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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

384.かあちゃん結婚しろよ

1962年9月 松竹配給公開   監督五所平之助

越後の漁村で 川本みつよ(新珠三千代)が 女手一つで 中一の息子一郎(謝春国)を育てている中、息子には死んだと聞かせてきた元夫が 金の無心に現れる等 波乱の生活を 一郎の視点から描いた映画です。

みつよは 故郷で(のんき屋)を営み 一郎と暮らしていましたが、漁師の大坪武(田村高廣)から求婚されて 顔なじみの一郎も 賛成の様子です。ところが厄病神の様な 元夫の佐久間詮造(伴淳三郎)が、金の無心に現れ みつよを悩ませます。

一郎の担任である 下瀬先生(津川雅彦)の尽力で 詮造は東京へ帰りますが、一郎は 父親である詮造が不憫に思え 大坪から送金された一万円を 持ち出して家出同然に上京します。

先ず 海沿いの単線区間を走り来る C57形蒸機1号機 牽引列車が映り、
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窓側の席に 佐久間が忘れた荷物を抱えた 学生服姿の一郎がいます。
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続いて 上野駅中央改札口から出て来た 一郎の姿が見え、
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手紙の住所を頼りに 父親の家に辿り着き 荷物と一万円を渡します。

ところが 佐久間は大喜びすると その金の半分を 飲み屋の借金返済に使い、更に安い焼酎ではなく 清酒をがぶ飲みする始末です。
更に 泥酔状態で かつて自身が店主だった 浅草の草履問屋へ 一郎を連れて行くと、今では 新しい主人の元で 番頭として働く男(犬塚弘)に 絡んで困らせる等 醜態をさらします。

店の前の 江戸通りを 22系統(南千住~新橋)の都電が走り、
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頭上には 東武鉄道浅草駅を出発した 伊勢崎線の電車が映っています。
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東京の父親の家には 妻 亀子(日高澄子)と、一郎とは腹違いの 妹 鶴子(青柳真美)がいて 驚く一郎です。

鶴子と気が合い 仲良くなった一郎は、その晩 鶴子を内緒で連れて 新潟へ向かう夜汽車に乗ります。
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しかし一郎は 自宅の前を通るバスに乗りながら 降りずに、
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大坪から譲られた船に 鶴子と乗って 遭難騒ぎを起こしてしまいます。

怒るみつよを 下瀬は宥め 東京の実家の両親に 預けている娘を引き取る ついでと言って、鶴子を東京の家まで 送り届けてくれる事になります。

地元の 越後線 荒浜駅のホームで、一郎と鶴子は 別れを惜しむ様に遊んでいます。
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傍らのベンチに座る下瀬に みつよは礼を述べ、鶴子を託しました。
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そして 窓から身を乗り出して手を振る 下瀬と鶴子を、
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一郎はホームを走って追いかけ 見送ったのでした。
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PS.
  最初の画像で登場する C57形蒸機1号機は 当ブログ(116.恋にまざめる頃)(170.喜劇 体験旅行)に登場し 本作が当ブログ3度目となった 有名機関車で、一度静態保存された後に 観光列車 山口号を 長年牽引して動態保存され 現在は 京都鉄道博物館で 静態保存されています。

  長年新津区に所属して 羽越本線を走っていた間の 1961年2月9日、501レ急行日本海を牽引中に 村上~間島のトンネル出口で発生した 土砂崩れに乗り上げ 脱線転覆となってしまいました。

  損傷程度が重く 廃車となる状態だったからか、本線復旧工事を優先したからか 2か月も現場に放置されたそうです。

  しかし C57形蒸機の運用需要がひっ迫している・ボイラーを新品交換してから まだ3年だった・そして記念すべき 1号機関車なので、廃車解体予定から 長野工場での5か月に及ぶ 大修理によって 9月28日に復帰したそうです。
  
  一郎は学校へ行く振りをして 越後線の荒浜から 東京へ向かったので、荒浜 7:14 ―(114レ)― 7:29 柏崎 7:34 ―(811レ)― 8:39 長岡 9:22―(702レ急行佐渡)― 14:00 上野が想定されます。(長岡から普通712レでは上野16:04着で作中と合わない)

  普段は 羽越本線で走っている C57 1号機が映っているのは 国鉄に荒浜駅での撮影協力を申請した折に、大修理から復帰間もない C57 1号機の登場を依頼されたのでは? とも推察できますね。

  鶴子を連れて帰った旅程は、上野 22:00 ―(713レ)― 7:29 新潟 7:38 ―(124レ)― 9:52 荒浜が想定されますね。


  

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