち合わせた上でのロケでしょう。

  東京駅ホームでのロケは 当時では段々難しくなり、次の画像の様なシーンは 最後かもしれませんね。
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  そんな中で 旧型客車普通列車が映っている、東京駅でのシーンには 魅かれました。

  上野駅・新宿・両国などでは まだまだ残っていましたが、東京駅では ごく少数で 日中到着する144レは目立ちました。
  この他 熱海発の13:11着848レも残っていて、3.4枚目の画像は この列車の可能性もあります。

  九州行の急行列車 31レ雲仙・西海33レ高千穂・35レ霧島は、まだ昼行始発で残っていました。

  11枚目の画像は、急行型の153系でしょうか。急行電車が次々と発着する、華やかな時代とも言えるでしょう。

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377.青春三羽烏

1953年12月  松竹 製作 公開   監督 野村芳太郎

性格は違うが 仲の良い3人の男が、意中の女性との結婚を目指す コメディ調の青春映画です。

沖倉淡三(三橋達也)の家に 婿入先候補の 藤原仙子(高友子)が突然来訪し、沖倉の上着に入れていた 候補№6 宮田千晴(藤野高子)の 写真を見られて騒ぎ出します。
そこへ到着した中ノ目覚(高橋貞二)が 昨夜飲み屋で 上着を間違えたのだと誤魔化し、その後 到着した千晴を 強引に中ノ目が連れ出して 沖倉の窮地を救ったのでした。

すっかり憤慨して速足で歩く千晴を 追い駆けた中ノ目は、橋の上で追い付き 宥めている背後を ポール集電仕様の 都電初期型6000形らしきが走っています。
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喫茶店で話す内に すっかり意気投合した二人は、ひとまず別れて帰宅するべく 千晴は地下鉄乗り場に向かって行きました。

地下鉄銀座線の高架区間を 3輌編成の電車が走るシーンに続いて、
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東京急行電鉄 東横線への改札口を入った所で 二人は再会して驚きます。

続いて 東横線の高架区間を走る 東京急行電鉄3000系が映り、
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共に代官山駅で降りた二人は 手を振り別れます。
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ところが 角を2回曲がると、バッタリ再会です。実はお互いの家は、近所だったのでした。

千晴の叔母さんの家で飼っている 犬の具合を獣医大学生の 中ノ目が診ていると、千春の父親が 養子候補者に会いに 上京して来ると知らせがあったので 候補者代役として 会ってくれと頼まれます。

東海道本線 新橋駅上りホームに、EF58形電機牽引の 列車が到着します。
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先頭客車から 千晴の父親 宮田甚助(日守新一)が降りて来て、
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中ノ目が候補者として 千晴に紹介されました。
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二人と父親は 一緒に音楽会へ 出掛けたのですが、親友 牧野虎太郎(川喜多雄二)と 中ノ目の妹 桂子(紙京子)が 会場で揉めたことから、偽候補者であることがバレて 中ノ目は面会禁止と言われてしまいます。
跨線橋の上で 中ノ目と千晴は もう会えないが好意はある などと話す内に、
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下を72系らしき 国電が走り抜けて行きます。
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その後 中ノ目の亡くなった父親の 親友だった及川潔(北龍二)から 飼い犬が飲み込んだ ダイヤの指輪を、中ノ目が無事 吐き出させた御礼に 貰ったお金で母親シゲ(東山千栄子)と 温泉旅行に出掛けます。
電機牽引列車の走行シーンが映り、
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並二等車席に親子で 向かい合せに座っています。
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やがて列車が横浜駅に到着すると、
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中ノ目が窓から シューマイ売りを呼びますが 聞こえない様です。
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そこで デッキから呼びますが 通じないので、
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シゲが止めるのも聞かずに 中ノ目は走って買いに行ったのでした。
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シゲはハラハラドキドキの 様子ですが、中ノ目は「乗り遅れるもんか お茶は次の駅で買うよ」などと 余裕顔でシューマイを勧めています。
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一方及川が姪を連れて 中ノ目の行く湯河原温泉へ向かったと 牧野からの情報を聞いた沖倉は 千春の通う洋裁学校へ向かい、千晴と仲良くなった仙子の手前「湯河原で中ノ目と見合いさせようとしている 及川の計画打破の為 湯河原へ行こう」と誘います。

