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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

345.山麓

1962年 7月  東映 製作 公開  カラー作品   監督 瀬川昌治

薬品会社の営業マン 速水信吉(千葉真一)から求婚された 片桐雅子(三田佳子)は、既に嫁いでいる 三人の姉の状況から 速水を結婚相手とすべきか 悩む過程を描いた青春映画です。

序盤 母親 滝子(山田五十鈴)が望まない 三女 加奈子(岩崎加根子)が結婚した 国鉄機関士 朝山三吉(南廣)の登場場面で、先ず D51形蒸機牽引貨物列車が 複線非電化路線を走る様子が映ります。
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続いて 広い操車場らしきで 単機のD511112号機(田端区)らしきが走る姿があり、
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朝山が D51の乗務を終えます。
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降車したところへ 交代の機関士から、「さっき奥さんから電話で 角の店にコロッケが 買って置いてある」と伝言されます。
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長女 菊乃(淡島千景)は 夫 三つ峰路春(西村晃)の 不貞に耐え切れず家出し、三女 加奈子夫婦が暮らす 国鉄官舎へ身を寄せます。しかし 一週間を過ぎると 夫婦間に亀裂が生まれ始め、加奈子は「新婚旅行が一番の思い出なのが悲しい」と呟きます。
駆け落ち同然の 新婚旅行を思い出し、先ず 夜行の貨物列車が映ります。そして 有蓋緩急車らしきの車掌室で、朝山と加奈子は ストーブの前で 並んで座っています。
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隣の荷物室から 車掌(潮健児)が現れ、「この駅で降りるんだろ」と促しました。
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言われて気付いた二人は 慌てて降りるや 汽笛が鳴って 列車が動き出すと 車掌と朝山は握手を交わし、
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「奥さん 運賃はいずれ出世払いで」と言われた加奈子は、「初めて奥さんと呼ばれて 胸が熱くなった」と回想します。
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その後 三つ峰は離縁を突き付け、菊乃の嫁入り道具を 実家に返却してきました。滝子は呉服屋を呼んで、菊乃の着物を処分します。その仕打ちを見た 夫の片桐良道(笠智衆)は、趣味の盆栽を叩き割って 家出してしまいます。
101系の 黄色い山手線電車が映った後で、
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若い人が妙に多い 車内セット撮影シーンが映ります。片桐は次女 操(扇千景)の嫁ぎ先で一泊して、翌朝 滝子への遺書を残し 姿を消してしまいます。

母 滝子からの電話で 遺書を発見した操は、滝子へ伝えて 更に姉妹全員に伝わります。直ぐに最寄りの 中央本線上諏訪を目指して向かい、重装備の D51110号機牽引の 旅客列車の走行シーンが映ります。
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如何にもセット撮影の 一等車内では 滝子・菊乃・加奈子・雅子の四人が 向かい合わせて座っていますが、
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心配そうな顔はしてても雅子を含め 誰一人喋る者はありません。
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車窓を流れる八ヶ岳連峰らしき山並みの中、滝子へ宛てた遺書を朗読する片桐の声がバックに流れています。








PS.
  最初の画像は 通称 田端貨物線(常磐線貨物支線)を京成電鉄と交差する地点で、三河島から田端操車場へ向かう 当時水戸区所属の D51226号機牽引貨物列車です。
  ロケ前年 常磐線は勝田まで電化されましたが、貨物列車は未だ 蒸機が牽いていました。そして本作公開の二か月前に 田端貨物線から常磐線に合流する三河島で、死者160人の 悲しい大事故が起きた過去があります。

  駆け落ち同然の 新婚旅行に出掛けた 朝山夫妻は、知り合いの車掌が乗務する 有蓋緩急車の車掌室に 乗せてもらった様です。加奈子は鞄の中身を「ハイヒール1足と長襦袢2枚 この日の為に二晩徹夜して縫い上げた」と説明しますが、ほっこり・微笑ましい場面ですね。
ワフ21000形有蓋緩急車の車掌室を参考としたセット撮影と思われ、ダルマストーブ上のヤカンが沸いています。

  片桐が 滝子の菊乃に対する 仕打ちに怒って家出し、翌朝 操宅で遺書が発見され 皆で八ヶ岳へ追い駆けます。普通なら 10:00頃新宿発の 列車に乗るでしょうが、該当する時間帯 前後3本は 気動車急行列車ばかりです。
  明るい内に現地へ到着出来るのは 新宿7:00発 2405レ準急穂高1号ですが、甲府~松本は DF50形内燃機重連で 作中と合いません。新宿 10:30発 425レ長野行もありますが、一等車は甲府で切り離されてしまいます。

  D51110号機 牽引旅客列車の 走行シーンでは、長野工場製 集煙装置・重油併燃装置を 搭載した山線重装備で 本線規格ハエタタキが並ぶ 中央本線らしきを豪快に走る姿が映っています。

  八ヶ岳連峰へ 片桐の捜索に 滝子・菊乃は着物姿で向かい 発見の一報を聞くと、そのまま山を登ってしまうとは 凄い台本ですね。(ロケ地は不明ですが・・・)



先月急死された 千葉真一氏の追悼を兼ねて、鉄道シーンには登場しませんが 本作を取り上げました。 ご冥福をお祈り申し上げ、作中での画像を御紹介致します。
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