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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

 34.この天の虹

 1958年10月  松竹 配給 公開  カラー作品   監督 木下恵介

 八幡製鐵(現 新日鐵 八幡製鐵所) 運輸部に勤める須田菊夫(川津祐介)を中心とした青春映画で、川津祐介のデビュー作品でもある。

 冒頭 八幡製鐵所の紹介が延々と続きこの会社のPR映画かとも思わせるが、タイトル「天の虹」の謂れの説明も兼ねている。
そして工場内に張り巡らされた構内鉄道は路線延長 390 ㎞ 機関車 136 両 貨車 3884 両と説明され、その規模の大きさに驚かされる。

 先ずは溶鋼鍋を運ぶ 417 SL が出てくる。
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1937年日立製 C形 45tと八幡製鐵 最重量級です。その横に 1889 年ドイツ ホーエンツォーレン社製 221 SLが映っている。
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 元々讃岐鉄道が輸入し、国有化で国鉄 60形 63となり 1928年八幡製鐵 に譲渡され 221 となった B形SLで、1963年迄働いていました。

中盤 鉄筋コンクリート造りの立派な鹿児島本線八幡駅へ C60 SL牽引の列車が入線して来る。
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そして相良修(高橋貞二)が待つホームに母親(浦辺粂子)が降りてくる。
駅前は小型のタクシーが数台停まり広々としているが、全面砂利敷きで未だ舗装していない。

 1949 年立山重工製と新しい 374 SL の前部に須田が乗り走行中に飛び降り 前方へ走ってポイントを転換してゆくポイント返しの仕事を、並走する機関車から撮影したと思われるシーンもある。34-4.jpg

 この機関車は 38t級 C形の割には 1067㎜の動輪を履き、迫力ある走行を魅せている。

 常に工場内 撮影厳禁であった八幡製鐵の構内鉄道は大規模であった割に現役中を捕えた写真はとても少ない。
 1955年頃より近代化が進み、1966年6月には蒸機の使用終了した八幡製鐵 にあって全盛期に近い時期の走行姿をカラーで残すこの映画の価値は高いと思われる。

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