親子で湯河原温泉の旅館へ到着すると 及川が姪の秋子(東谷瑛子)を連れて現れ、暫くすると 沖倉が千晴を連れて合流し 更に千晴の父 宮田が駆け付け 騙された怒りで 娘を連れ帰ってしまいます。

皆も同じ列車で 帰ることとなり、宮田親子とは離れた席で皆 憂鬱な表情で 黙り込んでいます。
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そして及川が 最後の説得に、宮田の席へ赴き 説得すのでした。
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中ノ目親子が帰宅すると 桂子とケンカした牧野が、20:30の汽車で 実家へ帰ると出て行きました。桂子は20時近くなると出かけ、入れ替わりに 宮田が現れ謝罪するのでした。

新橋駅の改札口へ 桂子が到着すると、時計は既に20:37を指していて 諦め顔の桂子です。
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ところが横を向くと、旅行ポスターを見ている牧野がいます。
「乗り遅れたんだ 次の汽車は一時間後なんだ」と呟く牧野に、誤解が解けた桂子は 素直な気持ちを伝え 三組共にハッピーエンドとなった模様です。





PS.
  1枚目の画像は 橋の欄干に見覚えがあり、中央本線飯田橋駅前を走る 都電15系統かもしれません。

  2枚目の画像は 帝都高速度交通営団 銀座線(本作公開一週間前に銀座線と決定)神宮前駅(現 表参道)から 終点渋谷駅へ向かう、1000形らしき3連電車で(4連化開始される2年前)今は無き 東横百貨店が映っています。

  3枚目の画像は 東京急行電鉄東横線 渋谷から代官山へ向かう 3000系らしき電車ですが、1945年まで使っていた 並木橋駅ホーム跡が 撮影場所と思われます。

  4枚目の画像は 激変した代官山駅ですが、当ブログでは(62.踏みはずした春)でも 同じ方向から当駅が撮影されています。

  5~7枚目の画像では 宮田の上京場面を、珍しく新橋駅東海道本線ホームで 撮影しています。当時の上り列車は 2本の特急と特殊列車以外 全ての急行・普通列車が新橋駅に停車していたので、昼頃到着の 326レ(浜松始発)あたりの 先頭客車で撮影したのでしょう。

  8~9 枚目の画像で ロケが行われた場所は、遠くに私鉄電車らしきが映っていて 田端とは思えず分かりません。

  12~16枚目の画像で 横浜駅へ到着する列車は 7:36着7:38発の 325レ沼津行普通列車と思われ、シュウマイ売が 朝から販売していたのでしょうか。

  最後の画像で 桂子は牧野が 20:30の汽車に乗ると聞いて 新橋駅へ来ましたが、既に20:37なので 一度は諦めました。しかし 20:30頃の東海道本線下り 新橋発列車は20:24富士行849レと 20:40熱海行851レで、該当する列車がありません。

  上りが殆ど停車する新橋駅ですが、下りは 全ての急行列車が 通過だったのです。20:30の汽車と言えば、東京発神戸行 13レ急行銀河のことだったでしょう。牧野は「次の汽車は一時間後だ」と言いますが、故郷が神戸だとしても 21:00発の広島行21レ急行安芸で行けます。


こんなにも数多くの鉄道シーンが散りばめられている本作が、今まで全く小生のアンテナに引っ掛かりませんでした。
それ故に当ブログは、まだまだ続けるつもりです。

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376.この広い空のどこかに

1954年11月  松竹 製作 公開   監督 小林正樹

森田屋酒店主の 森田良一(佐田啓二)の処へ嫁いだ ひろ子(久我美子)が 姑・小姑と同居する環境で 自分の立ち位置が掴めず 悩む中で、理解ある夫の態度によって 徐々に森田家に馴染んで行く過程を描いた ホームドラマです。

