fc2ブログ

日本映画の鉄道シーンを語る

日本映画における鉄道が登場する場面(特に昭和20~40年代の鉄道黄金期)を作品毎に解説するブログ

301.恋する女たち

1986年12月 東宝 製作 公開  カラー作品   監督 大森一樹

金沢を舞台に3人の女子高生{吉岡多佳子(斉藤由貴)・江波緑子(高井麻巳子)・志摩汀子(相楽晴子)}が恋と友情を通じて成長する姿を、コメディタッチに味付けして描いた青春映画です。

中盤 多佳子は同級生で野球部の沓掛勝(柳葉敏郎)に 恋していることを自覚しますが、試合観戦に行った球場で 他校女性の存在を見せつけられ 髪をバッサリ切り落とします。
そして実家へ向かうべく乗った電車がホームを離れる時、小学校低学年の団体でしょうか 整列してホームに残っています。
301-3.jpg
続いて 急カーブに車体を傾け 現れたのは、北陸鉄道 3770形モハ 3772で 準急 白山下行の行先表示板を付けています。 
301-4.jpg

前方右側のドア部分では、物思いにふけっている様に見える多佳子がいます。
301-6.jpg
続いて遠距離からの走行シーンが入り、
301-7.jpg
車内から車窓を見つめる多佳子のシーンが入ります。
301-8.jpg

次に加賀一の宮駅手前にある 和佐谷橋を右手に進む、3750形らしき電車の姿があります。
301-10.jpg
続いて加賀一の宮駅構内へ、3772 が入線して来ました。
301-11.jpg
駅長さんらしきに出迎えられ、3772は加賀一の宮駅へ到着します。
301-12.jpg
神社風の駅舎から出てきた多佳子の背後で タイフォンが鳴って 電車が前方へ進むと、バイクに乗った旧友のエリナ(渡辺祐子)が通りかかって 多佳子に声を掛けます。
301-13.jpg

続いて 先程の和佐谷橋を 話しながら進む二人の背後に、3770形電車が走り抜ける姿が映るのでした。
301-14.jpg
この橋は元吊り橋だった様で、人道橋らしく車止めのポールが前後に立っています。







PS.
 当時人気歌手でもあった斉藤由貴は 多忙なスケジュールの合間に撮影を行ったそうで、制約の厳しい期間に 天候に泣かされながらロケを完了した 大森監督は苦労の連続だったそうです。

 金沢で姉 吉岡比呂子(原田貴和子)と下宿生活を送る多佳子が 辰口温泉の実家へ向かう時、北陸鉄道石川線白山下行に乗って 加賀一の宮駅で降りる設定です。ところが最初に映る 乙丸駅を出るシーンでは 何故か反対の野町方向へ進んでいます。

 次に 3770形モハ 3772が映りますが、1928年日車製の名古屋鉄道モ3300形を譲り受けたそうです。ロケ当時 日中は車体更新した3750形・3760形が使われていたので、ロケ用に旧型外観のモハ 3772を貸切って走らせた様です。

 白山下の行先表示板が付いていますが 当時金名線(白山下~加賀一の宮)は休止中で、鉄道好きの助監督・脚本協力 渡邊孝好氏の助言で モハ 3772を使い 白山下行表示を北鉄にリクエストしたのかも・・・

 モハ 3772のリベット組立である旧型外観は味わい深く、神社風駅舎の加賀一の宮駅へ到着するシーンは一昔前の雰囲気ですね。加賀国一ノ宮である 白山比咩神社最寄りの駅でしたが、2009年(鶴来~加賀一の宮)廃線に伴い廃止されました。

 終わりに ラストシーン一歩前にある 加佐ノ岬の断崖上で開かれた 失恋三人組の中振袖での茶会シーンは、
301-18.jpg
実写撮影ならではの迫力が印象深く 監督の熱意で天候にも恵まれて 記憶に残る映像でした。
301-16.jpg

                        (監修 : 金沢在住の 泉 竜太郎氏)

PageTop