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日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

321.かぶりつき人生

1968年4月 日活 製作 公開   監督 神代辰巳

離れて暮らしていた 母親に騙された 木村洋子(殿岡ハツエ)は 母親と同じストリッパーとなるが、次々現れる男に 騙され愛想をつかす 男遍歴版 青春映画映画です。

冒頭 旅館をやっている男と結婚が決まったと 母親 笑子(丹羽志津)から聞かされて 名古屋から駆け付けた洋子が、到着した汽車から降りて 笑子の出迎えを受ける場面からこの映画は始まります。
C58形らしき蒸機に牽かれた列車が 終点敦賀駅へ到着すると、
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洋子がスーツケースを持って 笑子の前に現れ 改札口へと向かいます。
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旅館をやっていると聞かされていた 夫の勝チン(玉村駿太郎)は、巡業ストリッパーである 笑子の先乗り役マネージャーで 家も前の女の持ち家で資産ゼロのヒモでした。
美浜海岸の射的屋を 洋子に任せ母笑子が着いたのは、勝チンが出迎える 北陸本線 余呉駅でした。
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停車時間は僅かで 旧型客車を牽引する ED70形電機 17号機は、短笛を鳴らすと二人を抜いて走り行きました。
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その後 洋子は大阪でストリッパーとなると 演出家や振付師・ライターの目に留まり、夫々に関係を持って 仕事も変わって中央へ出ていきます。
一方 蒸機牽引列車同士が 交換する駅で、
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勝チンが降りてきました。
ホーム中央に 小さな待合室が有り、駅名板から 小浜線で敦賀から二つ目の粟野駅でした。
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勝チンが向かったのは 場末の芝居小屋で、開始を待つ客は一人だけでした。そして笑子は年齢から、普通の仕事を断られる様になってしまいます。

ピンク映画出演後に 三流週刊誌に洋子の初恋記事が載り、それを読んだ名古屋時代の チンピラ(市村博)が自分のことかと尋ねて来ました。

ところが洋子に 冷たくあしらわれると 洋子を刺し、更にナイフを振り回して 女児を人質にして逃げ様とします。

しかし失敗して女児が逃げ出した時、脇の線路上を内燃機に牽かれた貨物列車が通っています。
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PS.
    今の若い人が 本作のタイトルを見たら、運転席の後ろから 前方の線路を 凝視する テッちゃんの話かと思うでしょうか
  
  苦節の末に与えられた 神代辰巳監督の初作品ですが、日活映画衰退末期なので 低予算・表俳優ゼロ・この時代にモノクロ・併映作品も同様作では 興行成績最低も当然でした。

  それでも若狭地方まで行って ロケしたのですね。余呉駅・粟野駅は 共に人口の少ない田舎で、ストリップ劇場など 存在し得ない場所なのも苦情対処の為でしょうか。

  冒頭の場面は 駅名板等が映らない様に撮影していますが、現場の音声を絞って会話をアフレコで入れても バックから「終着 敦賀です」と聞こえています。

  名古屋から敦賀へ行くのに小浜線を使う?ですが いつもの様に妄想すると、名古屋 3:27―(1804D急行第2ちくま)→5:59 京都 6:41―921レ→12:15 敦賀

  京都から山陰本線・小浜線経由で敦賀へ向かうルートですと、この様に夜中に急行を使わないと 昼頃の敦賀に旧客列車で着けません。(それでも921レは希少な直通列車です)

  小浜線粟野駅で 蒸機牽引列車同士が 交換するシーンがありますが、当時の小浜線では4本しかない 蒸機牽引列車の内唯一の場面でした。

  どう見ても 蒸機牽引列車を 監督は意識した撮影なのに、C58形蒸機を映さず 汽笛音を流すのは 気を持たせるだけの様で胃が痛みますね。

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