タイトルクレジットの 終わりに、川崎駅らしきの 空撮映像が始めにあります。
序盤 森田家の明るい次男 登(石浜朗)は 京浜線 田端駅近くの高台で 苦学生の三井(田浦正已)と 人生観を語っていると、遥か先の築堤を 東北本線の下り蒸機牽引列車や 上りの気動車列車が走っています。
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また 三井の背後下方には、京浜線田端駅らしきが 映っています。
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森田家の長女 泰子(高峰秀子)は 空襲で足が不自由となり、婚約者にも逃げられ 28歳となって投げやりな性格で ひろ子にも冷たくあたる毎日です。

ある日泰子は 東海道本線らしきと交差する 道路工事現場で働く 旧友の夏子(中北千枝子)と偶然再会し 話していると、背後を 京浜線の電車に続いて
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D51形らしき 蒸機牽引の長い貨物列車が通っています。
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その後 ひろ子の田舎から出て来た 旧知の信吉(内田良平)が 帰郷する晩に ひろ子を訪ねて来て、母しげ(浦辺粂子)と泰子は 疑いの目で噂するので ひろ子は飛び出してしまいます。
後を追った森田は 川崎駅改札口で二人を発見し、
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二つのウイスキー包みを 信吉とひろ子の父親へと託します。改札口で信吉は 爽やかにひろ子と挨拶を交わし、
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更に「お父さんには幸せに暮らしていると伝える」と言って 去りました。
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終盤 抑留先から帰国後 二年間療養していた 元奉公人の俊どん(大木実)が 森田家を訪問しますが、事前に来た手紙に 泰子ことばかり書いてあったことから 泰子は逃げてしまいました。

ところが 俊どんが帰った後に 帰宅した泰子は、皆から「足が無かろうが泰子さんは泰子さんで、今でも好意を持っている」との話を聞いて 俊どんの元へ押し掛ける 決意を固めます。

そして 翌日出先から 電話してきた泰子は、森田に「荷物を東京駅まで持って来て」と頼みます。
先ず 定石通り東京駅丸の内駅舎が映り
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トランクを持った登が 8番線ホームに上がって捜すと、
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列車のデッキ横に立つ 泰子が声を掛けて 登も気付きました。
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登は泰子の胸中を慮って 余計なことは言わずに 明るく簡潔に会話し、
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トランクと土産と小遣いを渡して
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不要な風呂敷包を受け取り別れます。
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やがて泰子を乗せた普通列車は、静かに東京駅から出発して行きました。 
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PS.
  2・3枚目の画像は 非電化時代らしき 東北本線尾久支線を走る列車の様で、宇都宮電化4年前なので 殆どの列車が 蒸機牽引列車だったと思います。

  6枚目の画像は 東海道本線を走る 蒸機牽引の貨物列車ですが、品川区にも まだD51が配置されていて 横浜地区の貨物線が 電化前なこともあって 周辺の貨物列車は 蒸機が担当していた様です。

  最後の 泰子旅立ちシーンは、東京駅8番線ホームで ロケが行われた様です。登は発車前の 14:15に泰子と別れたので 当時の時刻表によると、14:25発の 111レ門司行普通列車が想定され 静岡到着は18:36です。
  しかし実際には 国鉄にお願いして 回送列車にエキストラを乗せた上、品川客車区まで行って 降車したと思われます

  泰子が向かったのは 静岡の山奥で「エンジンの音を響かせて、一日一回 トロッコが材木を乗せて通る」と手紙で知らせたので、赤石山脈南端の 千頭森林鉄道支線沿線等が 俊どん宅と想定されます。


  ひろ子が姑・小姑に いびられ 落ち込んでいる時、森田がスクーターに ひろ子を乗せて快走し 洋服屋へ向かうシーンがあります。
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  これは同年4月に公開されて その年の外国映画№1となった(ローマの休日)の中で、ベスパのスクーターに乗った グレゴリー・ペック と オードリー・ヘプバーンが ローマ市内を快走するシーンを意識した 演出と思われます。
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